|
ジェネシスの前までやってきて、僕の体に衝撃が走った。 「……どうした?」 開いていた通信。慌てたように後ろを向いた僕に、アスランが問いかけてくる。 「何か感じたんだ……どんなって言われたらうまく説明できないんだけど……。 アスラン、君はこのまま向かってくれる? 僕は近付いてきている相手を確かめたいんだ」 「わかった、気をつけろよ」 飛び去っていくジャスティスを見送った後、僕はフリーダムをジェネシスを背にする方角へと向けた。 「キラッ!!!!!!」 「カガリも無事だったんだね、よかった」 飛んでくる真紅のストライク。僕の双子の片割れが乗っているMS。 「カガリもアスランの元へ行ってあげて。……アスランが死なないように見張ってて欲しいんだ」 「……確かに、思いつめてジェネシスと共にジャスティスを自爆させかねないしな」 『なんてったって、前科者だし?』と笑う彼女に、僕は苦笑してしまう。 「カガリ、それじゃあ頼むね」 「ああ」 ストライクルージュが飛び去って、僕は一息ついて。 「、何を覗き魔してるワケ?」 「……何でバレたんでしょう……?」 彼女の声と共に、フリーダムの左隣に現われた薄緑のMS。 「愛の力って奴?」 「……ウサんくさっ……」 「帰ったら覚えておきなよね?」 「帰ったらなどと言えるのは、無事に帰れたらの話だろう?」 返答に詰まったの代わりに返ってきたのは、聞き覚えのある声。音声通信だけで、相手の顔が見えない。 「……ひまわり……」 思わず呟いてしまった僕の言葉が届いたのか、は笑い出して、もう1つの声の主は咄嗟に返答に詰まったらしい。 「……業に囚われた者たちの子供は、本当に失礼だな」 「変態仮面に失礼って言われたくないです。それに、素直な感想を口にできるって素晴しいことですけど?」 その言葉で、僕もやっと、パイロットが誰かわかった。 「……キラ先輩」 「何? どうしたの、」 「私はここから離れられません。……あの仮面だけは、あの機体だけはどうしても許せないんです。 ジェネシスをアスランさんとカガリに任せてしまうことになりますが、力を貸してくれますか?」 通信を開いてきたの真っ直ぐな濃茶の瞳。その真剣さが伝わってきたけれど、それ以上に彼女が僕を頼ってきてくれたことなんて初めてに近くて、とてもうれしかった。 「もちろんだよ、僕はいつだっての側にいるって言ったでしょ?」 僕の言葉に、モニター越しの彼女の顔が破願した。そして言葉を紡がない唇が動いて、形だけを僕に伝えた。 「……ッ! 、今のはッ……」 「ちゃんと言ったことがなかったなって思いまして。 今言っておかなけりゃ、後悔するんじゃないかと思ったんです」 「え……?」 真っ赤になりながら言った僕の言葉に、も負けないぐらいに真っ赤な顔で言葉を返してきた。でも、今言わないと後悔って、まさか……。 「別れの挨拶は済んだかな?」 「仮面には別れをしなきゃならない人もいないんだから、気の毒ですよね」 「ああ、ムウも似たようなことを言っていたかな?」 「ムウ兄のことだから『人を愛せない仮面が可哀相』って言いましたか?」 「似たようなことを言ったがね。しかし、どんな者でも死んでしまえば何もできまい。 人は誰かを愛したとホザいていても、死ぬときは1人なのだよ!」 仮面の言葉に対して、改めて、怒りがこみ上げてくる。絶対に許さない。 「キラ先輩。あのMSはフリーダム・ジャスティス・フライトの兄弟機です」 「識別コードから見てもそうみたいだね」 「アイツからの攻撃はすべて私が受けます。キラ先輩は自分の攻撃をあてることだけに集中してください」 「ちょ……」 私はスロットルを踏み込んで、フリーダムとプロヴィデンスの間に入った。 