「ご、ごめんなさい!!」

 柔らかい唇に呆然としていた僕から、は真っ赤な顔のままで慌てて離れた。
 女の子にキスされたのはこれで2回目。驚いていないわけじゃない。
 まさか、まさか……嫌われてるからキスされるなんて思わなくて。

「わ、わ、私先に戻りますねっ。海水がべたついて気持ち悪…………」

「ありがとう、

 僕は彼女の腰に手を回して抱きしめて、の胸に顔を埋めていた。
 殴られても蹴られても構わなかった。くれたキスに対する喜びが勝っていたから。
 でも、いつまで待っても反撃は来なかった。それよりも、彼女の鼓動が早くなっていることに気が付いた。

「……あ……の……ちょ……は……」

「『あのちょっと離して』って?」

 少しだけ視線を上げて問いかけた言葉に、真っ赤な顔の彼女は何度も頷いた。

「わかってるけど……もうちょっとだけ。もうちょっとだけでいいから……」

 再び視線を落として、ぎゅっと抱きついた。
 今は、今だけはこの温もりを離したくない。
 ごめん、僕のわがままだってことは知ってる。それでも、君から離れたくないんだ。

「……もう少し……だけですからね……」

 小さな声が降って来て、頭の上にそっと添えられた手の平が、優しく髪を梳いてくれた。



 結局、キラ先輩が私を解放してくれたのは、完全に日が落ちてしまってから。
 夕食前に一度部屋に戻らないとだめで、私は急ぎ足で歩く。その後ろを半歩遅れて付いてくるキラ先輩。

「あはは、急がせてごめんね」

「ごめんじゃないですよ! 『もうちょっと』って言ったじゃないですか!」

「うーん、気持ちよくてついつい寝ちゃったしねー」

 そう、この先輩は私に抱きついたままで寝ちゃったんですよ!
 抱きつかれて身動きが取れない私は、同じ姿勢を強制されて……。固い板の上で膝立ち2時間ですよ、おかげで膝が痛いです。

「こんなことになるなら、抱きつかれたときに振りほどいておくんでした……」

「でもあーいうことされなかったら、僕だって抱きつかなかったけど?」

 その言葉に振り返って彼を睨みつけた私は、きっと真っ赤な顔をしていた。

「そのこと、絶対に皆に言わないでくださいね!」

「そのことって、が僕にキ……」

「い・わ・な・い・で・く・だ・さ・い」

 私の突き出した拳がキラ先輩の頬を掠めた。が、彼はまったく動じていない。それどころか、その突き出した腕を掴んで、半歩踏み出してきた。

「……ッ!」

「これからは、キラって呼んでくれる? 先輩付けナシで」

「な!」

「嘘だよ。そんなお願いしても、は絶対に聞いてくれないだろ?
 僕は言わない。その代わりまた今度、膝枕してくれるよね?」

  『じゃなきゃ、のお願いは却下するけど?』とにっこり笑ったキラ先輩に対して。私には断るという選択肢はないみたい。不承不承ながら頷いた。



 そして一夜明けた。



 ザフトの勢力圏を避けて、海の真ん中を航行しているAA。
 その胴体の下を突き上げるような衝撃とともに、第一戦闘体制となった。

「マードック曹長!『ソードストライク』で出ます!」
 キラの言葉にマードックが怪訝な顔を向けた。
「超伝導電磁推進が大気中で空気を排出して使えるなら、海の中では海水排出でも使えるはずです!
 それにシュベルトゲーベルは、レーザーを切れば実験として使えますから!」
「キラ先輩のストライクだけじゃ……」
はビームが使えないんじゃ接近戦に頼るしかなくなるでしょ。
 でも、慣れない海中でグーンの素早さに着いていけるとは限らないじゃない。だからAAで、援護に回って!」
「ヤマト少尉の言うとおりだ。少尉は艦上から、海中からAAに向けて発射される魚雷を打ち落とせ。
 ビーム砲は水の中で拡散するとはいえ、海面に近いところからなら十分に撃ちぬける!」
 キラ先輩の声に続いて副艦長さんの声が、のコックピットに響いた。
「わかりました」
 確かに接近戦重視のこの機体では、身動きの取れない海中では足手まといになるだけ。
 迫りくる魚雷を叩き落していると、スカイグラスパー2機が飛び立っていった。

 でも、そのうち1機は帰艦しなかった。ましてや、南の島で起こっていたことなど、そのときの私に考える余裕はなかった。



黒マント製作機から
  キラとヒロインが急接近しつつあります。黒キラでも構わないから、早く甘々にしたい。
  うふ、モラシム隊との戦闘、南の島でのアスランとカガリのシーン割愛。
  おまけにザラ隊結成話まで割愛。ヒロインに直接かかわってませんしね。
  というわけで、次の話はカガリが救助されてからの話。
  オーブに逃げ込むところまでは駆け足で行きます。


To NEXT