「キラ、お前に手を貸してやれ」

「な、私は1人で歩けるよ!」

「唯でさえも履き慣れない靴で歩きにくいんだろ。おまけにヒールが砂にめり込んで動けないくせに」

 私が事実を述べてやると、は返す言葉を失ったらしく。差し出された手に右手を預ける。

「それじゃ、こっちのお姫様は俺がエスコートさせていただくとしようか」

「お前が相手じゃ、役不足だけどな」

「おーおー、久しく会わないうちに口ばっかり達者になりやがって」

「お互い様だろ」

 砂地のヒールが歩きにくいのは、私も同様で。憎まれ口を叩きつつも、レガールから差し出された手を素直に取った。




 広いとはいえないAAの通路。
 その両側から向けられる好奇心の満ちた視線から、靴を脱ぎ捨てて逃げ出したくてたまらない。
 ただでさえ人前に出ることも、人の注目を集めることも嫌いで、避けていたというのに……。
 なかなか目的地であるブリッジまでたどり着けない。戦艦特有の複雑な廊下を、私は恨めしく思った。

「大丈夫? 傷が痛むの?」

 ずーっとうつむいていた私のことを心配してくれたんだろう。
 立ち止まったキラ先輩が、覗き込んできた。

 だ、大丈夫です!」

 私は見つめられた1対のアメジストから、慌てて視線をそらす。
 それでも手が繋がっている分、早くなった鼓動を押さえることはできないし、頬が赤くなるのがわかった。
 病気じゃないみたいだけど、どうしてこんなことになるんだろう。
 あとでミリィにでも相談してみようと、私は思う。




 理由はどうであれ、僕は今の状態がうれしかった。
 彼女の手は軽く添えられているだけだけど、触れている部分が自分の体温より高い。
 医務室で手を握っていたときとは、また違う。それを肯定するように、僕の心臓は早鐘みたいに動き続けてる。
 女の子って不思議だ。いつもと違う格好を見せてくれた、それだけで雰囲気が変わる。
 前を向いて歩かなきゃいけないのに、僕は隣から視線を外すのが惜しい。

「大丈夫? 傷が痛むの?」

 艦内に入ってからうつむいたままのが心配になって、僕は彼女の顔を覗き込むようにして尋ねた。

「だ、大丈夫です!」

 びっくりしたように叫んだ彼女は、慌てるように僕から視線をそらした。だけど。
 横を向いたの頬が色付いて見えたのは、薄く化粧しているせいだけだったのかな?




「……なによ、あんなの」

 買い出しに行った彼らが戻って来ないことは、人づてに聞いていた。
 そして、先ほど戻ってきたことも。
 歩いていたら人だかりができていて。
 何の気なしに覗いてみたら、手を引かれたとカガリが通りすぎるところだった。

「折角のドレスも、ちっとも似合ってないじゃないッ……」

 悔しまぎれにそう呟いてみるフレイだが、他の面々はそうは思ってはいないらしい。
 歩いて行く彼女たちに、熱い視線が注がれている。
 唇を噛んだフレイは2人をにらみつけた後、その場から走り去った。



黒マント製作機から
  ドレスアップしたヒロインとカガリは、皆さんの注目の的です。見世物パンダ的存在です<苦笑
  ヒロインが純情だなぁと思いつつ書いてます。つられてキラまで純情っぽいぞっと。


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