「アスラン=ザラ……ですね。コックピットを開いて」

 ストライクの前に止まったMSに、私は声を投げた。
 そしてこちらも操作して、ハッチを開く。

「ラクス嬢。あちらに声を掛けて上げてください。本物であると知らせたいんで」

「そうですわね。
 アスラン、ごきげんよう。お迎えに来て下さってありがとうございますわ」

「いえ、俺があなたのことを放っていくことなんてできませんから」

 外部スピーカーを通して聞こえる声。
 自分の安全より何より婚約者を優先するところ、変わらない。

「じゃ、ラクス嬢。あちらへ」

 私は彼女を促して立ち上がって。ハッチの縁から、ラクス嬢の背中を押した。
 ふわふわと少し漂う彼女。その二の腕を、アスランさんが掴んだのを確認する。

!」

 コックピットに戻ろうと背を見せたとき、いきなり呼ばれた。
 振り返ると、ラクス嬢の肩を抱いたアスランさんがこちらを見ていた。

「やっぱり、か……。
 無事でよかった、連絡ないからみんな心配していたんだぞ」

「あー、それは悪かったです。ごめんなさい」

「予想しなかったところで、いきなり再会できたと思ったら、お前、そんなところで何をやっている?」

 何をって……見たらわかるでしょうに。
 まあ、信じたくないのかな?

「見ての通り、ストライクのパイロットですよ。生きていくためには必要でしたから」

 『幸い、MSの操縦方法は知ってましたから』と、私は付け加える。

「キラは……?」

「心配しなくても無事だよ」

 背中に貼りついてきた人物の横っ腹に、俺は右肘を叩き込んだ。
 いつの間に縄抜けされやがりましたか、この先輩は。

「ヒドいよ、

「すぐ抱き付くのをやめて下さったら、こんな真似はしません」

 見上げられ、揺れる二つのアメジスト。
 きれいな色に心を奪われそうになるが、私は何とか堪えた。

「キラ、俺はお前と戦いたくない。だからこっちに……」

「ごめん、それは無理。行ったらに会えなくなるから」

「俺的には、キラ先輩にあっちに行ってほしいと……」

「何か言った?」

「別に」

、お前も来い。
 コーディネイターのお前がいる場所はそこじゃないだろう?」

「無理ですわ、アスラン」

 それまでおとなしくしていたラクス嬢。彼が疑問符を浮かべる様子が見えた。

「だって、あちらには彼女のお兄様がいらっしゃるんですもの」

「そう、たった一人の兄を放ってはいけないし、今まで世話になってきた友人もいる。
 裏切り者扱いされようとも、私はAAを離れることが出来ない」

「俺たちと戦うことになってもか?」

 頷いた私に、これ以上の説得は諦めてくれたらしい。
 アスランさんはそのまま黙り込んでしまった。

「それじゃ、私たちはこれでおいとましますね。
 、キラ様、今までありがとうございました」

 無口になった婚約者に変わって、ラクス嬢が笑顔で頭を下げてくれた。

「お礼を言われるようなことはしていませんよ。
 私こそ、久しぶりに貴女とお話できて楽しかったです。それでお願いなんですけど……」

「わかっています。
 がそれに乗っていることを言わないでほしいのですね?」

「はい。相手が私だと知ってしまうと彼らもやりにくいでしょうし……。
 ニコルあたりは、とんでもなく気にしてしまいそうですから。
 相手が知り合いだということで苦しむのは、私だけで十分です」

、本当にそれでいいんだな?」

「はい。だから、今度戦うときには私はためらいなく引き金を引きます。
 アスランさんもそうしてください、おねがいします」

 私は深く頭を下げて、コックピットに飛び込んだ。
 そして急いでハッチを閉めて、その場から離れるべくペダルを踏みこんだ。





『とっとと帰ってこい! 後ろからシグーが狙ってるんだぞ』

 突如飛び込んできたフラガの声に驚いて、は一瞬動きを止めた。
 後ろを向くと、ヴェサリウスから白い機体が飛び出してくる。

『あのクルーゼが、何もしてこないはずはないだろうが。
 戦闘用バッグパックをつけていないストライクで、あいつの相手は無理だ。
 とにかく、AA射程距離まで戻ってこい、パックを射出……へ?

「……帰っていきますよ?」

 何もせずに方向を変えて戻っていくMS。
 その理由がわからず、フラガとは間抜けな声を上げた。

「どうやら攻撃してくる気はないみたいですから、僕たちも帰艦します」



  黒マント製作機から
   無駄に長くなりました。しかも、キラがしゃべってねぇ。
   ドリー夢がドリー夢じゃなくなっていくような気もします……。
   反省。

To NEXT