スイッチと思われる場所に触れると、微かな唸りとともにモニターに明かりが灯った。 「よし、思ったとおりね」 私はわずかな明りを頼りに、キーボードに指を走らせた。 そもそも、救命ポッドの操作プログラムが難しいわけはない。 プログラムに精通していなくてもわかるようにしておかなければ、緊急用として使えるわけないではないか。 少し考えればわかる理屈である。 コンピュータ技師ばかりが乗りこむとは限らない、子供ばかりのときだってあるかもしれないのだから。 生命が危険にさらされることはなくなった。 ……今のところは。 しかし、船体スキャニングしてみたあとで、私は顔をしかめることとなった。 「推進部完全破損してるし……」 やっぱり今日は厄日だ。 とりあえず、救助信号用の照明弾だけ上げておく。 運がよければ、助けてもらえるだろう。 すべての操作を終えて、私は皆のいる場所に戻った。 「化け物!!」 最初に声を上げた男が叫んできた。 化け物かぁ。いい加減に言われ慣れたから気にしない。 が、その前に。 「おっさん、ボキャブラリー貧困」 俺のまっすぐ伸びた指が、ビシッとそいつを指さす。 回りからは思わず漏れた失笑。 「う、うるさいっ! 黙れ、このコーディネイターのガキが!」 「……うそ……」 フレイの呟きが耳に届いた。 嘘って、別に隠してたわけじゃない。言い触らしてたわけでもないが。 普通、クラスメイトなんかやってたら気付くぞ。 「コーディネイターだからなんだ? 今、ここで、おっさんに迷惑かけてるか?」 「私はお前なんかと同じポッドに乗っていたくないんだ。 化け物はさっさと出ていけ!」 「ヤだね。俺だって、まだ死にたくないから。 一緒がいやだって言うなら、おっさんが出ていけばいい」 「この船はナチュラル専用だ。私がそう決めた。 だから、コーディネイターのお前が出ていくべきだ!」 「やめないか!」 俺たちの間に割り込んできたのは、プログラム云々を抜かした奴。 「今の状態を知っているのなら、無駄な言い争いはするべきじゃない」 「しかし……」 言い返したおっさん、睨まれた。 「彼女がこの船の危機を救ってくれたことは、紛れもない事実だ。 それを追い出そうとは、恩を仇で返すようなもの。 そんな大人気ないことをするのがナチュラルだと思われては、ますます馬鹿にされるだけだと思うが?」 おっさん、悔しそうに顔を赤黒く染めていても言い返せないらしい。 「すまなかったね、命の恩人に向かって」 「気にすんな、俺だっていい加減に慣れたさ。しかし……」 船内をぐるり見渡せば、明らかに脅えの含まれた視線が突き刺さる。 「俺はコントロールルームにいる。余計な争いの火種は生みたくない。 それに、ここにいるだけで不快になる奴らもいるようだしな」 「同じ人なのに……ね……」 コントロールルームの椅子は、さっきまでいた部屋よりも格段に大きく。 体を投げ出すように座っても、十分余裕がある。 言われ慣れたとはいえ、心に傷は付く。 私は、漏れるため息を押さえることはできずにいた。 それからどのくらいの時間が過ぎたのだろう。 おそらく1時間とたってはいないだろうが。 どうやら座り心地満点の椅子は、私を夢の世界に誘いかけていたようで。 揺れに気がついたとき顔を上げると、窓越しに大きな赤い瞳が見えた。 「MS……?」 大きくて大きくて、とても無機質な顔だった。 ![]() 黒マント製作機から はい、ようやくヒロインとキラが出会いました。 って、顔は会わせてませんけど。 一応補足しておきますと。ヒロイン、コントロールルーム内では素に戻っています。 To NEXT |