明けの砂漠の前線基地横に着床したAA。
 艦長さんたちは再びの話し合いに行ってしまったけれど、他のクルーは小休憩となった。
 私はコーヒーの入ったマグカップを片手に、カガリの元を訪れる。

「それじゃあ、お前もストライクに乗ってるのか?」

「そう。一応正式なパイロット」

「でも何で……」

  私はAAに乗ったわけ、ストライクに乗っている理由を話した。

「で。何でこんなところにカガリがいるわけ? どうやらキサカさんも一緒みたいだけど、君は……」

「その話はここではするな。私にもいろいろ事情がある!」

「それは君がヘリオポリスにいたのと関係あり?」

 第3者の声に驚いて、私とカガリは同時に振り返った。
 そこにはニコニコ笑いながら立っているキラ先輩の姿。

「……立ち聞きしないで下さい」

「別にするつもりはなかったよ。ただ僕はそこの彼女とお話したくて捜してただけだから」

 キラ先輩の視線は、隣にいたカガリの方を向く。
 カガリのほうは……ちょっとうつむき加減でぼそり。

「さっきは殴って悪かったな」

「大丈夫、そんなに痛くなかったから気にしないで」

「そうか」

 カガリは安堵したように笑った。
 やっぱり、暴力は悪かったと思ってたんだ。謝り方が彼女らしい。

「それであの日……」



「キ〜ラ〜ァ」

 やたら甘ったるい声で、キラ先輩の腕にしがみついてきた赤い髪の少女。
 それだけで話の腰を折られて、俺たちは眉をしかめた。

「ちょ、ちょっとフレイ。僕は今、カガリと……」

「あら、あんたたちそこにいたの? あんまり地味だから気がつかなかったわぁ」

 あからさまな嫌味。

「年中男漁りして、ゴテゴテ飾り付けてる奴とは育ちが違うんでね。
 カガリ。ここは騒がしいから、俺たちはあっちで話の続きをしようか」

「そうだな、本当に久しぶりだから、積もる話は山とあるし」

「カガリ、?」

 立ち去りかけた俺たちは、呼ばれて同時に振り返り。

「「女ったらし」」

 と、言葉を投げつけてやった。
 絶句したキラ先輩を無視して、俺たちは他の岩場へと移動した。







「あんな子たちのことを気にする必要ないじゃないの」

 立ち去りぎわの言葉に茫然としていた僕に、耳に届く高めの猫撫で声。
 左腕に押しつけられる柔らかいもの。

「それよりもAAにもどりましょう? 昼間は暑くても、夜はすっごく寒いって聞いたし」

 なおも擦り寄ってくる体。
 ……気持ち悪い。

「やめろよ……」

「よく聞こえなかったわ」

「やめてくれって言ったんだよ!」

 僕は右手でフレイの肩を押し、左腕を彼女から振り解いた。
 それに驚いた顔をするフレイ、すぐさまもう1度手を伸ばしてきた。
 でも僕はそれから逃げる。

「何を恥ずかしがっているの?
 約束したじゃない、私があなたの思いを守ってあげるって」

「君こそ何を考えてるの?
 僕を利用しようとしているのはわかってるんだよ。
 好きでも何でもないのに、下心見え見えで近付かないでよね。
 コーディネイターの僕のことなんていつだって汚らわしいと思ってるくせに」

 それだけを言い放って、僕はたちの方へときびすを返した。

「……どうして……どうしてそんなことッ……」

 投げつけられた言葉に振り返った僕の視線の先に、拳を握りしめて俯いているフレイがいた。

「私……本当にキラのこと思って、本当に守ってあげたいって……」

 彼女の足元に落ちては染み込んでいく水滴。
 徐々に数の増えていくそれを、僕は何も言わずに見ていた。

「そりゃ……今だってコーディネイターは怖いけど……キラは別なのッ……。
 最初はひどい言葉もいっぱいぶつけたけど……それでも、それでもっ……」

 顔をあげたフレイ。流れる涙を拭わないまま。

「それでも私はキラが好きになっちゃったのッ!!」

 叫ぶようにぶつけられた言葉。
 以前なら、平和なヘリオポリスの時のままなら嬉しすぎて抱きしめていただろう。
 でも、今は色んなことを知ってしまった。忘れるには無駄なことばかりだから。

「僕は偽りの気持ちを欲しいとは思わない。今更そんなことを言われても、迷惑なだけだから」

 傷ついたフレイの顔にも、僕は何も感じない。
 父親に庇護されかわいがられ、欲しいものを何でも手に入れてきたであろう彼女は、初めて自分の思い通りにならないことがあるのを信じられないようで。
 しばし惚けていた後、すごい顔で僕を睨んできた。

「あんたなんか、あんたなんかザフトに殺されちゃえばいいのよ!」

 捨て台詞を残して走り去っていく姿を見送っても。
 不思議なくらい、僕に何の感情も沸き起こらなかった。



黒マント製作機から
  カガリは切れたヒロインを知る、数少ない人物です。
  で、横恋慕フレイはここで退場してもらいました。
  嘘泣きして迫真の演技してみせたのに、キラにはさらりと流されてます。
  彼もね、自分の気持ちを偽るのをやめたんでヒロインにだけは嫌われたくなくて。
  他はどうでもいいんです。フレイに抱いていた淡い憧れは切って捨てましたから。
  フレイのこの後。話には絡んできますが、キラ&ヒロインの邪魔はしなくなります。


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