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『ご覧いただいている映像は現在、我が国の領海20キロで行われている戦闘の様子です……』 街中の大きなスクリーンに写し出されているのは、白亜の戦艦の回りを飛び回るMSとMA。そして、画面左上には生中継であることを示す『LIVE』の文字。 キャスターはこの国、オーブ連合首長国政府が緊急の首長会議を招集させ、不測の事態に対する処置を講じているとともに、地球軍・ザフトの両方に撤退を求める要求を伝えたことを繰り返している。 「……許可なく領海に近づく武装艦への我が国の措置に、例外はありますまい……ホムラ代表」 広い部屋の長い机、その一番窓際に座っていた壮年の男性が静かに述べた。 たとえ今画面に映されているのが、自国の国営企業が作ったものだとしても、例外はありえない。彼――ウズミ=ナラ=アスハはそう考える。 すでに失脚し、弟に代表の座を譲った彼の言葉に、公式な場における最終的な決定権はない。しかし、彼を慕うものは多く、こういった会議などではまだまだ実権を握っていた。 「ただ、テレビ中継はあまりありがたくない……と」 その呟きに気がついたように、ホムラが指示を出す。確かに中立の国のすぐ外で戦闘が行われているなど、国民の不安を煽るだけにしかなりえない。 守らなければならない、平和な国を壊すようなことをしてはいけないのだ―――。 着弾の衝撃で揺れる。その中を、カガリは壁に手をついて何とかバランスを取りながら、前に進んだ。そしてブリッジへと繋がるエレベーターに乗り込んだ。 「カガリ、何をするつもりだ!」 キサカの手が彼女の腕をつかむ。 「放せ! このままではAAは堕とされる! オーブのすぐ側なのにそんなことはッ……、そんなことはあってはならないんだ! この艦には、この艦には、自国の……オーブの子供たちだって乗ってるんだ!!」 鋭い眼光に、思わずキサカは少したじろいだ。その拍子に緩んだ腕から開いたドアへと駆けていくカガリ。 大の男である自分が、娘ほども年の差がある少女に気押されるなんて。 「……やはり、血は争えぬ、ということか」 小さな苦笑をもらした彼は、彼女の後を追いかけた。 ブリッジに飛び込むと、カガリの目には、メインモニターのオーブ艦隊が映った。 助けに来てくれたと喜ぶカズイの言葉を押えつけるようにして、マリューが移動指示を飛ばす。それに納得がいかないと言ったように見上げる彼らに、突きつけられる現実。 「オーブは友軍ではないのよ!」 その一言が、今の自分たちの立場を思い出させた。しかし、それとは関係なく、ザフトからの攻撃は続き絶え間ない衝撃が体を襲う。 看板上ではストライクと、そしてスカイグラスパーの奮戦が続いているが、飛行手段のない2機体では満足に攻撃を当てることすら敵わないらしい。 「構うことはない、このまま領海へ突っ込め! オーブには私が話す!」 突然乱入してきた彼女に、マリューも他の面々も動きを止めた。その中で、頭を抱えたのはレガールで。追いついてきたキサカに恨めしそうな視線をぶつけるも、彼はそれに気がつかない振りをして、さりげなく視線をそらした。 「あなたが……?」 「前方のオーブ艦隊より入電!」 報告の後に繋げられた通信。画質の荒い中、中央に立っている将校が口を開く。 彼らが領海に寄りすぎていること、中立国家であるオーブは武装した艦船やMS、MAの領空・領海侵犯を認めないこと、直ちに変針するように告げた。 『繰り返す、直ちに変針されよ! この警告が守られない場合、我が国は自衛権を行使し、貴艦等を攻撃する!』 その言葉を聞いてショックを押さえ切れないのは、ヘリオポリスの学生たちだった。まさか、母国であるオーブからこんなことを言われるとは予想すらしていなかった。 そんな彼らを見て、小さく舌打ちしたチャンドラを見て、カガリは通信席に駆け上がるとカズイのインカムを引ったくった。 「AAはこれからオーブの領海に入る! だが、攻撃するな!」 『な、なんだお前は!』 いかにも軍人でない格好の相手が現れたら当然の反応だよなぁと、ノイマンは思わず相手に同情する。 「お前で判断できんというなら行政府へ繋げ! 父を――ウズミ=ナラ=アスハを呼べ! 私は……私は、カガリ=ユラ=アスハだ!」 叫ばれた真実。 それはAAブリッジのみならず、通信先のオーブ艦隊のブリッジも静まり返った。 「……まったく……獅子はこの事態をいったいどう収拾されるつもりかな」 小さくぼやいたレガールの言葉は、今は誰にも届かない。 「…………本当なの……?」 AAとオーブ艦隊のやり取りは、当然ストライクとの元にも届いていた。 開かれたストライクからの通信。モニターに映るキラの顔は、バイザー越しといえどもその戸惑いは隠せない。 「どうして私に確認するんです?」 「そりゃお前とレガールが、あの子の知己であるということは俺たちの目から見てもわかるからな」 今度は音声のみの通信。相手はスカイグラスパー1号機のムウである。 「カガリが、本人が言っているんだから間違いじゃないと思いますけど」 「うっわー、お前そういう突き放したような言い方ありか?」 「ありなんです。ッていうか、文句は後で聞きます。この状態で無駄口叩かないでください!」 強制的に通信を切ったは、スラスターで飛び上がる。あと一歩遅ければ、バスターの高出力ライフルに貫かれていただろう。 スカイグラスパーがランチャーを連射、直接の攻撃手段を持たないから遠ざける。バスターの注意が完全にスカイグラスパーに移った瞬間を狙って、ストライクのライフルがグゥルを貫いた。 飛行手段を持たないバスターは当然の如く、引力に従って頭から落下する。が、転んでもただでは起きないとはこのことだろう。バランスを崩し落下しながら発射された高出力ライフルは、AAのエンジン部を打ち抜いた。 大天使はその巨体を支え切れず、黒煙をあげて、着水する。その周りに展開するオーブ艦隊。始まった砲撃には唇を噛み締めた。 「……ッよくもっ!」 唇を噛み締めた痛みなんて、きつく握った手の平の痛みなんて感じない。 ただ私の頭の中にあるのは、この艦を堕とさせてはだめだという思いだけ。乗っている人たちをこの攻撃から守らなきゃいけないという思いだけ。 不意に、以前も感じたことのある感覚が襲ってきた。それに突き動かされるままに、私はを飛び上がらせた。 「AAに、皆に危害を加えるなぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 「何ッ!」 は一番近くにいたオーブ艦隊船に降り立ち、ロッドを振り上げた。叩き下ろすことにためらいはない。操縦レバーを押し出そうとした、その時。 「……え?」 グラリ、とかしいだ機体はそのまま水面に落とされた。 いったい、何が起こったんだろう……。 私はその答えを見出せないままに、頭を側面にぶつけたせいで意識を失い。 は海中へと沈んでいった。 ![]() 黒マント製作機から 海に落ちるのが好きなヒロイン<違うから。 To NEXT |