『いやぁぁぁぁぁぁぁ!!』
 通信機越しで、フレイの半狂乱の叫びが聞こえる。
 イージスたちを相手にするのが精一杯でたどり着けなかった。
 その代償が、今、支払われてしまった。
『ザフト軍に告ぐ!』
 間をおかず流れてきたのは、AA副艦長の声。
 その内容に、は唇をかみ締める。



 戦闘から戻って着替えて。
 部屋に戻ろうとしたの耳に、泣き叫ぶ声が届いた。
 行きたくない。
 そう思っても、その部屋の前を通らなければ自室に戻れない。
 ドアの前にいる人たちに隠れるようにして、彼女は通り抜けようとした。
 が。

「嘘吐き!」

 ――どうしてこう目ざといんだろう。
 見つかってしまったことに、は小さく嘆息する。

「パパの船、守ってくれるって言ったじゃない!」

「フレイ、彼女だって必死に……」

「相手が同じコーディネイターだからって手加減してるんでしょ!」

 叫び声を聞いたとき、はたまらず壁を殴っていた。
 その音に驚いて、回りの動きが止まる。

「確かに、私が守り切れなかったのは事実。
 そのことについては何度だって謝るし、どんなになじられても構わない。
 だけど、実際に銃を持って戦わないのに、あなたにそれだけの権利があるとは思わない」

「何よ、あんたなんか……。
 目の前で大事な人が死んだこともないくせに偉そうなこと言わないで!!」

「それくらい、ある」

 小さな言葉を残して、はその場から足早に立ち去った。







「いったい何の騒ぎだ?」

 彼女の後ろ姿が見えなくなる頃。

「……フラガ大尉」

 通りすがりの彼に、ミリアリアがかい摘まんで説明する。
 それを聞いたフラガは開口一番。

「そりゃ、そこのお嬢ちゃんのほうが悪い」

「どうしてですか?」

 きっぱりと言い切った彼を、皆の視線が集まる。

「4年前の大陸縦断シャトルの爆撃事故、覚えてるか?」

「え、ええ。
 確か、離陸しようとしたオーブ行大陸縦断シャトルが地球軍の演習中に誤射されたミサイルの直撃を受けたんでしたよね」

「で、もちろんシャトルは大破炎上。乗客乗員すべて死んだって言う……。
 まさか!」

 サイの言葉をトールが引き継いで、思い当たったように声を上げる。

「そうだ。そのシャトルにはあいつの両親が乗っていた。
 そしては、見送りデッキからその一部始終をはっきり見てる」







 体中が、痛い。
 強化ガラス越しに見た炎は、本物には見えなくて。
 でも、じりじりと肌を焦がすようにも見えて。
 さっき別れたばかりの笑顔が、二度と見られない。
 温かく大きな手で、いつも包み込んでくれた。
 洗濯物を干しながら、太陽のように笑ってくれた。
 自分と彼らが出会ってからまだ10年強。
 まだまだ言いたいことがあった、伝えたりなかった。
 それなのに、もう言葉を交わすこともできない。

「こんなのない……誰か、誰でもいいから嘘だと言ってぇぇぇぇぇぇ!!」

 の悲鳴は、デッキに響き渡った。







「私、のこと、妹みたいに思ってたのに、全然知らなかった……」

 ミリアリアはそう呟いて、拳を握りしめた。

「あいつは自分のことを話すのは避けるからな。
 このことだって、俺が幼なじみなんてモノをやってなきゃ絶対に知らなかったことだ。
 ……ったく、このことは兄妹で似てんだよ」

 そう言った後、フラガは小さく苦笑した。



  黒マント製作機から

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