僕は避難民のシャトルの前で辺りを見回していた。

「皆どこに行ったんだろう?」

 そろそろシャトルが出る時間。
 そんな時、列に並んでいた一人の女の子が走ってくる。
 僕はその視線に合わせるように腰を落とした。

「おにいちゃん!」

 勢い余って飛びついてきた小さな体。

「大丈夫?」

「ぜんぜんへいき。それでね、コレ!」

 両手で差し出してきたのは、折り紙で作った花。

「いままでまもってくれてアリガト!」

「え、僕は……」

 戸惑いながら受け取った僕に、女の子はもう一度手を出した。

「あのね、コレはね、おねえちゃんにわたしてあげて。
 おにいちゃん、おねえちゃんのコイビトなんでしょ?」

「い゛っっっっ?」

 思わぬことを言われて、僕の顔は一気に赤くなってしまった。

「な、何でそんな風に思ったの?」

「だっておにいちゃんとおねえちゃん、おなじカッコウしてるもん。
 おかあさんにおしえてもらったの。コイビトはおなじふくきてるって」

 お母さん、どういう風に教えたのですか?
 ……確かに同じ服着てます。パイロットスーツも同じ青色です。
 ですが、これは制服だからであって、同じものを着ているから恋人というのであれば、
 サイやトールたちとも恋人という図式が成り立つんじゃないかと……。
 うわぁあ、想像したくないっ!!!
 でも、その違いを今説明するのも……。
 僕とが恋人ってうれしい誤解もしてくれているわけだし。

「わかった、ちゃんと渡しておくよ」

 僕は笑顔で受け取った。
 それを見て、女の子は安心したように走り去った。
 あっちで手招きしているのが、あの子のお母さんなんだろうな。



「キラ!」

 聞きなれた声に振り向くと、探していた皆がそこにいた。……ただし、少し見慣れた格好のまま。

「ほら、これ。除隊許可証だって」

 そう言って、書類を手渡してくれるトール。

「皆なんでそんな……?」

「フレイがね、軍に志願したの」

「え?」

「1人だけほうっておけないしさ、それに」

「AAは人手不足だから。俺たちでも役に立つし」


「おい、乗らないのか?」


「すいません、こいつ乗ります!」

 トールが背中を押してくる。

「また、必ず会おうな」

「まちがってもザフトになんか入ってくれるなよ」


 警戒サイレンの響き渡り始めた中で、走り去っていく友人達。
 トール、ミリアリア、サイ、カズイ。
 そして、ここに来なかったやフレイ。
 皆は戦火の中に残ろうとしている。
 ここで出会ったAAクルーの人たち。
 そんな人たちを残して、ここから逃げていいんだろうか?
 答えはすぐに出た。

「行ってください!!」

 シャトル前の人に叫んで。
 僕は手にした書類を破り捨て、ロッカールームを目指し走った。




 ロッカールームに飛び込むと、そこにはいるはずのない少女の姿があった。

「フレイ……?」

「キラ、戻ってきたの?」

「そうだけど、君は何でこんなところに?」

「私も、できることをしなくちゃいけないと思って」

 開かれたロッカー。
 彼女はそこに吊り下げられていたものに手をかけている。
 それを見て、僕は小さく息を呑んだ。

「まさか!」

「今回はが1人で行っちゃったけど、私だってできるわ。
 キラがいなくなっちゃった分、私が代わりになれるもの」

「駄目だよ、女の子がそんなことをしちゃ駄目だ!
 大丈夫、僕は帰ってきた。これからも君たちを、AAを守るから」

 僕はフレイの体を押しのけるようにして、ロッカーを閉めた。

「なら……私の思いが貴方を守るわ」

 両肩をつかまれて近寄ってきた体。
 次の瞬間、僕の唇はフレイのそれに塞がれていた。

 ――何ガ起コッタ?

 初めての行為に、目を見開いてしまう。

 ――キス、されたのか?

 その言葉だけが、頭の中をグルグルと回る。

「貴方の思いは私が守る。ずっとそばにいてあげるわ」

 優しく抱き寄せられ、耳元で甘く囁かれ。
 頭の中ではわかっている。大事な友達の彼女なんだと。
 自分の求めている相手ではないと知りつつも、突き放すことができなかった。



  黒マント製作機から
   お花の女の子の発言、書いてて楽しかったです。
   予想も付かなかった言葉にキラ、思わず照れまくり。
   勘違いだとわかってても、否定しないあたりはやっぱりという感じですが。
   でも同じ服着てるから恋人同士っていう教え方はないよ、お母さん。
   それじゃあ地球軍もザフトも、アブナイ関係の宝庫じゃん(笑)
   フレイとの絡み、書こうかどうしようか寸前まで迷ったんですけどねぇ。
   まあこれ以上の関係にはさせないぞと決め、今回は特別に。

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