以前見たことがある。

「……なんで?」

 ストライクとAAは突入角度が大きく差異ができて。
 だから後からおいかけるって言って、一人落ちていったはず。
 でも頬に当たる柔らかさ、覚えのある天井の染みが。
 今の私がどこにいるのかを教えてくれていた。

「とりあえず、起きて挨拶に行かなきゃ……。艦長さんたちにも迷惑かけただろうし」

 半身を起こそうとして、左手が動かないことに気がついた。
 なんとか右手だけで起き上がると、そちらを見てみる。
 しっかりと握りしめられた私の手。
 そして握りしめている先には、緩やかに上下をくり返す青い制服。
 袖口から見える、白い包帯。
 柔らかそうな茶色の髪を持つ先輩は、スヤスヤと熟睡していた。

「降りたはずじゃ……」

 次の言葉が出なくて、私はキラ先輩の寝顔をじっと見つめた。
 最初のときも思ったけれど、本当に整った顔立ちをしてる。
 ほんのりと赤い唇は形がきれいで、まつ毛も長くて。
 頬もすべすべして柔らかそうで、撫でたら気持ちいいんだろうなぁ。
 これで口を開いていなかったら、女の子としても十分通る可愛さだよね……。

「……そう見つめられると、さすがの僕も照れるんだけど」

 どのくらいの時間が経ったのだろう。
 その声に我に帰ると、キラ先輩は薄く片目を開いてこちらを見上げている。
 私は一気に赤くなってしまった。

「せっ、先輩が人の手を掴んでるのが悪いんですっ!」

 親しくなる気はないとか言っておきながら、自分の取った迂闊な行動。
 これじゃあ私がキラ先輩に興味を持ってるって、誤解される!

「そういうことにしておくよ」

 いや、絶対そうなんです。それ以外の理由はないんです。
 だから、クスッて笑わないでください。
 小首をかしげて、可愛く微笑まないでください。

「もう大丈夫かな?」

 立ち上がって身を乗り出してきたキラ先輩。
 私は後ろに下がるべく、手を後方に付こうとして。

  ズルッ!!

「……、ベッドの上で何遊んでんのさ……」

「だ、だって先輩が近寄ってくるからっ……」

 居室とは違って、後ろに壁はなく。
 手を降ろし損ねて、私はそのまま床に落ち……なかった。
 寸でのところで、キラ先輩が抱きとめてくれた。

「まったく……。単なる熱を計ろうとしただけなんだけど。
 これ以上逃げられても敵わないし……」

「ちょ、ちょっと待ってくださいっ!」

 左手は相変わらず押さえ付けられ、体は抱えられたまま、身動きが取れない。
 近寄ってくるキラ先輩の顔に、私はぎゅっと目を閉じた。

「よかった、だいぶん下がったね」

 額に当てられた冷たい感触。それが先輩の額だと気が付いたのは半瞬後。
 恐る恐る目を開けると、キラ先輩のアップ。
 深い紫水晶のような瞳に捕らえられたかのように、私は動けない。
 避けていた、嫌っていたはずの相手なのに、視線を逸らせない。
 認めたくないことなのに、自然に動悸が高鳴っていくのがわかる。
 キラ先輩は微笑みを浮かべたまま、私をじっと見ている。

「あ、あの…はなし……」

 私が何とか言葉を振り絞ったとき。



  バサッ!!



 その音に驚いて、私とキラ先輩は同時にそちらを見た。

「医務室で不純異性交遊が行われてるぞぉぉぉぉぉぉ!!」

「誤解されるようなことを叫ばないでぇぇぇぇ!!」

 それまでの空気はどこへやら。
 私はキラ先輩を突き飛ばすようにして、レガール兄に向かって叫んだ。



  黒マント製作機から
   キラの包帯を見た時点で、自分をストライクから出してくれたのが誰かわかったヒロイン。
   少し感謝の意味も込めて、手を握っていた彼を突き飛ばさなかったのですが。
   その後の展開は黒キラ様光臨。ほしみは書かされているだけでした。
   でもヒロインとキラの絡みが書けたのでヨシ。最後、兄上に邪魔されたけど(笑)

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