大きな破砕音が、その場の賑やかさを打ち消した。
 男がテーブルを蹴りあげ、キラは2人の手を引っ張ってそれの影に隠れさせる。

「な、なんなんだ?」

 テーブルの上に載っていたものが、カガリを頭から襲ったが、彼女の問いに答えてくれるものはいない。
 先ほどまでのんびりした空気が流れていた野外カフェは、瞬く間に銃撃戦場と化した。

「3人とも、無事か?」

 足首のホルスターに隠していた銃で応戦しながら、アロハシャツの男が叫ぶ。

「何とか!」

 回りの音にかき消されてしまうので、自然にキラも大声になる。
 しかし、それすらも邪魔にならないかのように高く上がった声。


「死ね、コーディネイター! 青き清浄なる世界のために!」


 叫び声が届いた途端、は大きく震えた。
 その震えは、彼女の隣にいたキラにもはっきり伝わる。
 の方に向いたキラは、彼女の顔から色が失せていることに驚いた。

「大丈夫だよ、僕らのところにまであいつらは来ない」

 彼女の肩を、キラは抱き寄せる。
 普段なら突き飛ばして逃げるだろうに、は組んだ指先を固く握りしめて震え続けていた。

「なんでこんなとこに『ブルーコスモス』が出てくんだよ!」

 いまいましげに舌打ちしながら、カガリは拳を握りしめた。





 思い出したくなかったのに、忘れかけていたのに。
 あいつらが今まで私にしてきたことから、それらの恐怖を忘れかけていたのに。
 人を人と思わない仕打ちの記憶から、ようやく逃げられると思っていたのに。
 プラントで、ヘリオポリスで、AAで、普通に接してもらえてたから、消えかけていたのに。
 また、よみがえってくるの?
 また、逃げなきゃいけないの?
 どうしてコーディネイターは死ななきゃいけないの?
 私をコーディネイターにしたのは、あいつらなのに。
 遺伝子を弄ることを始めたのはあいつらなのに。
 いっそのこと、あいつらが望むように死んでしまおうか。
 あいつらの向けた銃口の前に飛び出そうか。

 怖くて涙が出そうになる。
 でもこんなところで泣きたくなくて、私は指に力を入れた。
 そんなとき、視界の隅でキラリと光ったものに気がつく。
 その途端、私は動いてその人を突き飛ばしていた。
 左の二の腕を貫いた熱い塊に、私は倒れ込んだ姿勢のままで意識を飛ばした。


!」

……?」