幾重にも掛けていたロック。
 それは一見しただけではちょっとわかりづらいもの。
 でも、私の場合は違うんです。
 一定の法則さえ見つけ出せば、簡単にできるようにしておいたわけ。
 と言うか、パスワード解除っていったら難しい方法ばかりを考えるのは、誰でも一緒なんですか。
 強いて言えば、その点を突いたとも言えるね。
 難しく考えがちな問題を軽い答えにしておくと、なかなか正解にたどりつかないんです。
 というわけで。
 この勝負には勝ったといっても良いわけだ。
 私の口元に、自然に笑みがこぼれた。





 ストライクの両目に赤が灯る。
 の作業が終わった印だ。
 それを確認し、ちらりとガルシア指令を見た。
 まるで舌なめずりせんばかりの顔は、不快感を一層煽る。

「さて、次はどんなことをしてもらおうかねぇ。
 君たちは貴重な、裏切り者のコーディネイターなんだからねぇ」

 僕の視線に気がついたのか、ガルシア指令はニヤつきながらそう言って来た。

「裏切りなんて、僕たちにはそんなつもりは毛頭ないです」

「つもりはなくても、今の君たちがしていることは立派に裏切り行為だ。
 なんと言っても、同胞であるコーディネイターに銃を向けている。しかも、地球軍のMSでだよ」

「確かにそうかもしれませんね。
 でも、僕もも大事なものを守るために戦わなきゃならないから銃を持ったんです。
 自分の利権のために普通の民間人に銃を突きつけてはいませんから。
 あ、それが誰かとは言いませんけど」



「言うねぇ、あの坊主」

 必死になって笑いを堪えている目の前の男に、私も『同感』と苦笑しながら両肩をすくめた。

「望んで銃を取る人なんていません。
 まして、相手が自分たちと同じならなおのこと。
 でも、やらなければ失うものがあるから。だから私もキラ先輩も、戦う道を選んだんです」

「それで、お前さんは納得してるわけ?」

「ずっとできるわけないと思います」

 そう答えた私が黙ったとき、突き上げてくる鈍い振動が来た。

「あ、やっぱり」

 再びの爆音と振動に、俺はストライクを動かした。

「何をする!」

「外に出るに決まってるじゃないか。攻撃されて黙ってやられるわけには行かない」

 ハゲ狸が叫ぶのに、俺はずっぱり言い返した。
 そのあとストライクの腕を伸ばす。

「キラ先輩、さっさとこっちに来て下さい。5秒以内に来ないと、放っていきます」

「うわ、それは勘弁してほしいっ!」

 慌てて腕を駈け上がってきたキラ先輩。
 が、シートの後ろにいた先客に気が付いて顔をしかめる。

「説明は後」

 ハゲ狸が叫んでいるのを無視し、俺は先輩が乗り込んだと同時にハッチを閉め、機体を立ち上がらせた。

「アルテミスの外にいるのは、例の奪われた機体です。X−207・ブリッツで、間違いないでしょう」

「どうしてそんなことが?」

 エアロック強制開放させている間に俺が言った言葉。
 一緒に乗っているキラ先輩が問い掛けてくる。

「スペックに目を通した時点で気が付いていました」

 素っ気ない答えを返す。

『こちらAA。、キラ、二人とも無事?』

 短い呼び出し音の後、音声通信が入る。

「こっちは大丈夫。みんなは?」

『爆発の混乱に紛れて、全員がAAに戻ったわ。もちろん、連れて行かれた艦長たちも帰ってきたし』

「なら、そこから離床後、ストライクに続いて」

『バカ者、何を急に……』

 通信に割り込んできたのは副艦長の声。
 
「この攻撃は奪われたX−207、ザフトからのものです。
 ブリッツ単機のすぐ後ろには、他のXシリーズ、それに母艦がいるはずですから。
 ここで沈められても構わないのなら、アルテミスの援護に回って下さい」

『……お嬢ちゃんの言うとおりだな。
 アルテミスは今まで、傘に頼りすぎていた反面、その分攻撃用MS等の数は少ないはずだ。
 ザフトの、しかもクルーゼ隊が相手ではあっという間に陥落する。
 俺たちはその隙を狙って逃げだそうぜ』

 よかった、わかってくれたんだ。
 ほっとした俺は、思い切りペダルを踏みこんだ。



 AAとストライクが、離れて少しして。
 不可侵要塞といわれていたアルテミスは、あっけなく崩壊した。
 燃え散っていく破片はまるで。
 攻撃を仕掛けた奴らの着ている服の色を思い起こさせ、少しだけ、私の心を同じ色に染めた。



  黒マント製作機から
  ようやくアルテミスを抜けました。
  長かったなぁ。

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