「うわっ、かっこわる……」

 着地と同時に砂に足を取られて横倒し。
 迫り来る敵をよけるのが精一杯。
 私は手元のモニターを見ながら、小さく呟いた。
 初めての場所なんだから仕方ないと言えば、仕方ないけど。

「敵機5、ザフト軍モビルスーツTMF/A−802・バクゥです!」

 ライブラリ照会を終えたサイ先輩が叫ぶように言う。
 砂漠用に作られた機体は、4本の足につけられたキャタピラで自在に動き回る。

「おい、ヤマト少尉、聞こえるか?」

『はい』

「次の砲撃をよけて、スラスターで飛び上がれ。攻撃を避けてひたすらジャンプ。
 その滞空中に運動パラメータ、砂の流動率を加えて接地圧を変更しろ。
 摩擦係数の入力数値はマイナス15または20で対応できるはずだ」

『わかりました!』

 ミリィの前からマイクを奪ったレガール兄。
 その指示に従ったのか、見違えるように動きがよくなったストライクに、ブリッジにいた全員から感嘆の息が漏れた。

「お前もすぐに気付いたはずだろう。
 笑ってないで、指示を出してやりゃあいいのに」

 すれ違い様、小声で咎められ、こつんと叩かれた。





 高速で動くバクゥに照準を合わせられなくて、キラは焦る。
 マーカーを合わせてトリガーを引く。たったそれだけのことができない。
 動きが変わったとはいえ、まだまだ砂漠には不慣れな機体。
 最初のように横転することはなくなったものの、それでも数度バランスを崩した。

「っ……」

 ストライクのモニター越しに映ったのは、ミサイル。
 その先には白亜の戦艦。

「AAはやらせない」

 キラは、自分の頭の中で、何かがはじけとんだように感じた。
 クリアになる視界、見える砲弾の軌跡、着弾位置。
 ためらわずアグニを構え、照準を合わせて撃つ。
 爆散したのを視界の隅で確認しながら、キラはストライクを操り、
 1機、また1機と、バクゥを砂に沈めていく。

「しまった、アグニを使いすぎた!」

 気がつけば、エネルギーゲージはレッドゾーンギリギリ。
 しかし、まだ倒さなくてはならない相手はいる。

    バン

 何かがぶつかった音。

『そこのMSパイロット、聞こえるか?
 死にたくなかったらこっちの指示に従え!』

「なんだ……?」

 ストライクの足元にいるバギーは、AAからは見えない位置。
 聞こえる声は、まだ少女の高いもの。

『そのポイントに、バクゥを誘い込め。
 引き付けたら一気に飛び上がれ、タイミングを間違えるなよ』

「ええぃ、信用するしかない!」

 ストライクは送られてきた地図の、赤い光点が示すポイントまで動いた。
 ポイントをわずかに過ぎると振り向いて、誘うように敵機のほうに正面を向けた。
 エネルギーを使い果たし、フェイズシフトは落ちている。
 失敗は出来ない、キラはレバーを握る手に力を込めた。

「「今だ!!」」

 キラの声と、少女の声が重なり。
 ストライクは飛び上がり、白い指は赤いボタンを押す。


 大きく陥没した砂地は、バクゥ3機を飲みこんで高々と炎を上げる。
 その光景、飛んでくる破片を見ていても、キラはその場から動かなかった。




「撤収、だな。残存部隊をまとめろ」

 双眼鏡を降ろした助手席の男の言葉に、ハンドルを握っていた男は彼を見上げた。

「構わないので?」

「今回の目的は十二分に達したさ。これ以上の痛手を被ることはない。
 それに……」

「それに?」

「焦ることはないよ、ダコスタ君。大天使殿はまだ飛び立ちはしない。
 ここから飛ばせもしないからね」

 ニッと笑った彼は、どさりとシートに腰を落とす。
 『わかりました』と頷いたダコスタは、アクセルを踏みこんだ。




 その頃。
 燃え上がるバクゥを見つめていたAAブリッジに、通信が届く。

「フラガ少佐より入電。
 『敵母艦を見つけるも攻撃を断念。敵母艦はレセップス!』」

 ミリアリアが読み上げた文面に、正規クルーの表情は曇った。

「相手はアンドリュー・バルトフェルド。砂漠の虎ですか……」



黒マント製作機から
  キラの初種割れ。
  地球降下時はヒロインが乗っていたので今回が初めてとなります。
  最近シリアス路線はずれてきたので、そろそろ復帰したいかも。


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