「……えーっと?」

 コントロールルームの彼女と出会った僕は、自分でも情けないほど、戸惑った声を上げていた。
 無理もない。
 床に正座して出迎えてくれた相手が、目の前に両手鍋を突き出してきたら。

「一体何のつもり?」

 何気なく問いかけたのに、彼女は激しく体を強張らせて、ますます小さくなった。
 顔をうつむかせて、震え続ける少女の姿は、まるで心底人を怖がっている小動物のように見えた。
 とりあえず、僕は彼女の側によって、腰を落とした。

「もう大丈夫だよ、ここは地球軍の船の中だから。
 この救命ポッドは、君たちは無事に保護された。だから、僕と一緒に行こう?」

 しかし、首を横に振るだけで、彼女は動こうとはしない。
 それよりも、僕に鍋を押しつけてくる。

「……仕方ないなぁ」

「きゃあっ!!」

 僕は彼女の体を抱き寄せた。
 初めて聞いた声が予想通りで、僕は思わず『やった!』と呟いた。



「いや、放してっ!」

 案の定と言うべきか。
 ここから出てこなかったら、迎えに来た人がいた。
 MSの人が報告してたんだろう、ここにも人がいるって。
 でも、いきなり抱きしめられるとは思わなかった。
 私は怖くて怖くて、その腕から逃れようともがいた。



「大丈夫、大丈夫だって!
 だからそんなに脅えなくてもいいから」

 僕は暴れる彼女の背中を、優しく何度も叩いた。
 昔、恐い夢を見て泣いていた僕に、母さんがしてくれたように。

「嘘、大丈夫なわけない。
 安心させておいて、どうせ食べる気でしょ!」

 食べる……?
 なるほど。だから、彼女は鍋を持っていたのか。

「食べないよ、まだ今は

「……今は?」

 ピタッと暴れるのをやめた彼女がうつむいたままで言う。
 うわっ、思わず口が滑べったっ!



「ぜんぜん大丈夫じゃねぇっ!!」

 俺は緩んだ奴の腕を掴み、一本背負いの要領で投げ飛ばした。
 突然のことに驚いたのか、受け身も取れずに無様に床に伸びた。

「こちとら、お前なんかにおいしく食われる気なんかないんだよ。
 食われるくらいなら、ここで飢死したほうがマシだ」

 改めて見てみると、俺とあまり変わらない年に見える。
 ってゆーか、コイツ、軍人じゃないな。普通に私服着てるし。
 声の感じからして男なんだろうけど、カツラかぶって薄く化粧してだまってりゃ、女で通るかもな。
 ……しかも、俺より美人。





 起き上がった僕は驚きすぎて、次の言葉が出てこなかった。
 さっきまでビクビクしてたとは思えない、彼女の変貌振り。
 何が起きたんだ、一体?





「キラ、大丈夫?」

 いつの間にかやって来ていたらしい第3者。
 それに気が付かなかったのは、僕だけではなかったらしい。彼女もびっくりしたように、眼をみ開いている。

「あなたもこのポッドに乗っていたのね、よかった」

 そう言って、ミリアリアは笑う。
 声を掛けられた彼女の方は。
 顔をクシャクシャにして、ミリィに飛び付いて泣き始めた。

「さ、ここから出よ?」

 促されるままにミリアリアについて行く彼女。

「キラも早く来てね。これからのことを決めるって言ってたから」

「う、うん……」



黒マント製作機から
 うわー、偽キラっぽい。……見逃せ、ドリー夢だ。
 いきなり抱きしめられるヒロイン。キラってば警戒されるよ、この後。
 ぶん投げられたことで戸惑うのは、彼も一緒なんですけどね。
 実は、ヒロインの家とミリアリアの家はお隣りさんです。
 で、1級上のミリィに懐いてる彼女なのでした。
 今回、名前変換なし。反省してます。

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