「えっ……と、これで買い忘れはないと思うけど?」 「フレイって奴の注文品以外はな。エリザリオの化粧水だの乳液だの、こんなところにあるもんか」 リストを見ながら言うに、ぶ然とした顔のカガリ。 喧嘩して気まずい関係でも割り切って会話を成立させる辺り、2人ともすごい。 にしても、女の子の買い物には付き合うべきではないと思う。 今回は護衛なのだから仕方ないけれど、ここまで引きずり回されては少しへたり気味。 足下には大量の荷物が、それも袋がはちきれんばかりに詰めこまれているのも疲れさせている原因の1つで。 これから合流するまでこの荷物を持ち運ぶのは、僕の役目なんだろうな、やっぱり。 「今、自分は護衛じゃなくて荷物持ちに借り出されたんだって思っただろ?」 「へ?」 声に気がついて顔をあげると、呆れた顔でこちらを見ているカガリと。 「荷物見て大きなため息つかれたんじゃ、彼女が問いかけるのも無理もないと思います」 「そ、そう……」 私はキラ先輩の様子に苦笑しながら、教えてあげた。 自分でもわからない。あれだけ否定していた相手に普通に話しかけられる。 いつもなら、自分が嫌っている相手には必要最低限のことしか話しかけなかったのに。 最初『仲良くなる気はない』なんて言ってあれだけ避けていたのに、今は普通に会話できることが不思議。 先輩の瞳と同じで、私の心も紫になった……と考えたくない。 紫は赤と青どっちつかずの色。でもそれがちゃんと混ざったから、きれいな色が出たって聞いたことがある。 今の私の心は気を許す許さないのどっちつかずだろうけど、いつかちゃんと混ざるのかな……。 「おまたせ」 声と共に、テーブルの上に置かれたお皿。 「わあ、おいしそう」 「何、これ?」 は手を叩き、キラは不思議そうに問うた。 「ドネル・ケバブさ。知らないのか?」 「本では見たことあるけど、実際に食べるのは初めて」 「そっか。んじゃな、このチリソースをかけて……」 「あいや待った!」 カガリがのケバブにソースをかけようとしたところへ、3人のものではない声の乱入。 カンカン帽に大きなサングラス、派手なアロハシャツの男は机の上のソースを握りしめて突き出す。 「ケバブにはヨーグルトソース、これが常識というものだろう? いや、ヨーグルトソースをかけないということは、この料理に対しての冒涜に等しい!」 「何で見知らぬお前にそこまで言われなきゃならない? ケバブにはチリソースだろうが」 言うが早いか、カガリは自分のケバブにたっぷりとチリソースをかけ、思いっ切りほおばる。 「あー、うっま〜い!」 何とも幸せそうな顔をして見せる彼女に『それは大人気ないよ』と突っ込みたくなるキラと。 しかし思いっ切りショックを受けた様子を隠さないあたり、アロハシャツの男も大人気ない。 「2人とも早く食べろよ。さっきから動き回って腹減ってるだろ。 ほら、ちゃんとかけてやるから」 「ああ、彼らまで邪道に落とすつもりか!」 の皿の上でしばし応酬を広げていた2人。 「……私とキラ先輩が別々のソースをかければいいんじゃないんですか?」 「「それじゃだめだ!!」」 「ケバブには、断固としてチリソースだぞ!」 「いいや、ヨーグルトソースだ!」 自分の意見を譲ろうとはしないカガリとアロハシャツの男に、の意見は速効で却下される。 ドバァッ 「あ……」 赤と白のソースが大量にかかってしまったそれを、テーブルについていた一同は茫然とした顔で見つめた。 「すまん……」 「悪かったね……」 さすがにこれはまずかったと思ったのか、争っていた2人は素直に謝った。 「、僕のと取り替えようか?」 「大丈夫だと思います。どちらも食べるものですしね。 2人が進めるだけあってどちらのソースでもおいしそうですし、ミックスもいいと思いますよ」 皿の中身と彼女の顔を見比べながら聞いてきたキラに、は肩をすくめながら答えた。 そしてぱくりと頬ばるが……やっぱりソースの味だけになってしまっている。 辛いのか甘酸っぱいのか、よくわからないが、何度か咀嚼したあと飲み込む。 キラは少し迷った末、カガリの進めたチリソースをかけて、食べ始める。 「本当に悪いことをしたねぇ」 アロハシャツの男はそう言いながら、椅子を引いて座る。 「お前、何を自然に相席してるんだ?」 「知り合ったのも縁だからね、別に気にしないでくれたまえよ。 それよりもすごい買い物の量だねぇ、パーティでもするの?」 「関係ないだろ!」 カガリが噛みつかんばかりに言い返したのと。 ソースだらけのケバブに、が再びかぶりついたのと。 ほぼ同時だった。 ![]() 黒マント製作機から 前回分『砂の風〜』に続けるにはあまりにも長くなりそうだったので、タイトル変えてみました。 でもまた長くなりそうです。完全に抜けるまでに何回分消費するのやら……。 To NEXT |