「デブリで……ですか?」

「そう」



 アルテミスから逃げ出したAAを次に襲ったのは、食料や弾薬類の補給問題。
 必要物資の補給がなされなかったままで、地球を挟んで反対側の月面基地にたどり着くのは不可能。
 そんなとき、フラガ大尉から出た提案が、地球を取り巻くデブリベルトからのセルフ補給だった。



「ちょ、ちょっと待ってくださいよ。あそこには今まで落とされた船なんかが……」

 サイ先輩が声を上げる。
 ミリィたちも、ようやく気がついたらしい。

「誰も好んで墓荒らしの汚名を着たくなんてないさ。
 でも、そうでもしなきゃ、俺たちもデブリの仲間入りってわけ」

 聞き覚えのない声に、振り返った彼らの視線が集まる。
 ……私とキラ先輩はその声の主を知っているから、別に驚かないけど。

「レガール少佐、どこへ行ってらしたんです?」

「ちょいと用足しに行ったら、見事に迷っちまってね。
 外から見たときも思ったんだけどさ、本当に広いねぇー」

「だろだろ?
 実はまだ俺もすべて覚え切ったわけじゃなくってさ。俺もさ、ようやく要所要所の道は迷わなくなったね」

「フラガ大尉もレガール少佐も、そういう話はのちほど……」

 副艦長が頭を抱え込みそうな顔で言うと、大の男2人は照れ臭そうに笑った。

「あの……」

「君たちには初対面だったか。
 俺は地球軍第7機動隊所属レガール=少佐。
 いうなれば、ムウと同じとこで働いてたってわけだ。
 以後よろしく」

 物問いたげな視線のトール先輩。それに気が付いたのか、返される答え。

「……?」

「レガール少佐はな、そこのお嬢ちゃんの兄貴だ」

『えええっ!!』

 フラガ大尉のさらりとした言葉に、艦長以下皆さんの驚きの声。
 ……っていうより、私が名乗ったときに気がつかなかったんですか?

「それじゃあ少佐も……」

「あ、その点?
 おやじも死んだお袋も義理のお袋……のお袋も、ついでに俺も生まれたときからナチュラルやってっから」

 へらへらと笑うレガール兄。久しぶりにあったんだけど、少しも変わってない。

「じゃあ、妹さんだけコーディネイターなんですか?」

 確かめるようなカズイ先輩の言葉に、私もレガール兄も頷いた。
 家族の中で、私だけが特別扱いされて生まれてきたのは何故か、
 親が鬼籍に入ってしまった今となっては、確かめる術はない。

「ついでにカミングアウトするとだ、レガール少佐は俺の幼馴染みでな。
 このお嬢ちゃんもオシメしてよちよち歩いてた頃から知ってるぜ。
 あのときから変わらず……」

「ムウ兄!!」

 私は思わず、以前のように叫んでしまった。
 その声に、皆さんびっくりして私の方を向く。
 うううっ、恥ずかしいです。
 でも、さっき『幼馴染み』って単語が出たときに、隣にいたキラ先輩が悲しそうな目をしていたのは、少しばかり気になった。



 コホンと軽い咳払いの後で言う艦長さん。

「私的にはフラガ大尉のカミングアウト話にも興味がありますけど。
 この場ではそういう話は後にして、これからのことについて話したいわ。
 あなたたちにはデブリに付いたら、船外作業を手伝ってほしいの」

 選択の余地はないものに等しかった。
 私たちには『わかりました』という言葉しか残されていなかった。



黒マント製作機から
 アルテミスで拉致ってきたのは、ヒロインの義理の兄。
 所属は機動隊のクセして技術力を買われ、アルテミスに出向していた彼です。
 さて、次はユニウス・セブンだぞっと。

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