ザフトの戦闘用攻撃ヘリ・アジャイルの攻撃を避け、フラガの操るスカイグラスパーが攻撃し返した。エンジンルームに被弾したそれは黒煙をなびかせて堕ちていく。

、僕がこっちを担当するから、そっちの2機は頼むよ!」

「わかりました!」

 今向かってくるのは5体のバクゥ。上空のアジャイルはフラガに任せ、キラはに通信を繋いだ。
 言葉を交わす間にも、57ミリ高エネルギービームライフルが、バグゥの両後ろ足を貫く。動きを止めざるを得なかった機体を、ストライクが蹴り飛ばした。その先には近付いてくる別のバクゥ。避ける間もなく両機体はぶつかり、砂を巻き上げて倒れた。止めとばかりに、ビームサーベルが2体を貫く。
 AAよりのは振り向きざまに近付いてきた機体に踵落としを食らわせ、よろめいた胴体にロッドを振り下ろす。爆発から逃げ飛び上がると、もう1体のバクゥにロッドからのビームが突き刺さった。

「キラ先輩!」

 目の前の敵を倒して振り返ったカメラアイに写ったのは、3体目の機体に後ろから切りつけられ、バランスを崩したストライクの姿。
 はスラスターダッシュ。ストライクの背中を前足で押さえ付け、サーベルを突き立てようとしていたバクゥを突き飛ばした。

「あ、ありがと……カッコ悪いところを見せちゃったね……」

「仲間を助けるのは当然ですから……それに……キラ先輩は別にカッコ悪くないです……

「それに……のあとに言葉続けた?」

「あ、なにも言ってません!!」

 互いの背中を合わせ、短く言葉を交わす。
 その間にも、に突き飛ばされたバクゥが向かってくる。

「バクゥの動きだと、小回りが効かないAAは一方的に不利です!」

「うん、行かせないから!」

 今度こそストライクのライフルがバクゥの胸から胴体を一直線に貫き。の回転するロッドがアジャイルからのミサイルを叩き落とす。
 攻撃の手が弱まったその瞬間、レジスタンスのバズーカが戦闘ヘリを撃ち落とした。

「……AAがっ……」

 バクゥを全滅させて一息ついたキラと
 しかし、振り返った先には、集中砲火を受ける白亜の艦の姿。身動きが取れないのか浮上もせず、主砲の射線も取れないのか反撃もせず、ただ攻撃を甘んじて受けているだけ。
 そしてその向こうに見えるレセップス。その艦上を見て、は思わず声を上げた。

「うそ、デュエルとバスターまでっ?」

 ストライクとともに地球降下したのだからいても不思議はないものの、まさかこんなところで出てくるとは……。
 2体は砂漠に下りてくる気配はないが、それでも厄介な相手であることは間違いない。デュエルはともかく、バスターは中遠距離砲撃仕様の機体。

、AAの方に回ってくれる?」

「それは構いませんけど……キラ先輩は?」

「僕は……あの機体の相手をしなきゃいけないから」

 レセップスから吐き出されたオレンジの機体。先ほどまで対峙していたバクゥに似ているようで異なるフォルム。

「……あれは、隊長機……」

「……バルトフェルドさん……」

 ごくりと喉が鳴った音がしたのは、どちらだろうか?

「キラ先輩、私が彼の相手をします。先輩はAAの方へ行ってください」

「大丈夫。……やれるよ。だから、でAAを……」

「……わかり、ました……。気を付けて……」

 通信モニターが消え、交信が途絶える。

「『気を付けて』か……。ありがとう、。君も気を付けてね。あとで、AAで会おう」

 跳躍を繰り返して去っていくの背中に笑いかけ、キラは前方に視線を戻す。



 確か、前に送ってもらったときに言っていた名前。それがあの機体の名前なんだろう。
 僕はラゴゥの放ってきたビームをシールドで避け、縦横に動き回るそれに狙いを定めてトリガーを引いた。でも、素早い動きになかなか当てることが出来ない。
 やはり、他の機体とは一味も二味も違う。というよりも、ここまであの機体の性能を出すことが出来るから、彼は『砂漠の虎』としてパナディーヤに君臨していられるのだと思う。
 それだけ、目の前の機体の動きに無駄がなかった。

「バルトフェルドさん、もう止めてください! 勝負は付いたんです!」

「まだだと言ったはずだ!」

 ラゴゥがくわえているビームサーベルを撃ち抜けば、それをパージしてダメージを最小限に押さえられ、逆にストライクの砲心が撃たれる。攻撃を避けて高く飛び上がれば、それを狙い済ましたかのようにラゴゥも飛び上がり、叩き落とされる。

『戦争にはスポーツやゲームのような時間制限もルールもない。
 だったら、その勝ち負けをどこで決めたらいい?
 敵をすべて滅ぼしてしまえば、それですべてが終わるのかね?』

 黒煙を上げている旗艦に気がついていないわけではないだろう。それなのに、どうしてまだ向かってくる?
 本当にそれしか方法は残されていない?
 レッドゾーンに近いエネルギーゲージは、僕に決断の時を迫らせていた。



