キラ先輩の声に驚いてそちらに視線をやったときは、バクゥが飛び上がった後だった。 動けないと思っていた1機が戦列に加わっただけで統率が取られ、見事なフォーメーションで当たってきたのには驚いた。 その驚きが一瞬の気の緩みに繋がった。頭部に受けたミサイル。 カメラアイは壊れなかったが爆炎で視界を塞がれバランスを崩す。 そこへ胸部に入った蹴り。慌ててバーニアをふかして倒れるのだけは避けた。 たったそれだけの短い攻防、流れ作業のような攻撃にさらされて、私は怖くなった。 今まで戦ってきた相手とは違い、統率の取れた無駄のない戦い方。 アスランさんたちとの戦いとはまた違った恐怖が、少しずつ沸き上がってくる。 「でもやらなきゃ……まだ大丈夫っ!」 ぶるりと頭を振ってそれまでの考えを追い払う。 皆を守りたい、死なせたくないという思いだけにする。目の前の敵を倒すことしか考えない。 その時、再び襲ったあの感覚。 飛んでくるミサイルの位置と着弾点、踏みしめている砂が教えてくれるそれぞれの動き、ストライクをどう動かせば結果がどうなるのかなど、状況判断が一瞬でできてしまう。 向かってきたミサイルを直前まで引き付けて避け、誘爆させる。 フットペダルを踏み込んでターンと同時に、敵機着地予想地点にシールドを投げつける。 フォーメーションが崩れた隙をついて飛び出すと、再び飛んでくるミサイル。 私にはそれがどの軌跡を通るかわかる。 難なく避けると、着弾時の隙をつこうと飛びかかってきたバクゥの片翼を切り落とす。 そして別のバクゥから放たれたミサイルをバーニアをふかしてよける。 そこにミサイルが突っ込み爆炎をあげ、それをさけた敵機にストライクを並ばせた。 私はためらわずにトリガーを引く。そして、もう1機突っ込んできたバクゥを切り払う。 ようやく戦闘は終わった。 去っていくバギーと傷付いたバグゥを見送りながら、私は大きく息をついて、シートに背を預けた。 レジスタンスの人たちがやって来たのに気が付いて、私はラダーを使って地表に降りた。 「今回乗ってたのはだったんだ」 キラ先輩じゃなくて安心したのか、そう呟いたカガリ。 私は無言のままで彼女に近付いて、その横っ面を叩いた。 「何するんだ!」 赤くなった部分を押さえて、カガリが叫ぶ。 「勇気と無謀は違うって、以前教えてくれたのはカガリだよ。何でこんなことしたの!!」 ともすれば泣き出しそうなのを必死でこらえて、私も叫び返した。 「今回のは無謀なんかじゃない。見ろ、皆勇気を出して虎に立ち向かっていったんだ」 「何が勇気、どこが勇気なの? 今回のカガリたちの行動は無謀そのものだよ。せっかく町の人たちは全員助かったのに。 村を焼かれた憤りを無理やりに押さえ込んで救助に専念すればよかったのに」 「やられただけでやり返さないのは臆病者のすることだ。私たちは勇気を持って立ち向かっていったんだ!」 「MAに自走砲で立ち向かって? 罠もナシに突っ込んで行って? 気持ちだけあっても力がないんじゃ、それは無謀でしかないじゃない!」 「に何がわかる、お前だって虎と同じ臆病者だろ! なんてったって同じコーディネイターなんだから!」 叩きつけられたその言葉を聞いて、私は何も言えなくなってしまった。 極限まで見開いた瞳を閉じることが出来ない。 「……それじゃ、AAに戻る」 それだけを口にした。 あまりのショックに体が震えてラダーにしがみつき、コックピットに転がり込むのがやっとだった。 何とかAAのハッチにたどり着いたまでは覚えている。 私はストライクのハッチを閉めOSを終了させると、そのまま膝を抱え込んで涙を流した。 ![]() 黒マント製作機から タッシル編終わり。次の話はパナディーヤ編になります。 ヒロイン種割れ。しかも2回。 カガリがヒロインにぶつけた言葉、彼女の本心じゃないですよ。その場の勢いという奴です。 To NEXT |