!」

 ノックもせずに示されたドアを開いた私は、その場に固まった。
 そして。

「……キぃラぁ〜?」

 びくんと跳ね上がった体は、恐る恐る振り返った。

「お前、ケガ人相手に何やってんだ。さっさとどけ!」

 私はその体を押し退けて、ベットの上の彼女の手を握る。

「よしよし、こわかったよな。大丈夫か?」

「心配してくれてありがとう。カガリも平気だった?」

「私はソースとか被っただけだからな。ぜんぜん平気さ」

「カ、カガリ……おも……」

「女に向かって重いとは何事だ!」

「そうだよ、レディにそれは禁句だぞ」

 私の下敷きになっているキラの言葉に、苦笑しながら言う虎。
 敵ながら、ちゃんと心得てるじゃないか。

「ほらほら、そこでじゃれていないで。こちらのお嬢さんにも着替えてもらうんだから。
 男の人は出ていってくださいな」

 クスクス笑いながら入ってきたアイシャの言うとおり。
 私はキラを蹴飛ばすように追い出し、その後から『また後で』と虎も出ていった。



「金髪の彼女の意見も聞いてみたのだけれど、こんな感じの服でよかったかしら?」

 アイシャの広げたドレスに、は目を丸くしている。
 どっかのお姫様が着るようなドレスは、最初自分が着ていたワンピースとは全く違うんだから。
 ま、当然の反応だろうな。

「あ、あの、私こんなの……」

「似合わないなんてことないわ。あなたの濃茶の髪と瞳に合わせて選んだんだもの。
 丈は合うと思うわ。こっちの彼女と身長はあまり変わらないみたいだしね。
 それにね。着替えないとこの部屋からは出られないわよ?
 まさか、パジャマのままで街に戻るつもりじゃないでしょ」

 たたみかけるように言われて、反論する隙がなかった
 ついでに私は、止めの一言。

のワンピースな。アレ、もう着られないぞ」

「え、なんで……?」

「ごめんなさいね。悪いとは思ったのだけれど、治療の際に切らせてもらったのよ。
 撃たれたのは二の腕とはいえ、ちょうど袖を貫いていてね。
 おまけに流れ出たあなたの血が固まって、傷口やその周辺に貼り突いていたのよ。
 脱がせるには切るしか方法がなくって。だから、もう着られないの」

「そうなんですか……」

「だから、お前もあきらめてドレスを着ろ。私だって我慢してるんだしな。
 慣れない格好で動きにくいだろうが、とにかく、AAに戻るまでの辛抱だ」

「ちょちょっと、カガリ!」

「慌てるな。こいつと、さっきいた奴には、俺たちの正体はバレてる」

「……ということは、またカガリが口を滑らせたんだ……」

「またとは何だ、またとは!!」

 ジト目のに、私は怒鳴り返す。その様子を見て笑いながら、アイシャはを立ち上がらせた。
 そして傷にふれないように彼女のパジャマを脱がせて、手早くドレスを着せた。

「あ、少しぐらいならできますっ!」

「いいのいいの。腕を上げると、少し痛むでしょ?」

 ところどころに濃いオレンジが入っている、パステルオレンジのドレス。
 それは、思っていた以上にに似合った。
 意見を出して一緒に選んだ私ですら、見惚れてしまったぐらいだ。
 七分丈の長さの袖は、二の腕から肩の包帯部分もきちんと隠してくれている。
 踝まであるスカートはふんわりと膨らんでいて、いかにもお姫様。
 いつの間に用意したのか、ドレスと同色の靴はの足にぴったりで。
 知っている限りでは、あいつが選ぶ服の色とデザインじゃないのは確か。

「はい、これで服は完璧ね。次はヘアメイク」

「も、もういいです〜」

 恥ずかしくて仕方ないのか尻込みするを、アイシャは後ろから押してドレッサーの前に座らせた。

「せっかく女の子に生まれたんですもの。おしゃれを楽しまないなんて損よ」

「カガリぃ〜」

 なおも逃げようとして、私の顔を見て助けを求めてくる。

「きれいにしてもらって、あっちの部屋の奴らをおどかしてやれば?」

「うふふ、お許しが出たみたいね」

 にこにこ笑顔のアイシャは、本当に楽しそうにの髪に手をかける。
 私は、から送られてくる怨念に頬を引きつらせつつ、それを眺めていた。



黒マント製作機から
  ヒロインに逃げられなかった。それだけで終わるわけないです。
  やっぱりいいところを邪魔されてしまうキラなのでした。ほほほっ。
  で、いつの間にか元通りの仲良しさんになってるヒロインとカガリです。
  あ、ドレスの色合いはミリアリアの私服より少し薄めのものを想像してください。


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