……気まずいなぁ。

 日用品の買い出しをすることになって、僕とがカガリって子の護衛に付くことになった。
 いつも彼女に従っているキサカさんは、今回は別行動。副艦長たちと一緒に行くことになっている。
 町までは分乗して向かうことになったんだけど、さっさとトノムラ軍曹が運転するほうに乗った
 キサカさんの方に乗りかけていた僕は、引きずり下ろされて彼女の横へ押し込まれた。
 そして押し込んだ相手・カガリは、その横に座る。
 は不機嫌そうに押し込んだ相手を睨んだが、すぐに目を逸らした。
 カガリはその視線に気がついても何も言わない。
 とカガリの真ん中に座らされた僕は、道中、双方から流れてくる不機嫌オーラに辟易していた。
 ハンドルを握るトノムラ軍曹も助手席のバジルール副艦長も同じらしい。
 地雷を踏みつけまいと必要最低限の言葉しか話さない。
 再会したときはあんなに喜んでいた彼女たちなのに、一体どうしたというのだろうか?






 私は頬杖をついたまま、動き続ける風景を眺めていた。
 隣には、居心地悪そうに体を縮めているキラ先輩。そしてその向こうにカガリ。
 彼女のことを思う度、朝焼けの砂漠でぶつけられた一言が胸をえぐる。
 以前アルテミスで言われた言葉は、それほど気にならなかったのに。
 自分が憶病者だということは嫌というほどにわかっている。
 でも、叫ばれた言葉は自分たちが戦っている相手と同等で、決して相容れないものだと言われたように思えて。
 カガリの本心でないと分かってはいても悲しかった。
 勢いで出たものだとわかっているから、余計に辛かった。
 その場の勢いというものは、時には本音をさらけ出すものだから……。
 自分の中で少し落ち着けるまで、彼女の前で作り笑いができるようになるまでは会いたくなかった。
 だからこの話が出たとき、最初、私は断わった。
 『私までAAを離れてしまえば、攻撃があったときにどうするんですか』と、もっともらしい疑問を添えて。
 『心配ないさ、スカイグラスパーだってあるんだから』
 ムウ兄はそう言って笑い、とどめとばかりに艦長さんから『これは命令』の一言。
 今頃AAで待機中のミリィたちが心底うらやましくて、またため息が出た。






 あいつがため息ばかりなのは自分のせいだって、そんなことはわかってる。
 実際、ストライクが帰艦したあと、皆が帰って二人っきりになったとき、キサカにむちゃくちゃ怒られたしな。
 にぶつけた言葉が単なる八つ当たりだって事くらいは、冷静になった今なら認められる。
 あの時、私のことを本当に心配してくれてたあいつが、あれだけ怒った理由も。
 それなのに激情に任せて、ひどい言葉を投げつけてしまった。
 傷付けて泣き出しそうな、それを必死で堪えている顔をさせてしまった。
 おそらく、あいつは私と顔を合わせたくないに違いない。
 幼い頃から知っているから、の考えだって少しはわかる。
 だからキサカの運転するバギーには私が乗ると思って、こちらを選んだんだろうし。
 でも私も、今はキサカの横にはいたくなかったんだ。
 そうしたら必然的にの横に座ることになる。
 今はさすがにそれは気まずいから、キラとかいう奴を間に挟むことで隣になることだけは避けた。
 あ、また聞こえた。
 ちゃんと謝るから、この買い物中に仲直り出来ればいいんだがな……。







「それじゃあ4時間後だな」

 カガリが飛び降り、僕とがそれに続いた。
 カガリはいつもの格好だけど、僕はAAに乗ったときに履いていたズボンに薄手のシャツをあわせ、もやはりAAに乗ったときと同じ服装。
 出かける前、『最初見たときは長袖だったのに』と不思議そうに聞くと、は『袖を折って止められるタイプだから』と説明してくれた。
 あの食堂での皿洗い以来、は時々だけど、僕の話しかけに答えてくれるようになったのがうれしい。

「3人とも気をつけろよ」

 トノムラ軍曹の言葉に、僕たちは頷いた。でもやっぱり、とカガリは視線を合わせようとしない。
 その様子に、大人3人からはため息が漏れた。
 ……これから一緒に行動する僕も、さすがにこの雰囲気は気が重い。

「私たちのことより、そっちのほうも気をつけろよ。気が抜けない相手なんだろ?」

「まぁな。しかし、今はあいつに頼るしか方法は残されていない」

「ともかく、ヤマト少……ねんもも、彼女のことを頼んだぞ」

 せっかく現地の子供らしく見せかけてきたというのにそれを壊しかけた副艦長は、慌てて僕の名前を言い直した。
 少し赤くなっている。
 気がつけば、トノムラ軍曹がうつむいている。揺れている肩は必死で笑いを噛み堪えているのがわかった。






 走り去っていくバギーを見送った後、3人はマーケットの中心部に向かって歩き始めた。
 風に揺れる洗濯物、笑いながらすれ違い駆けていく幼い子供たち。
 どこにでも見られるような当たり前の風景に、はここがどこだか問いたくなる。
 同じような疑問を抱いていたのか、キラがそれをカガリに聞くと、彼女は『付いてこい』と促してきた。
 そして角をまがった先には先ほどと同じ日常の雑踏。
 それに紛れることない存在感を醸し出していたのが、地面を大きくえぐった爆撃の趾。

「平和そうに見えたってそれは見せかけだ。ここはザフトの……砂漠の虎のものなんだ」

 カガリの視線の先には、壊れた建物の間から見下ろしている戦艦。
 あれが砂漠の虎と呼ばれるアンドリュー=バルトフェルドの旗艦であることは、キラももすぐにわかる。

「逆らえばいつだって滅ぼせるって威嚇してるんだ……」

 小さなの呟きが耳に届いて、キラも『そうだね』と頷いた。



黒マント製作機から
  前回のことで顔を合わせにくいヒロインとカガリ。その間に挟まれるキラ。対応に困るナタルとトノムラ。
  書いててすごく楽しかった〜。
  この後の展開はAA・年長側の話を1回分挟んで、虎との邂逅に進もうと思っています。


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