誰もいない家にいるのは不安だった。
 時々やってくるあの『ブルーコスモス』の男たちが怖かった。
 だから、今までの貯金を全額引き出して逃げ場所のチケットを求めた。
 プラントなら回りは同じコーディネイター。
 いきなり抵抗できずに殴られて脅えなくてもよかったから。

 初めてやってきたプラント。
 の第一印象は『不思議なもの』だった。
 目の前に林立するのはビルの群れ、せわしなく歩いていく行く人たち。
 その光景が珍しいという訳ではない。
 人間は酸素がなくては呼吸ができない、生きてはいけない。
 それを作り出すのは緑の木々。
 それなのに、人口に対して圧倒的に少ない緑。
 プラントの仕組みは知識上では知っていても、不思議な光景に思えた。



「なぁ、あの子なんかどぉ?」

 物珍しげに辺りをキョロキョロとしているの姿を、物陰にいた3人の男が見ていた。

「わぉ、モロ好み」

「ポニーテールからちらちら見える首筋、白くて柔らかそうだしねぇ」

 意見がまとまったのか、男たちはいったん人並みに紛れ、目標とするの側に近寄る。
 そして、一糸乱れぬ動きで、素早く彼女を物陰に引きずり込んだ。

「やっ、放してっ!!」

 必死になってあがいても、3人もの力で押えつけられては逃げられない。
 もがく彼女をあざ笑い、男たちは上着を引き裂き、スカートの裾へと潜り込む。
 一瞬にして総毛立ったが、ここであきらめたくはない。
 は懇親の力を振り絞って、側にあったポリバケツを蹴った。







「……なんだ?」

 イザークは、転がってきて自分の足元にぶつかったそれを見た。

「何って、ポリバケツのふたじゃないの?」

「そんなのはわかっている!」

「これってさ、あっちから転がってきたよな?」

 あっさりと自分の怒号を無視されて、ふくれっ面のイザーク。
 しかし、ディアッカはそんなことはお構い無視。

「そう言われてみれば、変ですね。確かあっちは袋小路になっているはずですよ。
 裏口にしている家の人かゴミの収集でもない限り、誰も通らないと思いますけど」

「お前はどうしてそういうことに詳しいんだ……?」

「え、だって町の道を把握しておくのも常識だって、隊長からお聞きしましたから」

 幼さの残るニコルの微笑みに、他の面々は一斉に肩を落とした。

「……あのな、俺たちが今どこに配属されているか知っているか?」

「昨日拝命したのに、忘れるわけないじゃないですか。
 ラウ=ル=クルーゼ隊長指揮下のクルーゼ隊です。
 今日の僕たちは、それを報告するために各々の家に回ってるんでしょう?
 あ、さてはミゲルが忘れてたんですか?」

「馬鹿、俺が忘れるか!
 そうじゃなくて、クルーゼ隊といえば宇宙戦部隊。
 アプリリウスの中の別れ道を覚えてたって、戦闘に関係ないだろうが!」

「それもそうですね」

「とにかく、ニコルの言うとおりだとすると、こんなものが転がってきた理由が見つからないな」

 ふたを取り上げ、ふむ、と首をかしげたアスランが言う。

「行ってみればいいじゃないか。
 町の治安を守るのも、一応俺たちザフトの役目だぜ?
 少しぐらい予定の時間に遅れたって、アスランのお袋さんなら何も言わないさ」

「そうだな」

 自分の母の性格はよく知っている。
 アスランたちは互いに頷いて、足音を潜めながら奥へと進んだ。







「いい加減におとなしくしろ、このアマ!」

 今の自分には、手足をバタつかせて抵抗するしかできない。
 何度頬を殴られただろうか、それすらもわからない。
 口の中が切れて、言葉を出すことも苦痛になって。
 殴られるのは辛かった、嫌だった。
 でも、ここであきらめて身を委ねてしまうのはもっと嫌だった。

「お前たち、そこで何をしている!」

 自分を組み敷いている者たちの声とは違う声。

「助けっ……」

 は振り絞るように声を紡ぎ出す。
 が、それはか細く弱々しいものになった。

「……お前等ぁっ!」

 怒号が聞こえたかと思うと、の上から男たちは跳ね飛ばされていた。

「女性の了解も得ずにこんなことをなさろうなんて……。あなたたちには天罰が下りますよ」

 半眼を細めながら言った彼の言葉に、思わず身震いするを含む一同。

「大丈夫か?」

 ようやく起き上がってへたり込んでいたに、声と共に、布が降ってきた。

「軍服なんて無粋なモノだろうけどさ、一応羽織ってな。それ以上、男の前でいる格好じゃないだろ」

「あ、ありがとう……」

 着ていた人の体温が残っているモスグリーンの服は冷たい仕打ちを受けていた彼女の心を包み込む。

「こらこらイザーク。やりすぎだってーの」

「やりすぎだと!?
 きさまはこいつ等がしていたことを許せるのか?」

「誰が許せるって言った?
 やりすぎだって言ったのは、お前が俺の分まで殴ってしまいかねないからだ」

「ディアッカの意見に同感だね、俺も」

「だからといって、1人1人でやってたら時間もかかっちゃいますし……。
 ここは皆さんで一斉にやりませんか?」

「なるほど、それはいいアイディアだな」

「その案乗った!」

 かくして、茫然としているの目の前で。
 軍人5人の手による、不届き者3人へのおしおきタイムが繰り広げられた。



「……よし、これでこいつらもこりたはずだろ」

 顔をボコボコに腫らせた男たちをロープで縛り上げたのはディアッカ。
 その後ろでは、イザークが殴り足りなさそうな顔で立っている。

「ちゃんとさらし者にしておこうね」

 ミゲルが楽しそうに、真ん中の男にカードを下げた。

『俺たちは強姦魔です』だけじゃヌルイだろ」

 ラスティは彼からマジックを奪うように取って、キュッキュと書き足していく。

『俺たちは最低変態強姦魔です』か。ふふっ、この人たちにはぴったりです」

「さて、残る問題は……」

 アスランの視線が、後方に向いた。思わず体を震わせる

「連れていけばいいじゃないか」

「連れていくって……?」

「ここに放っておくわけにもいかん。あの格好ではどこに行くこともできんだろうしな」

「最後まで面倒見てやろうぜ」



  黒マント製作機から
   ニコル、微黒?
   つか、あの隊長なら吹き込んでそうです。<地図覚え
   ヒロインの回想シーンなので文字色変えました。


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