「……見つけた……」





 フリーダムとは全く逆に飛ばされてしまっていたフライト……だったもの。細かく千切れとんだ破片は、ホワイトパズルを組み立てるよりも不可能だろう。
 そんな破片の中に、見慣れたパイロットスーツは漂っていた。

、僕だよ。迎えに来たんだ、一緒に帰ろう」

 コックピットを開いたまま、フリーダムは破片を掻き分けて進む。
 真空で音は届かないけれど、なら気配を感じ取れるから。……しかし、彼女はピクリともしない。

「やっ、嘘だよね……」

 自分でも顔色が変わったのが、はっきりとわかった。僕はシートベルトをもぎ取るように外して、ハッチを思いっきり蹴って飛び出す。

ッ! 返事をして、ねぇっ! 目を開いてッ!!!!!!」

 引き寄せた彼女はぐったりとしたまま、その瞼を下ろしたまま。揺さぶってもそれは変わらず。
 首筋に手を当てて脈を確かめたい、口元に指先を当てて呼吸を確かめたい。生きている証を教えて欲しい。だけど、ヘルメットをしている限りそれはできない。パイロットスーツの上からでは、胸の上下すら確かめられない。首から胸を覆うプロテクターの存在を忌ま忌ましいと思ったのはこれが初めてだった。

「嫌だ、いやだいやだいやだ、僕を置いていかないで! 僕を守るって言ってくれたじゃない。
 守るってこういう意味だったの? これからずっと守ってくれるって意味じゃなかったの?
 ……だめだよ。は約束を破る気なの?
 僕を守るんなら、これからもずっと一緒に生きてくれなきゃだめだよ。
 お願いだから目を開けてよ。いつものように『先輩』って言って笑ってよ。ねぇっ、ッ!!!!!」

 返答のない細い体を、僕はきつく抱きしめた。どんなに堪えようとしても、涙が溢れてくる。
 泣いたらの死を認めることになる。だから、まだ泣けない。ちゃんと確かめてもいないのに、勝手に殺したくない。

は死んでなんかいない、絶対に、絶対に死なせるもんかっ!!!!!」

 彼女の体を抱えて、僕はフリーダムに戻ろうとする。
 でも空気抵抗のない宇宙では、1度ついた慣性に流されるままで、うまく方向が変えることができない。フリーダムと僕らの差はどんどん開いていく。










「……リィ……」

 音のない宇宙で、聞き慣れた声がしたように思った。

「……バカだな、僕も。空気のないこの空間で、音が伝わるはずないのに」

 の体をしっかりと両手で抱きしめたまま、僕はくすりと笑った。



コツコツコツ



 僅かに伏せていた目を上げると、親友からもらったロボット鳥。

「あれ……? トリィって宇宙も飛べたっけ?」

 『突っ込みどころがズレてます』と言わんばかりに、トリィのくちばしはもう1度ヘルメットのバイザーをつついてきた。そして舞い上がる。僕はその軌跡を視線で追いかけた。











「キラがいたぞっ! の奴も一緒だっ!」

 トリィを追いかけていたラスティの声が、各艦のブリッジに響いた。ブリッジクルーたちも、捜索に出られなかったパイロットたちも、その言葉に一斉に湧いた。

「救出完了、これからエターナルに向かう」

 オレンジアストレイは、2人を右手の平に乗せて左手で包み込んで、エターナルまでの道を急いだ。



「アストレイ・ラスティ=マッケンジー機、機体収容を確認しました」

 ダコスタのその言葉が終わると同時に、アスランとラクスはブリッジを飛び出した。何度も床を蹴って、1秒でも早くデッキに辿り着こうと急ぐ。







 彼らがMSデッキに辿り着いたとき、アストレイの下ろされた手の周りには人だかりができていた。
 その中には、捜索隊に加わっていたニコルやディアッカ、イザークの姿も、カガリの姿もあった。
 そして、アストレイの手の上では、をきつく抱きしめたままのキラがいた。

「キラ! !」

 アスランの声に気がついたように、キラは顔を上げる。さっきまでは誰が呼びかけても動かなかったキラが。

「……アスラン……僕……また約束、守れなかった……」

「え?」

、ね……………………………………………息、してないんだ……」

 1筋、また1筋と、キラの頬に伝い始める透明な水。

「ちょっ……キラさん、それは冗談ですよねっ?
 この前のフライトのときみたいに、口裏合わせて、2人でお芝居してるだけですよね?」

 信じたくないと上がる声。キラはそちらを見て。

「……そうだったら、いいのにね……」

 その答えを聞いた途端、ニコルのひざからは力が抜けた。よろりと後ろに倒れかけたカガリをラスティが受け止め。息を吸い込んだラクスは、隣のアスランに顔を埋めた。

「……医務室、行くね……」

 の体をそっと横抱きにして、キラはアストレイから離れた。

「キラッ……」

 追いかけていこうとしたカガリの手を掴むラスティ。

「……今は、あいつらだけにしておいてやれ」

「でも!」

「今の状態を、一番認めたくないのはキラなんだ。
 お前が言いたいことは、あいつにちゃんと伝わってるさ。……血の繋がった弟なんだろ?
 だから、今は何も言わないでいてやろう」

「うん……」








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