「3人が戻らない?」

 通信を聞いて、マリューは艦長席から腰を浮かせた。
 戻ってきたブリッジクルーたちも不安を隠せないまま、言葉の続きを待った。

『時間になっても、約束していた場所に現れないんだ。
 おまけに……街では『ブルーコスモス』のテロもあったというし……』

 キサカの声が沈んで聞こえるのは、電波が届きにくいだけではない。

「一緒に行ったバジルール中尉たちは?」

『彼女等も手分けして捜してくれてはいるが……人手が足りない。おまけに、電波状態が悪くて連絡も取れない』

「わかりました。こちらからも応援を送ります」

『頼む』

 そう言い残した後、彼からの通信は切れる。



「大丈夫ですよね?『ブルーコスモス』のテロがあっても、達には関係ないですよね?」

 巻き込まれていないと信じたい。
 ミリアリアはすがるような目を、マリューに向けた。

「ええそうよ。2人とも現地の子供に見えるように変装していったのですもの。
 彼らとて、関係のない民間人は狙わないはずよ……」

 マリューの言葉は、ミリアリアやブリッジクルーたちに向けられたものというより、自分に言い聞かせているように見えた。







 案内された部屋で1人座っていると、暖炉の上の置物に気がついた。
 立ち上がって側に寄ってみる。
 それは小さい頃から、何度も本で見た化石。

「……エヴィデンス01だ……」

 目が逸らせなくて、僕はそれをじっと見ていた。



「ここにあるのは単なるレプリカだけどね、君は本物を見たことがあるかい?」

「うわぁっ!!」

 いきなりかけられた声に驚いて、大声を挙げる。
 声を掛けてきた方は口許を押さえつつ笑いを噛み堪えている。
 気恥しくて、僕は顔を赤らめてしまった。

「すまない、別に脅かすつもりはなかったんだよ」

「わかってます。僕もあなたが入ってきたことに、気がつかなかっただけですから。
 着替え、ありがとうございました」

「いやいや、巻き込んでしまったのはこちらなんだし、助けてもらったんだからお礼するのは当然。
 あのソースまみれになったお嬢ちゃんはアイシャにまかせてある。支度ができたら連れてきてくれるさ。
 もう1人のお嬢ちゃんについては、出血はひどかったが銃弾は貫通しているし、心配しなくていい。
 ただ、今は撃たれたショックが大きいのと、痛み止めのせいで眠っているがね」

「……そうですか」

 僕は胸をなで下ろした。顔を見なくちゃ完全には安心できないけど、今はそれでよかった。
 バルトフェルドさんは、純粋にお礼をしたいと思っているだけのようで。
 僕たちの正体もまだ知られていないみたいだから、彼女たちに危害は加えないと思っていたから。



「それにしても、熱心に見入っていたねぇ。興味ある物なのかな?」

「……不思議なんです。ジョージ=グレンは、どうしてこれを持ち帰ってきたのか。
 希望を信じる人と信じない人が、互いに争うようになるってことに、気がつかなかったんでしょうか……」

 僕の考えを完全に言葉にしたとは思えないけれど、本当にそう思う。
 遠い宇宙から生命体の化石を持って帰って来た時、ううん、それ以前に彼が遺伝子を弄られて生まれてきた事を告白した時。
 それまで考えつかなかったことに手が届き、新たな可能性を信じる者。
 与えられた命をそのままに、進化を望まない者。
 考えの異なる存在がどういう結果を生むか、それを予測しなかったのだろうか……。

「君は、これの存在を信じるかね?」

「……わかりません。認めないと頭ごなしに否定もできないです。
 けど、かといって、僕たち以外の生物の存在がいるかもしれないですから……。
 でも今はこの化石を、仲間の元に戻してやりたい。
 1人きりは嫌でしょうから、そこまでたどり着ける可能性を信じたいです」

「……ふむ……。そう考える君も、さびしいのかね?」

「えっ?」

「話している時の君の顔は、どこかさびしそうだったからねぇ。
 もしかすると、君も1人ぼっちなのかな?」

 そう問いかけられて、僕は一瞬答えられなかった。
 さびしい……のかな。自分でもよくわからない。
 僕がうつむいて黙ってしまうと、それを見越していたかのようなドアノックが響いた。



黒マント製作機から
  キラとバルトフェルドの会話、ほぼ捏造 (汗)
  ちょっとキラに言わせてみたかったので……>グレンが予測しなかったかどうか。
  ヒロイン、まだ寝てます。ごめんなさい。


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