「艦長。ですが……」

 その夜、私は1つのドアをノックした。
 そこは、艦長のプライベート・ルーム。

『ちょっと待ってて。すぐ開けるわ』

 ドアが開いた先には、副艦長とレガール兄、ムウ兄の姿もあった。
 どうやら4人で小さな酒盛りをしていたらしい。

「どうしたの。こんな夜更けに?」

「実はお願いがあってやってきたんです。
 ……あの、やっぱり私も制服を着なくてはいけないんですか?」

「それは当たり前だ。ブリッジに入る以上、服務規定に従ってもらわなければならない」

 あっさりと答えを返してきたのは、やっぱり副艦長。

「ですが……」

「何か理由がありそうね? 腰に巻いてあるバスタオルと関係ある?」

 小さく頷いた私は『驚かないでください』とだけ告げて。
 ゆっくりとタオルを外した。

「おまっ……それ、俺の記憶にはっ……」

「あるわけないよ。レガール兄がアルテミスに行った後だし」

 左の太股の付け根からひざに掛けて、斜めに走った大きな傷痕。
 それは醜いケロイドは、いやがおうにでも人目を引く。
 艦長さんたちも次の言葉を紡げないらしい。

「実は『血のバレンタイン』のとき、私はあの空域にいたんです。
 両親が一度に死んで、兄が地球から離れて、私はプラントに上がっていましたから……」



  黒マント製作機から
   今回はヒロインの過去話。
   聞き役は大人4人です。
   話の都合上、皆さんに集まってもらうためとはいえ、AA内で酒盛りは不謹慎ですね。
   それしか思い浮かばなかったほしみの発想が貧困なんですけど……。

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