勝手にストライクを起動・発進させ、人質を逃がしてしまった件について。

「……もっと激しく怒られるかと思ったのに」

 私は想像していたよりも軽い刑罰に、少し驚いていた。
 叱られた挙句、独房での謹慎とかが命じられるかと思っていた。
 それなのにそれなのに。

「ほら、の手止まってるよ」

 なんでどうして、キラ先輩と2人で皿洗いなんですかっ!
 それも3日間もなんて……。
 これなら、1人でトイレ掃除のほうがマシです。
 確かに、AA全員分の食器類は大量。それでも皿洗いは嫌いじゃないし、苦痛じゃないですし。

「早く洗い終えないと、明日の朝になってしまうけど?」
「……わかってます」

 だ、誰のせいで手が止まってると思ってるんですかぁぁぁ!
 罰になるのは私だけ、キラ先輩は喜んでるし。
 あああ、こんなの嫌です。誰か解放してください。
 こんな懲罰を提案したフラガ兄、本気で恨みます。



「あのね、聞きたいんだけど……」

 できるだけ離れるようにして洗い物を再開した。僕は洗う手を止めないままで口を開いた。

「君は、アスランのこと、知ってるんだ」

 ビクリ、と彼女の肩が震え、そして小さく頷きかえしてくれた。

「ユニウス・セブンでレノアおばさんの名前を聞いたときから、もしやって思ってた。
 それに、さっきの会話が証明していたから」

「だから、私を艦長たちの前で尋問しますか」

「そんな気は全くないよ。むしろ、尋問されるとしたら僕のほうだしね」

 今まで逸らされていた視線が、驚いたようにこちらを見てくれる。

「僕はアスランとは、小さい頃からの友達だから。
 でも3年前、アスランたちはプラントに上がることになって。
 トリィは、その別れの日にもらったものなんだ」

「トリィ?」

「ほら、僕の肩によく止まってる緑のロボット鳥」

 くすり。
 が僕の目の前で小さく笑った。

「アスランさんって、昔から変わらないんだ」

 僕の前では、彼女はいつも、あまり表情を変えない。
 初めて見た表情がとても魅力的で、僕は心の中でガッツポーズ。

「ラクス嬢のハロも、アスランさんが作って差し上げたんですよ。
 だから、彼女のお家には色違いのハロがいっぱいなんです。
 なかでもお気に入りなのが、あのピンクハロなんですよvvv」

「そうなんだ」

 僕はやっとの思いで返事を返した。
 は気がついていないみたいだけど、今の僕は心臓が踊っている。
 たった一言だけど言葉をくれたのが、とてもとてもうれしかった。
 そして何気なく。

はいつ、アスランと出会ったの?」

「2年ほど前、ユニウス・セブンの惨劇が起こる前に……」

「そっか……」

 失敗した、と思った。
 今だけだとしてもせっかく普通に話していけると思ったのに、問いかける話題を間違えた。
 そのあとは、僕もも言葉を発することはなかった。
 知り合いに銃を向ける道を選んだ彼女に、何を言えばいいのか、僕には全くわからなかったから。
 ただ。
 これからトリガーに手を掛ける度に、彼女の心が血を流すであろうということ。
 今の関係が変わらない限り、僕には見ているだけしかできないこと。
 たった2つしかわからなかった。




「そう……そうなの……」

 泣き疲れて眠ってしまったため、フレイは夜中近くに目を覚ました。
 水を求めてやってきた食堂の隅、まだ煌々と照らす明かり。
 コックが明日の仕込みでもしてるのかと思い、無視しようとしたけれど。
 聞こえてきたのは、若い男女の声。
 興味を引かれて、そっと近付いたら、会話がすべて耳に飛び込んできた。

「あの子たち……パパを奪ったザフトの……。
 それじゃあもっと……もっと苦しめばいいのよ……」

 形よい唇は憎悪の混じった薄い笑いに彩られ。
 再び、音を潜めてその場を立ち去った。
 彼女が次に取るべき道は、はっきりと指し示された。



  黒マント製作機から
   説教だけで終わるのも何だし……と皿洗いを課してみました。
   で、ようやく。本当にようやくです。
   共通の知り合いの話題で、少しだけ距離を縮めたキラとヒロイン。

   次は大好きな第8艦隊の下りなんですが……。
   戦闘シーンを抜いたりして短く終わらせてしまうかもしれません。

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