「貴方はひどい人だ」

 連絡艇に渡る通路の前で、ハルバートンに向かって声を投げたのはレガールだった。

「お前、上官に向かってなんて口の…」

 彼を呼びに来た部下が叱りつけようとするが、ハルバートンはそれを制した。

「その様子だと、もう見てしまったようだな」

「ええもちろんですとも。人手の足りないAAでは、自分でも貨物搬入に借り出されますからね。
 ついでに、MSデッキでの会話も聞かせていただきました。
 もう戦う必要はないのだとほのめかしておきながら、貴方たちの運んできたモノは何なんですか!
 我々では手に負えない代物だとわかっていながら、こちらに運んできた理由は何ですか。
 貴方は口では奇麗事を言っておきながら、実際はあの子達を手放すのが惜しいんだ!」

「君の怒りも最もだ」

 待っていた部下に『5分で戻る』と告げて、先に戻らせた。
 そして広い通路には、2人だけとなる。

「あれは、万が一を想定して別の場所で作らせていたものだ。そして完成したという連絡を受け、受領してきた」

「完成したって、ハードだけでしょう? 肝心のソフトは何一つ組みあがっていないじゃないですか」

「そうだな……。しかし時間がないのだよ。
 君も軍人ならわかるだろう。すでに我々とザフトとの戦力差は大きく開くばかり。
 G計画はそれを覆してくれる。だからこそ、これから本部へ向かうこの船に託すのだ」

「OSすら出来上がっていない不完全な機体を使って何ができるんです?
 貴方はおそらく、ストライクのOSを使おうとしているはずだ。
 でもそれでは扱えない、だからそのサポート用の……」

「やはり、博士の血を引いているだけはあるな。
 たった一つの事柄から先の先までを読む。頭の回転のよさはさすがだよ」

 息を吐き出しながらのハルバートンの言葉に、レガールは次の言葉を失った。

「私はくんとキラくんを利用する気は毛頭ない。
 コーディネイターとはいえ、あの子達は民間人。それもまだ学生なのだ。
 それにあの子達は、2人とも優しい瞳をしていた。
 これからの未来を作っていく子供達に悲しい戦いをさせて、それを曇らせたくはない」

「ですが、提督がアレをここに持ち込んだことで……」

「OSの件に関しては、すでにラミアス大尉に命令してある。
 『あの子達を利用してOSを作らせようとする者には厳重に処罰を』とな。
 それに君も、そんなことはさせないと反抗するだろう?」

 そう言って微笑んだハルバートン。

「……わかりました。その言葉、信じさせていただきます。
 ですが、自分は貴方を許すわけには行きません」

「ああ、そうだな……。その件に関しては何も弁明できないし、しても無駄だろう」

「ええ。今さら戻るものでもありませんから」

 わずかな沈黙の後。

「すまんな、時間だ」

「はい……」

「アレのこと、よろしく頼む」

 レガールが頷いたのを確認して、ハルバートンはAAとメネラオスを繋いでいた通路を閉じた。



  黒マント製作機から
   第8艦隊がAAに運び込んだもの。皆さん予想付きますよね?
   妹思いなところのレガール兄を書きたくて、できたお話だったりします。
   さて、文中では出てこない裏話。
   大陸横断シャトルを誤爆落してしまったのは、第8艦隊だったのです。
   月から降下、大気圏戦争になったときの演習中の事故と思ってください。<無理設定(苦笑)
   個人的に家族とハルバートンは親交があったのですが、
   事故以来、すっかり疎遠になってしまいました<当たり前だろう。
   ですが、ヒロインは何度か会ったことのあるハルバートンの顔を忘れています。
   兄はしっかり覚えているので、過ちといえど、未だに許せないというわけでした。

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