小さな電子音に気がついて、ラクスは目を開いた。
 続いて開いたドアから漏れてくる明かりに、起き上がって目をこする。


「ラクス嬢、着替えて付いてきて下さい」

「……あら、こんな夜中にどうしてですの?」

「やっぱりあなたはここにいるべきではありませんから」

 私は彼女が着替え終わるのを待って、部屋から連れ出した。
 やはり、時間が時間なだけに、非常灯だけが進むべき場所への目印。
 気が済むまで泣いて、その後考えて。
 ようやく出た答え、というか、それにしかたどり着けない答えが、ザフトへラクス嬢を返すということ。
 これ以上、この歌姫を置いておけば、今回のように利用されるだけだから。

「これからザフトの船までお送りしますね。
 あちらにはアスランさんもいるようですから、心配しているでしょうし」

 ロッカールームでラクス嬢に着替えてもらっている時。
 私はカーテン越しの彼女に、そう話しかけた。

「送って下さるって、はどうしますの?」

「この船には兄もいるわけですから、離れるわけにはいかないですよ……」

「またひとりで泣かなければならないとしても、ですか?」

「それは……いつものことですから」

 音を立てて開かれたカーテン。
 宇宙服に着替えたラクス嬢は、じっと私を見てくる。

「いつになったら、あなたは泣けるのでしょうね。
 私の記憶には、悲しそうな笑顔のしかありませんわ」

「悲しそうなって……」

、あなたは本当の笑顔を見せられる人。
 でもそれは、本当の悲しみを見せられる相手を見つけられたらの話」

 私にはラクス嬢の言葉の意味が飲みこめない。
 きょとんとした顔をしていたら、クスリと笑われた。

「いつだって、あなたはひとりじゃないのですよ。
 そのことに気付けば、私の言った言葉の意味が分かります」

 まだイマイチわからなかったけれども、私はとりあえず頷いておいた。
 そして、ラクス嬢の手を取ってMSデッキへと向かう。




「やっぱり来たね」

「まあキラ様。夜分、こんな格好で失礼いたしますわ」

「あはは、アスランに誤解されるお腹だね」

「あらあら、そうかも知れませんわ」

 ――あなたたち、そこで和まないでくれません?
 二人の会話に強張った体は緊張が解けたが、それ以上に脱力。
 私はその場にへたり込んでしまった。

「どうしたの、

「どうしたもこうしたもないです。どうしてここにキラ……」

「しっ!
 気持ちはわからないでもないけど、静かにしないと見つかるよ?」

 確かにそうなんですが、ウインクされて言われても困るんですけど。

「僕も副艦長のとった行動については、納得がいかなくて。
 あの時はああするしかなかったんだろうけどさ……」

 そうか、一応キラ先輩もブリッジ要員。
 存在感薄くて忘れてた。
 あの一連のことも、ちゃんと見てたわけだ。

「だから、これ以上ラクスさんを利用させないために、は必ず動くと思ってね。
 ここで待ちぶせさせてもらってたわけ」

「当たってよかったですわね」

「うん、ということで僕も連れていくように」

「嫌です。キラ先輩には関係ないですから」

「そう。んじゃ、ここで大声を挙げてもいい? そうしたら、誰かがすっ飛んでくると思うけど」

 思いっきり頬が引きつったこと、自分でもわかる。
 私は、ニコニコ笑っている目の前の先輩をにらみつけた。
 ――しっかり密封梱包して、ラクス嬢と一緒にザフトに送ろうか。
 そう思ったことは口に出さない。

 「……わかりました。それじゃ、おとなしくしていてください」



 突然動き始めたストライクに、一番最初に気がついたのはマードックである。
 と同時に、ブリッジには警報が響き渡った。

が、ピンクのお姫様を連れ出した!』

 フラガが怒鳴り、ナタルが静止の声を張り上げる。
 しかし、エアロックは開放されてしまった。
 そしてストライクの白と青の機体は、宇宙に解き放たれる。



  黒マント製作機から
   思ったより引っ張ってしまったので、一回切ってしまいます。
   多分、少なくて3回分は続くんじゃないかと。

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