タルパティア工場跡地―――。
 とっくに廃棄された場所だが、何もない砂地よりわずかに残る建物などの障害物がバクゥの機動力を殺す。そう考えて用意したはずだった。


 ドォォォォォオン!


 仕掛けておいた地雷源が一斉に爆破し、大量の砂を舞い上げる。

 「まさか……読まれてた……?」

 AAブリッジで、カガリが信じられないと言ったように拳を握りしめた。
 サイーブやキサカというレジスタンスの面々も、マリューやナタル、他のブリッジクルーたちも同様。
 平然としていたのはレガールだけ。

「こっちがあそこに向かってるのを知って、何か仕掛けてあると睨んだ。
 そして素早く行動を起こし、無人ロボか何かで最初の地雷を踏み、自陣への被害を最小限に食い止めた。
 アンドリュー=バルトフェルド。砂漠の虎の異名は伊達じゃないってわけか……」




「1号機にランチャー、2号機にソードだよ!」

 キラたちより一足早く来ていたフラガが叫ぶ。

「何でかって? 換装するより俺が乗り換えたほうが早いに決まってるからだろ!」

「それは一理ありますね」

「やっと来たか……って、お前ら、これから俺たちが何しに行くかわかってんだろうな?」

「え?」

 地を這いかねないフラガの声に、きょとんとなる。しかしフラガは無言のまま、1点を指差す。
 それを視線で追いかけたあと、はキラの向こう脛を蹴り飛ばした。

「いつまで握ってるつもりだよっ!!」

 痛みに言葉を失っているキラに背を向け、の方へと走って行った。

「……大丈夫か?」

「ええ……まぁ……。それにしても、今回でここを抜けられるかどうかが問題ですね」

「抜けなきゃならないさ。俺たちは何としてもアラスカまで辿りつかなきゃだめなんだ。
 しかし、今回は虎も本気出してくるぞ。
 はっきり言って、レジスタンスの戦力は当てにならん。お前と俺と、とがきばらなきゃな」

「はい」

「ああ、それとだな。のエネルギーパックについては、から何も聞いていないだろう」

 小さくうなずいたキラ。

「でも、の方がストライクより後に開発されたんですよね。
 だったら、ストライカーパックが使えるんじゃ……」

「と、思うだろ。実は使えないんだな、これが」

 フラガは小さく肩をすくめながら、苦笑した。

「あの機体は速度と機能性重視、要するにエールストライクと一緒ってわけだ。
 エールストライカー状態の武器はビームサーベルと、ビームライフルしかないだろ?
 の武器もその2つしかないんだ。
 それにフェイズシフトがあるとはいえ、被弾しなかったらエネルギー消費は少ない。
 決定的なのが、Xナンバー最後の機体ってこったな。
 ストライクや奪われた4体から得たデータをすべて投入してある分、
 最低のエネルギー消費で最高の動きができるように設計されているってわけさ」

「そうなんですか……」

「何、その顔は?
 エネルギー切れになったをかばって、いいとこ見せるつもりだったのかな?」

「ちがいますよ!
 ただ、これで彼女も戦う道から逃げられないんだなって思って……」

「そうだな……。でも、それはあいつだって志願した時点で覚悟してるさ」

 フラガの大きな手が、キラの頭をくしゃくしゃと撫でた。その後、己の操る機体へと乗り込む。

『各機、発進してください!』

 ミリアリアの声が各コックピットに届いた。

「ムウ=ラ=フラガ、スカイグラスパー1号機、出る!」

「キラ=ヤマト、ストライク、行きます!」

、出ます!」

 白と青の戦闘機が空に舞い、白と青と赤のMSが砂煙を上げて着地し、藍色の機体が看板を蹴って飛び出した。




「おやおや、見たことのない機体がいるねぇ」

 レセップス内のMSデッキ。
 パイロットスーツに身を包んだバルトフェルドは、外から送られてくる映像を見て楽しそうに笑った。

「では、そちらは我々に任せていただいて、バルトフェルド隊長は足付きを……」

「あなたたちにあのMSの相手は無理ね」

 ピンクのパイロットスーツ姿のアイシャが、さらりと言う。

「だって、あなたたちの機体は砂漠用ではないもの。
 あちらの機体は既に砂漠に対応できるようにOSを組み替えているみたいだけれど、ね」

「我々だって少々時間を頂ければすぐに作業を完了させます! ナチュラルにできたことを我々ができないなど……」

 アイシャの言葉に噛みついたように言うイザーク。
 それを見ながら、にやりと笑ったバルトフェルドが口を開く。

「残念だが、あちらに乗っているパイロットは我々の同胞だよ?」

「「えっ……?」」

 揃い揃って動きを止め同じような表情を見せた2人に苦笑しつつ、バルトフェルドは言葉を続けた。

。確か、君たちが保護した一般市民じゃなかったかね?
 彼女がどういう経緯で君たちの元を離れ、地球軍の船に乗っているのかは知らんが。
 君たちが色々教え込んだ少女だ。敵に回したらどういう相手なのか、わかっているんじゃないのかい?」

「……それは……」

「それに、知り合いを撃つという状況は、君たちにとってやりにくいだろう?」

「あの、バルトフェルド隊長はどうして……」

「パナディーヤで、ブルーコスモスからアンディを助けてくれて、連れの子たちと一緒にこの屋敷に来たのよ。
 とても可愛らしい子ね。あなたたちが守りたいと思うのもわかる気がするわ」

「こ、ここにが来た?」

「さぁ、おしゃべりはここまでだ。これで、OSの書き換えに与えられる時間はなくなったぞ」

 『だから今回は我々に任せて、君たちはレセップス艦上で見ていたまえ』と、言葉を締めくくられて。イザークもディアッカも反論する言葉を失った。



黒マント製作機から
  長くなりそうだったので切りました。


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