両機ともドラグーンの攻撃をかわすことが精一杯で、なかなかプロヴィデンスの懐に飛び込めずにいた。

「まだ苦しみたいのかね?」

「苦しみたいか、ですって? ふざけたこと言わないでください、私達はマゾじゃありませんよっ!
 苦しむのはあなただけで結構です、ラウ=ル=クルーゼ!」

 そう言いながら振り下ろしたフライトのシュラウトロッドだが、目的のものには当たらずに空しく空を切った。開いたままの回線からキラの元に、彼女の舌打ちが聞こえてくる。

「何を今さら。君達こそが苦しみの元凶なのだよ。
 誰もがキラ君のような完璧な存在を目指し、その横で博士のような妬みが生まれ、情報を洩らし。
 そして悔いた者は、嬢のような罪の証とも言うべき存在を生み出す!」

「だから何だって言うんですか! 当時の研究者はもういない、いるのは生み出された僕とだけ。
 研究のすべてを知ることはできない今は、もうこんなことは起こりませんよっ!」

 フリーダムの放つビームも、的が小さいのとそれぞれ動きの早さによって、飛び回るドラグーンを破壊することができない。

「確かに今はそうだが、この先、同じことを考えない人が出てこないとは限らないだろう?
 その時、君達はどうするのかね?」

「なんとしても止めさせてみせるに決まってるじゃないですか!
 母親の温もりもろくに知らずに生まれた子供が、本当に幸せになれると思ってるんですか?」

「……え……」

 の小さな言葉は、自らの耳にしか届かない。彼女の動揺はフライトを無防備な状態へとさせた。

「フ……」

 クルーゼの口元から小さく洩れた笑いと共に、フリーダムの周りをも囲んでいたドラグーンがフライトのみを狙い始める。

「きゃあぁぁぁっ!」

 核エネルギーの生み出す11門の火力のすさまじさ、そして多方向から来る攻撃に、さすがのフライトの防御も追い付かない。ビームの光が走るごとに、千切れた白い羽根が漂う数を増していく。

ッッッ!!!!!!」

 すぐさま向きを変えて彼女を助けようとするキラ。しかしフリーダムとフライトの間に割り込んできたのは、ビームサーベルを構えたプロヴィデンス。

「おやおやキラ君、何を焦っているのかね?
 焦る必要などないだろう。刃を構える前に彼女は『私からの攻撃は自分がすべて受ける』と言っていた。
 ドラグーンがフライトに集中している今こそ、私と戦えるときだろう?」

「そうだとしても、僕はを守らなきゃならないんですっ!! だからどいてください!」

「どけといわれて簡単に通すほど、私とて愚かではないさ。
 それに、君の命を奪うことも、私が描いたシナリオの一幕なのだからな!
 君という存在がいるからこそ、君という成功例がいるからこそ、人は新たな高みへ登る道をやめない。
 それが『同じことができる』という業に取り付かれた者たちを生み出し、それを認めない者たちをも生み出す。
 それがどういう結果を生み出すか。君達が一番よくわかっているのではないかね?
 だから私はそれを終わらせてあげようとしているのだよ、人の業と業がぶつかり合う愚かな世界をね!!!!!!」

 フリーダムとプロヴィデンス、互いのサーベルが交わり離れる。そのたびに、彼らの間とフライトの間は引き離されていく。プロヴィデンスを操りながらだというのにドラグーンの動きは衰えることはなく、容赦ないビームがすでに防御する羽根を失ったフライトを撃つ。

「例えそうだとしても! 僕のせいで、再び人が争うのだとしても! それでも僕らは生まれてきたんだ。
 は殺させない! あなたに世界を終わらせる権利なんてないんだ!」

 ドラグーンを止めるには、操っている本人を倒すしか手がない。そう確信したキラはフリーダムを、プロヴィデンスの中にいるクルーゼを目掛けて、がむしゃらにサーベルを動かした。







「ジェネシスの内部で、ジャスティスを核爆発させる……」

 どうやっても切り離せない、止められないシステム。なら壊すしかない。
 アスランが辿り着いた結論はそれだった。……というよりも、それしか方法が浮かばない。壊してしまえば、のちのち再利用されることもない。平和を勝ち取るために、罪のない人たちを救うために、残された短い時間の中で自分ができること、1番手っ取り早い方法。
 アスランがその考えを口にした途端、カガリは自分の片割れが危惧したことが当たっていたことを知る。『当たって欲しくない事柄だったのにな』と彼女は小さなため息を洩らした。とにかく今は、ジェネシスと共に滅びゆこうとする少年を止めることが先決で。動き出した彼の背を追いかけて、カガリも移動する。

「カガリ、君はもどれッ!」

 隔壁を壊してジェネシス・ミラー内部へと入り込み、シャフト内部を飛ぶジャスティス。その後ろを追いかけてくるストライクルージュ。

「私はアスランを見張るように、キラから頼まれてるんだ!」

「でも、ここから先は俺1人でっ…………」

 分離したファトウムOOが、狭いシャフトの中でルージュの進行を妨げた。

「アスラ〜〜〜〜〜ン!!!!!!」

 カガリの声を振り切るように、アスランはジャスティスを駆った。







「……これは一体?」

 地球連合軍の核攻撃の心配がなくなってようやく、別行動をしていたAAはドミニオンに曳航された形でエターナル・クサナギの2隻と並んだ。

「わからないのです。先ほどからフリーダム・ジャスティス・フライトとの連絡が取れないのです」

「ストライクルージュとも通信ができない。確認作業をさせようにも……」

「どのMSも、私たち3隻もボロボロですものね……」

 何が起きているのかを確認したいのは皆同じ。しかし、助かった命をボロボロの機体で死なせに行くようなことはしたくない。

「……ラミアス艦長。その役目、このドミニオンに任せていただけないでしょうか?」

「ナタル、あなた何をっ……」

「私達は少尉が来てくれなければ、あのまま死んでいたかもしれない。
 ですから、助けられた命を使って、今度は私達がラミアス艦長達のお手伝いをさせていただきたいのです」

「だめです! はあなたたちをそういうつもりで助けたのでは……」

「ラクス=クライン嬢。以前、私はあなたにはひどいことをした。本当に申し訳なく思っております。
 あの時は私の一存で決めてしまいましたが……今回については、クルー全員の一致した意見です。
 ですから、ぜひお許しをいただきたく……」

 そう言うか早いか、ドミニオンのエンジンは動き始め、グレーの船体は前進を始める。

「ナタル、ちゃんと帰ってきなさい。これは、艦長命令ですッ……」

「わかり、ましたっ……」

 満足に動けない3隻を残し、比較的被弾数の少ないドミニオンが彼らの目となるべく動き出す。



黒マント製作機から
 あと数回で終わらせますんで、もうちょっとお付き合いください。


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