「おやおや、自分が犠牲になってでも彼を助けようというのかな?」 「私が犠牲になるときは、仮面も道連れにしてあげますよ」 「……そんなところはあの愚かな男と同じだな」 「でも、それが普通だってことに気が付かないあなたの方が可哀相で、愚かですよ」 いきなりフライトの機体ごと後ろに追いやられた。目を開くと、外部モニターに映し出された青い翼。 「誰かを好きになることで、僕達は相手を思いやり庇うことを覚える。 そして、守られることを覚え、また守ってあげたいと思うんだ!」 「何を世迷いごとを。この世界では人を守ることなど、何の意味も持たない。 でなければ、こんな戦争など起こるはずもなかろう?」 「キラッ!!」 プロヴィデンスの背中に何もないことに気が付いた私は、フライトの羽根を広げて、フリーダムの手を引いて上昇した。半瞬後、それまで私たちがいた場所へと撃ち込まれるビーム。 「逃げても無駄だというのに!」 再び迫るドラグーンを避けるべく、フライトとフリーダムは繋いでいた手を離した。 「……ちち、う……え……?」 ジェネシス内部へと潜入を果たしたアスランとカガリ。 発射システムのコントロール・ルームのドアが開かれたとき、胸から血を流しつつ、慣性で漂う父の姿に、アスランは愕然となった。 慌てて反対側を見れば、パトリックに銃弾を撃ち込んだ男・ユウキ隊長も同様に血を流して漂っている。……但し、こちらはもう事切れているようだった。 「われ……我らのッ……」 「父上、父上ッ!」 己の手が赤く染まるのもいとわずに、アスランはパトリックの体を抱きかかえた。しかし、彼の目にはすでに息子の姿は映っておらず、虚ろな眼差しを向けて見ているのはジェネシスの発射装置だけ。 「……撃てッ……我らの……せか……とりもど、せッ……」 懸命に体を起こそうとしていたパトリックは、その言葉を最後に末期の痙攣が襲い、そして弛緩。力を失った腕は軽い重力の室内では床に着くことがなく。 「父上ッッッッ!」 間に合わなかった、止めることができなかった、助けることができなかった。 死ぬ間際に捕まれていた腕の痛みが、アスランの苦しみと後悔とを倍増させていく。 泣きたい、しかしまだ今は泣けない。この恐ろしい兵器を作ったものの息子として、ジェネシスを止めて地球の人々を救わなければならない。 ―――――だから、せめて願う。先に旅立った母と、無事に再会していて欲しいと。 「アスラン!」 アラートに気が付いたカガリの焦ったような声。アスランはパトリックの体をその場へと横たえ、彼女の隣へと移動した。 「どいてくれ!」 画面に現われているものを見て、素早くキーを叩くアスランの指先。 「……ヤキン・ドゥーエの自爆シークエンスに、ジェネシスの発射が連動している」 「ええぇっ!」 アスランは必死にキーを叩いて連動を止めようとする。しかしそれは叶わず、今度はシークエンス自体を止めようとするが、それもできない。 「くそっ!!!!!」 このままだとヤキン・ドゥーエの爆破と同時に、地球は最後の日を迎えてしまう。アスランは自分の無力さに拳を振り下ろした。 「一体どうしたのでしょうか?」 ヤキン・ドゥーエが目視距離になっていたエターナル、そのブリッジでラクスは首をかしげた。 「この土壇場で、アイツら、ヤキンを放棄しちまったのか?」 次々と出てくる救命艇に訳がわからず、バルトフェエルドも眉をしかめる。 「ジェネシスは……どうなっているのでしょうか……」 外から見ているだけの自分達にはそれを知る術はない。ラクスは胸の前で手を組んで、祈りながら見ているしかできなかった。 ![]() 黒マント製作機から コメント不可です。ごめんなさい。 To NEXT 連載TOP |