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「君達がどんなにあがいても、もうすぐ地球は滅びるのだよ!」 ようやく合流を果たしたフリーダムとフライト。しかし、お互いの無事を喜び合うよりも先に、クルーゼが勝ち誇ったように高笑った。 「ちょっと仮面。それはどういう意味なんですか!」 「3射目のジェネシスの目標到達地点は、大西洋連邦首都・ワシントンに設定されているだろう。 そして、発射スイッチはもうすぐ押される!」 「何だってっ!!!!」 「あそこからは兵士がどんどん逃げていって……」 「それは彼らが爆発に巻き込まれまいと、ヤキン・ドゥーエを放棄したからにすぎんよ。 ……そしてヤキンの自爆シークエンスに、ジェネシスの発射は連動している。 このシステムは簡単に切り離すことなどできん。 ヤキン・ドゥーエが燃え上がるとき、地球も燃え上がるのさ!」 再び高笑うクルーゼ。もし彼の言っていることが本当なら、本当に地球が撃たれる。 「そんなことはさせない!」 「だめっ、止まってっ! やめてぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」 ジェネシスのミラーブロックを破壊しようとしてか、ローエングリンの光を収束させ始めるドミニオン。が慌てて止めるも間に合わない。 「……フ」 クルーゼが小さく笑った。 ズガァァァァァァァンン!!!!! 放たれた陽電子破城砲は、核爆発の強大なエネルギーに一時的とはいえ耐えられるミラーブロックで乱反射を繰り返したあげく、再び中央に光を集めて弾き返し、射線上にあったものをあっさりと吹き飛ばした。 ―――――そう、ドミニオンのブリッジを。 「……あ、ああ……ああああ………」 言葉をなさずにただ見つめていた、モニターに1房の赤い頭髪が横切った。 すべてを焼き尽くすはずのローエングリンの光も、それだけは彼女の生きていた証として残したのかも知れない。フライトの大きな指が、それをこわごわと掴み取る。 「……またっ……私はまた、守れなかったっ……」 私のヘルメットの中で舞い始める水滴。 赤い髪の彼女、フレイ=アルスター嬢のことは苦手というよりも、嫌いの部類に入っていた。それでも、こんなところで死なせるために、私はあの時、救命ポッドを動かしたわけじゃない。 バジルール艦長だって、他の皆だって、死なせたくないから死んでほしくないから単身乗り込んで、アズラエルとハゲブタの暴挙を止めさせたのに。 「……これ以上……これ以上は、絶対に、誰も死なせはしないっ!!!!!!」 頭の芯で何かはじけて冴え渡る。 『……これがSEEDがはじけたっていうのかな』 私は、出撃前にキラ先輩から聞いたことを思考の片隅で思い出しながら、フライトのスロットルを思い切り踏み込んだ。そして、やはりドミニオンの爆砕にショックを受けて動けなくなっていたキラ先輩を、フリーダムを勢いよく突き飛ばした。 最後のキーに指を乗せ掛けたとき、シャフトの方から何か近付いてくるのに気が付いた。 「アスラン! 死ぬな、お前!」 「……カガリ。何でついてきたんだ。これからここは爆破されるんだぞ。危険だからさっさと逃げろ!」 しかし、ストライクルージュはそのコックピットを大きく開く。 「お前、こんなものを作ったのが自分の父親だからって! だから責任持って命と引き換えにしてでも壊すのが、自分の使命だって自惚れるなよ!」 「なっ……だれが自惚れなんかでっ……」 「そりゃ、こんな物騒なものは2度と使えないように壊さなきゃならない。 だが、それをお前が、命と引き換えにしてやる必要がどこにあるんだよ! 本当に父親のやったこと、こんなものを作ったことを悔いているんなら、生き延びろよ! 生き延びて、2度と同じような兵器が作られないように見張ってろよ!」 カガリのヘルメットの中で、キラキラと反射するものが浮かび始める。それに気が付いたアスランは反論する勢いを失った。 「アスランは、父親のやったことが許せないから、その機械をつぶして一緒に死のうとしているだけ。 死んで償うことなんてできないんだ。償おうと思うなら、犠牲者とその家族に対して謝りたいのなら。 死んだ人の分まで生きて、2度とこんなことが起こらないように努力しろよ。 おまえわかってるのか、死んで楽な道を選ぶことより、生きる方が戦いなんだぞ!!!!!!!」 「生きる方が……戦い……?」 「そうだ、死ぬってコトは後のことを放棄して逃げるんだぞ。お前はそんな弱虫でいいのかよ! それにお前が生きて帰ってくることを願ってる奴らのことを裏切るつもりかよ。 お前が無事で戻ってくるようにって祈ってる相手の気持ちを、無視するつもりかよ!」 カガリはコックピットから、精一杯、腕を伸ばした。 「死ぬんじゃない、帰って来いよ、アスラン!!!!!」 「…………?」 突き飛ばされたショックで我に返ったキラが目にしたのは、プロヴィデンスのビームソードを、羽根の僅かな翼で受け止めて、その腰を両手で抱え込んでいるフライトの姿だった。 「キラ、今のうちです! フライトがこいつの動きを止めている間に早く!」 「そんな、何をしろって……」 「私1人引き換えにして、皆が助かるんならいいんです! さあ、迷ってる時間はないんです!」 「できるわけないさ、それがヒトの愚かなところだよ! 見知らぬ人々の命を救うよりも、自分のことを大事にしてくれる人を選ぶ! 愛だの恋だのを叫んでいるから、手を下すことをためらう! キラ君、君とてそうだろう。地球の傲慢な彼らを助けるよりも、嬢を選ぶのだろう!」 「だまんなさいよ、この変態仮面! キラ、何を迷ってるのよ。こんなボロボロの機体じゃ長く持たないんだから! 早くプロヴィデンスを……フライトごとソードで貫いてっ! キラは……キラは、お父さんやお母さんが死んでしまってもいいって言うのっ? ヘリオポリスから避難して、オーブから避難して、それでも地球のどこかにいるんでしょ! それにカズイ先輩や、カレッジで知り合いだったナチュラルの人たち、助けたくないんですかっ!!!!!!」 「だって、だって僕はッ……」 「時間がないんです! この位置なら、ジェネシスを壊せるからっ……だからっ……」 キラがためらっている間にも、プロヴィデンスは逃れようともがき続けて、ジェネシスの自爆シークエンスは進み続けて。 「キラ、お願いっ! 地球を撃たせないで!」 「無駄だというのに! 物分かりが悪いな!!!!!」 コックピットの中で、キラは俯き、レバーをきつく握りしめた。 「…………僕は……僕は君を失いたくないッ……」 フリーダムの右手が上がる。 「だからっ……あきらめないでっ……」 左手は右手に添える。 「僕を信じてっ!!!!!!」 ビームソードを両手で固定したまま、フリーダムは渾身の力を込めて突っ込んだ。 ![]() To NEXT 連載TOP |