 動きの取れないAAの元へ返ってきた私は、上空を飛ぶ2機のスカイグラスパーに気がつく。
 確か、ランチャーストライカーを装備した方はムウ兄だったと思うけど……。

「ブリッジ! スカイグラスパー2号機は誰が乗ってるの?」

『1号機はフラガ少佐。2号機はカガリさんが乗っています』

「了解、ありがと!」

 通信を切って、もう一度上空を見ると。
 シュミレーションに触っていたとはいえ、初めての戦闘で練習もしていないだろうに、ムウ兄との連携もぴったりだ。
 どうやら任せておいても大丈夫だと判断して、私はをAAを固定している建物のところに移動させた。には高出力の武器はないから時間はかかるだろうけれど、建物を破砕していくしかない。
 私はすぐ作業に入った。



「ディアッカ、あの藍色のMS、足付きを飛ばせるつもりだぞ!」

「何ぃっ!」

 デュエルとバスター、それぞれのモニターには、背を向けて破砕作業に取り組んでいるの姿が映る。

「へっ、俺たちも舐められたもんだな」

「あいつ、バカじゃないのか?
 敵の前でそう簡単に背中を見せるなんて、戦場ではそれが命取りになることを知らんのだ。甘い奴め」

 ディアッカの呆れた口調に、イザークも呆れた口調で返す。

「あのMSパイロットは戦闘慣れしていない奴だ。じゃないとあんな無防備で背中を向けるわけがあるか」

「その意見には俺も同感。丸で撃ってくれと言わんばかりだぜ」

「フン、撃ってやればいいじゃないか。そうすれば身をもって己の愚かさに気がつくだろうよ」

 その言葉に頷いたディアッカ。バスターの高出力ライフルを腰だめにして、ターゲットロックを合わせた。が、そこから発射トリガーを引くことができない。

「ディアッカ、早く撃たないかっ!!」

「わかってるっ!」

 急かすイザークに、ディアッカは己の考えを振り払って、指を引き絞った。




「来るっ!」

 直撃する瞬間、は機体を沈め。ビームはAAを捕らえていた建物を吹き飛ばす。
 僅かな欠片が付いているがそれをものともせず、大天使の名を持つ艦は再び空へと舞い上がることを許された。
 浮き上がった艦は方向を変え、ナタルの合図とともに225センチ2連高エネルギー収束火線砲ゴッドフリートを放った。それは艦上にいたデュエルとバスターを砂地へと落としやり、後部主砲を貫いて爆破、逃げられなかったザウートをも巻き込み、ついにレセップスは砂の海に座礁した。




「……潮時……だな」

 あの後、何度ストライクと切り結んだのだろう。既に満身創痍となった愛機。戦える戦艦やMAは手元にない。あるのは自分直属ではない部下のMSが2体。しかし、流れる砂に体勢を立て直すことすらできず、無様にもがいているだけ。短いため息の後、バルトフェルドはレセップスへと通信を繋げる。

「ダコスタ君、退艦命令を出したまえ。残存兵を集め、パナディーヤからジブラルタルへ連絡を取れ」

「隊長……」

 モニター越しの顔が驚愕に歪む。

「君たちまでここで死ぬ必要はない。わかったな、すぐに退艦したまえよ?」

 一方的に通信を切る。

「アイシャ、君も……」

「そんなことをするくらいなら『死んだほうがマシ』ね」

「ばかだな、君も」

「何とでも?」

 艶やかに笑う彼女にキスを贈りたい、そんな気分に刈られながらも、微笑むだけに留めた。

「じゃあ、つき合ってくれ!」



 再びぶつかり合うラゴゥとストライク。
 その2機の激しさにレジスタンスはおろか、スカイグラスパーもAAでさえも手出しができなかった。ただ何度もぶつかり、その度に散る火花に見入られてしまったかのように、介入することができなかった。

 そんなとき、とうとうストライクのフェイズシフトが落ちた。同時にビームサーベルが消え、ストライクは一瞬無防備な状態にさらされた。
 これを好機とばかりに突っ込んでくるラゴゥ。ストライクもストライカーパック強制排除・シールド放棄でアーマーシュナイダーを構えるが、一歩遅かった。

「バルトフェルドさん、アイシャさん、もうやめてっ!」

「何っ!」

 ストライクに注意を向けすぎていたせいか。近付いてくるに気がつかなかったラゴゥは、蹴りを入れられ横倒しになる。そのままは両腕を広げ、ストライクとラゴゥの間を割るように立ちはだかった。

「これ以上争って何になるんですか? もう決着はついたんですから、投降してください!」

 全周波で流れるの声はストライク・スカイグラスパー・AAの友軍のみならず、レジスタンス、撤退作業を続けるレセップスや2隻の駆逐艦、そしてデュエル・バスターの元にも届いていた。

「明確な終わりがないというなら、今はここで終わればいいじゃないですか。
 無駄に命を奪い合う必要なんてない、だからやめてください!」

「……君は甘いぞ!」

ッ!!」

 飛びかかってきたラゴゥ。をかばうために飛び出したストライクは、ただ本能的に、手にしていたアーマーシュナイダーを付き立てた。
 付き刺さった部位から火花が散り始める。茫然と立ちつくすの腕を捕らえ、ストライクはその場から離れる。



 一瞬の静けさを残し、ラゴゥは大きな音とともに燃え上がった。

「……バルトフェルドさん……アイシャさん……なんでっ……」

 最後の瞬間、コックピットで抱き合う男女の姿が確かに見えたような気がした。
 堪えようとすればするほど、頬に涙が伝う。
 再び助けられなかった命に、自分の無力さに、のコンソールに拳を叩き付けた。



黒マント製作機から
  戦闘シーンは苦手っす。
  この次で砂漠編は終わり……。


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