「現最高評議会議長の令嬢、プラント1の歌姫が、どうしてAAにいるんですか?」

「まあ、そんなに怒鳴らなくても聞こえてますわ。
 しばらく会わないうちに、カルシウム不足になったようですね」

「なってませんっっ!!」

 落ち着け、落ち着け自分。ラクス嬢の雰囲気に負けたら終わりだ。

「それよりも質問に答えてくれませんか?」

「と言われましても、私が乗っていました救命ポッドを拾われて、お持ち帰りされた先がこの船でしたのよ」

「どうして救命ポッドに乗ってたんです?」

もご存じでしょう? もうすぐあの日がやってきますから」

 それを聞いて、先ほどの光景がフラッシュバックして。
 私は思わず、自分の体をかき抱いた。

「私は今年の追悼慰霊団代表を任されまして視察に……。
 って、どうなされましたの?」

「ん、何でも……」

「何でもない訳ないです。今のご自分がわかってますか?」

「え?」

「今にも倒れるんじゃないかって思えるくらい、真っ青になってるのに」

 そう言ったラクス嬢は、ゆっくりと私を抱きしめてくれた。

「ユニウス・セブンでが倒れたこと、キラ様からお聞きしました。
 泣きながら意識を失ったあなたのことを、あの方もずいぶんと心配されておいででしたわ。
 優しい方に出会えてよかったですわね」

「……キラ先輩が優しいかどうかはわからないですが」

「でも、倒れるほどのショックを受けたことはなんだったのですか?」

 何度も何度も。
 前と同じように、ラクス嬢の手が私の髪を梳いてくれる。
 歌姫と呼ばれるだけの優しい声が、心に染み込んでいく。

「……開いた納屋の中に、何人も死んでて……。その中にレノアおば様も……」

「まぁ……それは……」

 私の言葉に、私と同じようにショックを隠せないラクス嬢。

「実際に見てしまったことだったけれど、信じたくなくて。
 アスランさんからの通信を聞いたときも、信じたくなかった。
 だけど、だけどっっ……」

「アスランとお話されたのですか?」

 その問いかけに、私は小さく首を振った。

「デブリに入る前、ザフトとの戦闘があって、その時に声が聞こえました。
 あれは間違いなく彼の声、それにイザークさんたちの……」

「……そうですか」

 私の体から、ラクス嬢の手が放れていく。

「犠牲になった人たちのために、私たちは祈りましょう。
 せめて、奪われた命が人を恨み、新たな悲しみを作り出さないように……」

 悲しいけれど、今の私にできることはそれが精一杯。
 私とラクス嬢は手を合わせて指を組んで、互いの額を合わせて目を閉じた。
 そしてどちらからともなく、静かに歌った。



 聞こえてきた2つの歌声に、僕は視線を移した。
 さっき僕が拾ったポッドに乗っていたラクスさんと、彼女に頼まれて案内したの声。

「きれいだけど、悲しい声だな」

「カズイ……」

「たまたま近くを歩いてたら歌が聞こえたんで来てみた。
 どういったら善いのかな。
 あのラクスって子も、って子も遺伝子操作されて
 そのおかげで、きれいな歌声を持って生まれたのかも知れないけどさ。
 だから、余計に悲しく聞こえる」

「そうだね。僕も同じ気持ちだよ」

 彼女たちの歌が終わるまで、僕とカズイはその場から動けなかった。



  黒マント製作機から
   本編ではラクスの歌を一緒に聞くのはサイですが。
   ともすれば忘れがちなカズイを出しました。
   ちなみに、歌以外の声はドア向こうのキラには届いていません。

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