今頃、洞窟では勝ち取った勝利に沸き、酒を酌み交わしているだろう。
 でも、私はそんなところへ顔を出すわけにはいかなかったし、出すつもりもなかった。

『昼間のお前の行動、すべてが間違っているとは言わないが軽率すぎる。少し反省しとけ』

 ストライクに支えられるようにしてAAにもどった。コックピットから下りた私は、スカイグラスパーから下りてきたムウ兄に頬を叩かれた。その回りで、物言いたげな同情するような視線の群れを抜け、私は自室に帰った。
 そしてようやく。夜の帳が降りて人通りもなくなった艦内から、私は外へ足を向けた。目指したのは、砂漠に落ちたころカガリと話した岩場。あそこが静かで、誰にも会わない。
 さくりさくりと踏みしめる砂が歩みを遅くするけれど、それが私の進みを邪魔することはない。
 やがて目的地にたどり着くと、岩の1つに腰を下ろした。そして空を見上げながら、静かに歌いだす。……この数日間の戦いで散った全ての命に捧げる鎮魂歌。私1人が歌ったところで何も出来ないかもしれないけれど、それでも歌わずにはいられなかった。



 頭がだるい。少しばかり泣きすぎたのかもしれない。
 昼間の戦いの結果、僕はまた同胞を、人を殺してしまった。
 そんなことを望みなんてしないのに。戦いの渦は容赦なく僕たちを巻き込んで荒れ狂う。友達を守るために手にした力、選んでしまった道。それでもこれから先、アラスカにはいるまではまだまだこんなことが続くのかと思うと、いつか自分が自分でなくなりそうな気がして怖い。

「……?」

 顔を洗って廊下に出た僕は、見慣れた濃茶の髪が艦の外に出て行ったのを見る。こんな夜更けに1人でなんて、と、僕はすぐさまそのあとを追いかけた。
 彼女の行き先はわからないけれど、砂地に残った足跡をたどっていくことで見失わなかった。
 砂の中には珍しい、少し小高い岩山。その一角に腰掛けたは空を仰ぎ、最初は低く、徐々に高い声で歌い始めた。
 月光のスポットライトの中で歌う彼女に、僕は見惚れた。声をかけて邪魔することもためらわれ、静かにその歌に聞き入っていた。



『命の欠片を胸に抱いて 今は何を捜し求めるのだろう
 会えない寂しさと悲しみを知らず 貴方はどこへ行くのだろう
 たった一つの誇りを掲げていても 誰にも見せられないのは罪だから
 行きなさい 活きなさい 全てをなくしてしまう前に
 生きなさい 生きなさい 悔やむことを覚える前に
 後戻りのできない道はないから 歩みを止めないで』



 最後の一句を歌い終えて瞳を閉じたの頬を涙が滑り落ちた。

「……ゴメンなさいっ……」

 小さく発せられた言葉に、僕はとうとう堪えきれずに彼女の前に姿を見せた。

「……キラ……先輩……いつから……」

「ごめん、君が1人で出て行くのが見えて、後を追いかけてきた」

 僕はそのままの隣に座る。いつもなら即座に逃げるはずの彼女が動きを見せない。見ると彼女は、うつむいて拳を握り締め、何かを堪えているようだった。
 僕はその細い肩を抱き寄せ、自分の肩にもたれかけさせた。

「……泣きたいなら泣けばいい。僕はこれ以上のことはしないし、見ない振りをしててあげるから。バルトフェルドさんたちのために、僕の分もが泣いてあげて」

「………………っふぅ……ひっ、えっ、ふええええぇぇぇぇぇ……」

 しばらく我慢していただったけど、とうとう堪えきれなくなったのか。
 僕の胸に顔を埋めて、静かに泣いた。
 僕はその体を包み込むように、そっと抱きしめていた。



黒マント製作機から
  ようやく砂漠編終わり。
  最後『今までの拒絶ッぷりは?』と言いたくなるようなヒロインの行動でした。
  戦闘シーンに入ってからは絡みが少なかったので、最後だけでもキラ夢強調しちゃいましたよ。


To NEXT