「本当に心配したんだからねぇ〜〜〜!」

 ブリッジのドアが開いた瞬間、駆け寄ったミリアリア。
 に抱きつこうとしたが、その間に割って入ったキラに邪魔された。

「はいストップ。ごめん、今回は抱擁ナシね」

「あのねぇキラ。いくらがかわいいからって一人占めしないでよ」

「……いや、別にそういうわけじゃなくて……。そりゃ、できるものならしたいけどさ……」

「ハウ二等兵。今回はヤマト少尉に従ってあげなさい」

 うっかり漏らした本音に赤くなったキラ。その様子にくすくす笑いながらマリューは言った。
 理由がわからず、ミリアリアは軽く眉をしかめる。

「そいつ、怪我人なんだってさ。だからさっき、レガールが腕を掴んだだけでも怒ったんだぜ?」

「別に怒ったわけじゃないですよ。触らないでいてあげて欲しいってお願いしただけじゃないですか」

「怪我? 大丈夫なの?」

 顔面蒼白で問いかけるミリアリアに、は頷いた。

「あっちで受けた手当てがよかったですしね。
 お医者様にも傷口から雑菌も入っていないようだから感染症の心配もないって言われました」

「ただ、貫通した銃弾が動脈を傷付けてたのか、出血はひどかったけどな」

「銃弾が貫通しただとぉ!?」

 カガリの補足説明に思わず大声をあげたレガール。他の皆も目を大きく開いている。

「最初からきちんと報告してもらえるな?」

 キサカの一言は、そこにいた一同の気持ちを代表していた。






「よく無事で帰って来られたわね……」

 すべてを聞き終えて、マリューは大きく息をついた。

「私たちにもあいつが何を考えているのか、さっぱりわからなかった。
 自分がブレンドしたコーヒーをご馳走してくれたと思ったら、いきなり銃を突きつけてくるしさ」

「銃を突きつけられた?」

「……はい。でも、弾は入ってなかったんです。人殺しはあまりしたくないからって言ってました。
 それと……」

 言葉を切ったキラは隣の少女をちらりと見て、その後の言葉を続けた。

「彼女のこと……のことを、何か知ってるみたいでした」

「ああ。虎の奴は『ザラ』って呼んでたんだよな。どうしてだ?」

 最後の言葉が自分に向けられたものであることを知り、は小さく唇を噛んだ。
 その名前のことを話してしまえば、プラントでのことすべてを話さなくてはいけなくなる。
 そう考えてしまうと、返すべき言葉が見つからない。

「……ごめん。僕が言わなくていいことを口に出したばっかりに」

 ひざの上にあげることに痛みを感じたために、脇に垂らしていたの左手。それをキラの手が軽く握った。
 それは膨らんだドレスが邪魔をして、正面にいる皆の視界には写っていない。


 予想もしていなかったことに、私は驚いた。
 しかし怪我をした左手はうまく動かず、振り払うこともできない。それよりも。
 最初の頃より、嫌じゃないのは何故?
 そう考えたら、自然に指が動いていて、プラントでのことも少しだけ話せそうな気がした。


 不用意な僕の一言で、は少し考え込んでしまった。
 申し訳なくて、自然に彼女の手を掴んでいた。
 こちらを見ないがやはり驚いたのか、わずかに肩が震えた。
 またしなくてもいいことをやってしまった……と自己嫌悪。そっと放そうとする。
 それより先に伸びていたはずの指先が、僕の手の甲に触れ、ちょっとだけ力がかかったのに気がついた。




「艦長さんたちには前に話したんですが……。
 私は両親がなくなってからすぐ、ちょうど血のバレンタインの頃までプラントに住んでいたんです。
 詳しいいきさつは省きますが、
 プラントに上がってすぐ知り合ったのがクルーゼ隊に配属されたばかりの皆さんだったんです」

「お、おい。それは私たちも初耳だぞ、あの時はザフトの新兵たちとしか言わなかったじゃないか」

「ごめんなさい」

 はナタルに向かって頭を下げる。
 その彼女の左手から伝わってくる細かい震え。キラの指先に力がこもると、も自然に握り返していた。

「それで、1人で困っていた私を自宅に連れて帰ってくれたのがアスランさんでした」

「アスラン?」

「はい、アスラン=ザラ。現プラント国防委員長パトリック=ザラの1人息子。
 そして今は……ヘリオポリスで奪われた中の1機、GAT−X303・イージスのパイロットです」

 いきなり出てきた事実に、誰しもが息を飲む。

「私はレノアおば様の手伝いをしながらという理由で、あの日までザラ家のお世話になったんです。
 レノアおば様は農業研究に携わっていらっしゃったので、その雑用専門の助手という形で……。
 私のことがどうしてこんな場所にまで伝わっていたのか。
 どうしてではなく、=ザラとして伝わっていたのか。
 その理由はまったくわからないです。ただ……」

「ただ?」

 問いかけて続きを促すキラ。

「パトリックおじ様が私の名前を聞いてひどく驚いていたのを覚えています。
 あの人も忙しい方だったので、顔を合わせることは極希だったんですが……。
 顔を合わせる度に幾度となく、養女になってほしいと言われました。
 でも、さすがにそれは受け入れられなくて、
 兄と相談してから答えさせてくださいとお断わりしていたんですけれど……」

「そうか……」

 その言葉を最後に、ブリッジ内に沈黙が落ちる。



黒マント製作機から
  ヒロイン、赤服隊とお知り合いだったことを暴露。
  以前士官4人組に話したときは、適当にごまかしていたので。
  そして。
  何やら少しずつ接近し出したキラとヒロイン。他の人に気付かれないように手を握り合ってます。
  しかし、健全な青少年はこの後、暴走確定。


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