コックピットに座ってシートベルトを締める。 ハッチを閉めて、並ぶボタンを手早く操作し、OSを立ちあげる。 もう避けられない、逃げられない。 肉親や今の友達を守るために、かつての知り合いを撃つことを。 この船に残って戦うことを選んだ。 正直な気持ち、今でも怖い。 銃弾の飛び交う戦場へは、いつも棺桶へ向かう道程に感じられて。 私の背中にじっとりと汗が伝う。 ミリィたちは残ってしまったけど、キラ先輩は地球に降りただろう。 だから、他の誰もMSに、ストライクに乗ることはできない。 私がやるしか………ない。 『進路クリア、発進どうぞ』 「=、ストライク、出ます!」 ミリィのいつもの声にいつもの言葉を返して。 僅かな間の加速のG、感じた次の瞬間にはふわりとした無重力空間。 メインモニターに映し出されるのは、攻撃を受ける第8艦隊。 『フェイズ3までには必ず戻れ! スペック上では可能とあっても、実際に試した奴はいないんだからな』 大気圏突入ギリギリの戦いは、いつもより緊張する。 副艦長の声が響く。 私は答えを返さずに、勢いよくペダルを踏みこんだ。 まず目指したのは、一番近くにいたバスター。 「AAも第8艦隊も落とさせない!」 向けられた銃身を踏み台に飛び上がって、引き抜いたビームサーベルでスラスター部分だけを切りつける。 『うわっっ!!』 支えを失った機体。 聞こえてきたのは、やはり知っている声。 でも、ためらってはいられない。 ためらったら、死ぬから。 捜し物は見つかった。死ぬのは平気、でも。 やるべきことがあるから、まだ死ねない!! 『ナチュラルが生意気なんだよっ!!』 飛びかかってきたジンを、左手に持ち直したサーベルを使い、逆手で貫く。 それを勝機と見たのか別のジンが向かってきた。 がしかし、攻撃が届く前に、ストライクから放たれたライフル。 光は正確に頭部を打ち抜いた。 『ストライクゥゥゥゥ!!』 最高速度で向かってくるデュエル。 あまりの勢いに、私は慌てて機体を動かした。 その時。 その横を通りすぎるシャトル。 その先を見上げると、敵艦と共に炎上するメネラオスが見えた。 寸前で民間人だけでも逃がされたのですね……。 降下していくシャトルを見ている私の胸の内に、ハルバートン提督の顔が甦る。 『邪魔だぁ!』 その叫びに我に帰る。 シャトルに気を取られていたために、その動きを見ていなかった。 はっと気がつくと、デュエルの銃口が火を噴いた。 「だめぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」 叫んで手を伸ばす。 でも、届かない。 一瞬にして爆散したシャトル。 破片すら飛んでこない。 「あ、あああああっっ……うそ、嘘嘘嘘嘘、嘘!!!」 お父さんたちを失った事故と。 レノアおば様たちを奪った光と。 いやがおうでも重なる、フラッシュバックする。 シートに腰かけているはずなのに、ぐらりと体が倒れた気がした。 人を殺したくなくて動きを止めるだけにしなければよかった。 知り合いだからといってためらわなければよかった。 甘い考えは捨てればよかった。 何度後悔しても、落ちた命は帰ってこない。 あのシャトルにはAAで何度か見かけた人たちも、キラ先輩も乗っていたはず。 ごめんなさい、ごめんなさい。 守るって偉そうに言ったのに、結局死なせてしまいました。 『! 、戻って!』 ミリィの声が届く。 戻りたいけど、もう駄目だよ。 引力ってこんなに力があったんだね。 ほら、機体を建て直すこともできやしない。 「すみません、地球で必ず合流します」 そう言って、私は通信を切った。 大丈夫、スペックを信じていないわけじゃないから。 単体降下でも死んだりしない。 離れたところに落ちたって、必ず捜し出します。 目の前で落ちた命の分も、AAは守り抜きますから。 ――今は1人で落ちていきます。 ![]() 黒マント製作機から 目の前でシャトルが爆散、ショックでヒロインは半自失状態に陥ってます。 生きなければという気はあるものの、体中に力が入らないんですね。 To NEXT |