「殲滅しろ!!」

 仲間を守るためとはいえ、少女が撃たれてしまったこと。
 襲撃の巻き添えを食わせてしまったことへの自分の不甲斐なさ、民間人を巻き込むことをためらわない彼らの行動。
 それらが、怒りを掻き立てる。

 銃声に消されることなく強く上がった声。
 防戦に回っていたとおぼしき男たちの狙う銃口は、次々と襲撃者たちの急所を貫いていく。
 あまりにも無駄のない攻撃に、キラもカガリも言葉を失って、ただ茫然と見ていた。

「危ない、後ろ!」

 叫んだ声に即座に反応した男は、振り向きざま引き金を引く。半瞬後、崩れ落ちる相手。



 アロハシャツの男が声を上げて5分足らずで戦闘は終了した。
 動いているのは彼と彼らの一派らしき男たち、そして民間人。襲撃者は一人残らず倒され、息絶えていた。

「……すまない、僕のせいで彼女をこんな目に合わせてしまって……」

 振り向いた男がサングラスを外すと、カガリは息をのむ。

「アンドリュー……バルトフェルドッ……」

 名前を聞いて、このカフェに『ブルーコスモス』が現れた理由を、キラは一瞬にして悟り、驚きに目を見開く。
 そんな彼らに気付いているのかいないのか。
 バルトフェルドは、今だ気を失っているの体を抱き上げて立ち上がった。

「お、おい何をする気だっ!」

「何って、ホテルまで連れて帰るんだよ。ここじゃ十分な治療は望めないからね。
 君だってソースまみれじゃないか。そんな格好のままで女の子をかえすほど、僕だって礼儀知らずじゃないから」

 『ついてきなさい』と促してさっさと歩き始めたバルトフェルド。

「……今は彼の言う通りにしよう」

「お前っ……」

 後ろから軽く押し出されて、カガリは数歩よろける。
 キラはそんな彼女に近付いて小声で言う。

「バジルール中尉たちと合流するまで時間はあるのに、カガリのその格好はそのままにはできないよ。
 それにだってあの人の言うとおりだよ。ちゃんと手当てしておかないと」

「わかった」

 自分たちの代わりになった少女のことを言われると彼女も、キラの言葉にうなずくしかなかった。






「隊長!」

 4人を乗せたジープがホテルの玄関前に止まったとき、中から転がるように走り出てきた赤毛の男。

「『ブルーコスモス』に狙われたんですって!」

「そこまで知ってるなら、わざわざ僕に確かめにくる必要はないでしょ」

「確認じゃありませんよ。
 ひょこひょこ街に出るのはやめてくださいって、再度のお願いに来たんです!
 先日もいきなり未知数のMSに撃って出たりしたんですし……」

「ダコスタくん、客人の前だよ。それに、早くこの子も手当てしてやらなきゃいけないし」

「あ、す、すみません」

 ダコスタは慌てて後ろへ下がり、その前をバルトフェルドを先頭に、キラたちは通りすぎた。




「アンディ、おかえりなさい」

 戦場には似つかわしくない甘ったるい声に、私たちは顔を上げた。
 そこには黒髪でサイドにメッシュの入った、ぴったりとしたスーツを身にまとった女性がいた。
 同性である私の目から見ても、きれいな女性としか言い表せない。
 しっかし、ホテルに入ってからというもの、まっすぐに前を見上げることができない。
 ……何となく居心地が悪いんだよなぁ。ま、ザフトの基地だっていうせいもあるけどさ。

「話は聞いているわ。医者の手配はすべて終えていてよ。あちらに待機させてあるわ」

「ありがとう、アイシャ。それじゃ、僕がこのまま運んでいくよ。
 君はそちらの金髪のお嬢さんを頼むよ。彼のほうは……そうだな、ダコスタくんにお願いしよう。
 そこにいるんだろう?」

「隊長のおっしゃる通りですよ……」

「彼にもシャワーと着替え、よろしく。終わったらいつもの部屋へ案内してあげてくれたまえ」

 そう言い残して、を抱いたままの虎はさっさと歩き去ってしまった。




「さぁ、君はこっちです」

 ダコスタさんは僕の手をつかんで歩き出す。
 僕も引っ張られるままに歩き出した。
 別室に連れていかれたもカガリも、大丈夫なのかな……?

「ちょ、カガリはわかりますけど、どうして僕まで着替えなきゃ……」

「あなたの服もさっきの子の血で汚れてますからね。
 早く洗わなきゃシミになるって心配してるんですよ、あの人は」

「……はぁ」

「あなたの言いたいことはわかりますよ。軍人が考える事じゃないって言いたいんでしょ?」

「そういうわけじゃないですけど……」

「いいんですよ、あの人はああいう人ですから。
 隊長の性格は私たちでもいまだに完璧に理解したとはいえないんです」

 『ただ、間違った指示は出してこないですから』と笑ったダコスタさんは、何だか誇らしげに見えた。
 でもああいった人の下で働いていると、気苦労が絶えないんだろうなとも思い。
 僕はほんのちょっぴり、彼に同情したくなった。



黒マント製作機から
  前シーンの分岐でどちらを選んでも、キラとカガリは着替えさせられます。
  この後は短くAA側が入ってから、会談に移ります。
  しかし、ヒロインの台詞ないですねぇ。いまだに気絶しちゃったままですから。


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