「……私が少尉……ですか?」

「ええ、そうよ。ハルバートン提督の計らいでね」

 熱も下がり体力も少し回復して、私は制服をまとうとブリッジに顔を出した。
 以前なら、いくら兄たちがいるとはいえ自分から人前に顔を出すことはしなかった。
 自分でも驚きの行動。
 訪れたそこで聞かされた、士官への昇任。
 今は亡き人の名を聞くと、ツンと胸が痛む。
 守れなかったたくさんの命、目の前で散っていった思いや願い。
 私は何も言えなくなってしまった。

「ちなみに、そこの坊主たちは二等兵。お前とキラは少尉だな」

「裏切り者のコーディネイター……だからですか?」

「ばぁか違うよ、何を警戒してんだ?
 提督は、お前さん方のMSパイロットとしての腕を評価してくださったんだぞ」

 髪の毛を掻き回され、私は顔をしかめて、ムウ兄の手を払った。

「そういえば……、こちらに来る前にストライクの様子を見にいったんですけど。
 隅に置かれていたの、あれってMS……ですよね?」

「お前が気にする必要はない」

 レガール兄の冷たい眼差し。

「ご、ごめんなさい……」

 何か気に触ることを言ったのだと思い、私は小さな声で謝った。

「ここにいる全員にも言っておくわ」

 『整備班にはもう伝えたのだけれど』と艦長さんは一息ついて。

「これより以降、MSデッキ右隅の貨物には手を触れないこと。
 許可なく触れた場合、第8艦隊所属AA艦長・マリュー=ラミアスが、艦長権限によりこれを厳しく処罰します」

「……厳しい処罰、とは?」

 いつもとは違う固めの口調に戸惑ったのは一緒。
 その中で副艦長さんが口を開く。

「よくて階級剥奪の上独房にて謹慎、最悪の場合はその場で銃殺刑」

 自然に喉が上下に動く。
 『銃殺』という重い響きは、場にいた全員を硬直させるには十分すぎる言葉だった。

「特にキラ=ヤマト、の両名は近寄らないように。
 ……これは亡きデュエイン=ハルバートン提督からの命令だからな」

「「はい」」

 そう答えるしかなかった。
 冷たい迫力のレガール兄が、始めて怖いと思った。




 一言断って、私一人、外へ出てみた。
 砂漠地帯へ来ることは始めてだけれど、地球は昔住んでいたから。
 細かい砂が舞い上がる生暖かい風。
 でも作り物じゃない、本当の風。
 久しく感じていなかったものが、とても心地好かった。
 目を閉じて、肌だけで回りを感じる。
 まとわりつく熱気が、改めて自分が生きてここにいるということを教えてくれた。




『総員第一戦闘配備、総員第一戦闘配備!』

 突如鳴ったけたたましいサイレンが、その場の雰囲気を変えた。
 ヘリオポリスの友人たちと、ブリッジに駆け込む。

「ヤマト少尉はMSデッキへ。今回のストライクはあなたに任せるわ」

「え、でも……」

少尉はまだダメージが残っているだろう。今回はそう言って代われ。
 その代わり、こちらに入るようにとな」

「これは艦長命令だからって伝えておくんだぞ」

 バジルール中尉とレガール中佐の言葉。
 僕は頷いて、やってきたばかりの部屋を後にした。



  黒マント製作機から
  砂漠編、始動です。
  長くなりそうな予感。


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