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無事でいるだろうか。 悲しさと寂しさに埋もれて、泣いてないだろうか。 味方から撃たれたという事実が、他の道を歩ませるきっかけにならないだろうか。 探しに行きたいよ。 嫌われてても、避けられていても。 君の姿を見ていられたら、十分だと感じられたときもあったのに。 今のこの場所には君がいない。 ストライクの横の整備ベッドは空いたまま。それと同じように、僕の心も空虚さが消えない。 「キラ先輩、どうしたんですか?」 「えっ?」 僕を先輩扱いするのは彼女だけで。 いきなり聞こえた声に弾かれたように顔を上げた僕は、勢い余って背後の壁に頭をぶつけた。そのまま痛みでうめいていると。 「やーい、ひっかかってやんの」 「……うるさいよ、カガリの悪趣味……。普通はこの状況でそんなことする?」 「私はお前が元気ないから、少しでも慰めてやろうとしただけじゃないか。 同級生は家族との面会に行ったぞ。行かないのか?」 「……僕は……僕は面会は断わったんだ」 「どうして! キラのご両親だって来てるんだろ?」 「そうかもね……。だけど無事は確認してもらってるし、今は会えないからって、艦長にもそう言ったんだ」 父さんや母さんに会いたくないわけじゃない。……でも今は。 「それに今やってるの、結構かかりそうだからさ。 『作業時間つぶして面会して、それで間に合わなくなりました』なんて言っちゃだめでしょ。 せっかくオーブに助けてもらっていろいろと便宜を図ってもらった意味なくなるじゃない。 悪いけどカガリも、ちょっと僕を1人にしておいて。作業に集中したいんだ」 「なーにが『一人にしておいて』だっ! ため息ばっかりついてて指なんかちっとも動いてないじゃないか! 与えられた部屋じゃなくて、モルゲンレーテの研究室や工場でもなくて。 こんなだだっ広いところで何度も外を見ながらやってるお前が、集中してやってるわけないだろ! ……確かこの鳥、トリィって名前だったよな?」 「うん……そうだけど……」 「よし、トリィに命じる。ここでため息ばかりで腐ってる飼い主を運動させてこい」 『トリィ!』 「え……あ……ト、トリィ! こらっ!」 飼い主の僕の言葉を無視して、緑のロボット鳥は飛び上がって外を目指す。 「カガリが変なこと言うからっ!」 「私を怒る前に追いかけて行かなくていいのか? 大事なものなんだろ?」 ニヤニヤと笑う少女にひと睨みくれて、僕はトリィを追いかけた。 「……どこに行っちゃったんだよ……」 AAのMSデッキから地上に出るまでは、結構な距離があって。本当にカガリの言うようにちょっとした運動になった。でも、原因となったトリィが見つからないのでは本末転倒というわけで。 『トリィ、トリィ!』 聞き慣れた鳴き声に、僕は上に向けていた顔を下ろす。と、優しいエメラルドの瞳を持った少年がトリィを手の平に乗せてこちらにやってきた。驚きのあまり、思わず彼の名の形に唇が動く。 そしてふと彼の後ろのジープを見た。 フェンスの向こうから飛んできた小鳥、それは私にも見覚えがあるもので。もう出航したはずと思いたかったのにそれを否定させる存在は、メタリックな翼でアスランさんの手に緩やかに舞い降りてきた。 「へぇ……ロボット鳥ですね。あの人のかな?」 ニコルさんがそう言うけれど、私には見えなくて。トリィを手にしたアスランさんがフェンスまで歩いていって、私にようやくその人物が確認できた。どうやら、キラ先輩も私に気がついたらしい。 「……せん……ぱ……い……?」 「どうした?」 「、あいつに見覚えがあるのか?」 私の左隣りに座っていたイザークさんが問いかけてくる。 「あ、はい。ヘリオポリスの工業カレッジの先輩です。ゼミは違いますけど、何度かすれ違いましたし。 あの人がいるってことは、避難された人もオーブにいるってことですね……よかった……」 あの先輩がAAに乗ってるってことは知られちゃいけない。……アスランさんにはバレたけれど。 彼らは少しぎくしゃくした感じで言葉を交わしているようだったけれど、内容は聞こえない。 「アスラン、もう行くぞ!」 その声に走り出しかけたアスランさんに、キラ先輩が苦しそうな、悲しそうな声をあげたのが聞こえた。 「昔、大事な友達にもらった、大切なものなんだッ……」 その声が聞こえた途端、私はきゅっと拳を握った。 やっぱり、あの2人は戦わせちゃいけないんだ。キラ先輩もアスランさんもあんなに苦しそうなのに……。 「あの人、のことをじっと見てますね」 「え?」 「ほら、あのフェンスの向こうの人。……カレッジでの恋人ですか?」 「な、何を言い出すのよニコルッ! そんなんじゃないってば!」 「へーそうなの。んじゃ見せつけてやろっと」 「っん!」 抗う間もなく、右隣りにいたディアッカさんの唇によって私のそれは塞がれた。私は驚きで目を見開く。 アスランさんの操るジープは、まさに見せつけるごとく、キラ先輩の立ちつくすフェンスの前でターンして、その場から離れた。 「……今の……何……?」 トリィを手の中に閉じ込めたまま、僕はそれしか言葉が出なかった。 ……っていうか、ものすごく信じたくないんだけどッ! 安堵感より先にわきあがってくるのはへの怒りと、それとは別の色黒男に対するムカついた感情だけ。 人にあれだけ心配させておいて、ようやく無事を確認できたと思ったら、あっさりとはキスされてる。 色黒男のほうはアスランが一緒だったし、あそこにいた彼らが例のクルーゼ隊の面々だろう。数も合う。 「……僕以外の男にキスされるなんて、許せないよねッ!」 『ト、トリィ〜〜〜〜!!』 怒りに任せて両手を握りしめた僕は。 間一髪、握り潰される運命から逃げ出したトリィに何度もつつかれた。 ![]() 黒マント製作機から キラとカガリのやり取りって好きです。恋愛感情抜きで考えられるから。 今回はフェンス越しの邂逅&キラにやきもちをやかせよう企画。……やきもちの前に彼、怒ってますけど。 To NEXT |