「なんてことするんですかっ!」

「役得なこと」

「……もう1度殴ってもいいですか?」

「殴ってもいいか断る前に殴れ。バカは死ななきゃ治らん」

「そうですよ。見せつける必要はなかったのに、何考えてるんですかあなたは」

「俺が動かなかったら、イザークかニコルがやってたかもな」

 にやにやと笑いながら言うディアッカさんを心底殴りたそうにしているのは2人とも一緒みたい。ただ、ここが走っている車の上ということと、私が間にいるせいで十分に手が届かないらしい。

「でもさ、それほど怒ってないじゃん。既に経験済み?」

「……ディアッカ、そういうことは平然と聞くな」

「奥手のアスランはだまって運転してろって。……で、どうなの?」

「皆さんと別れてからですけど。一応ありますよ」

「嘘でしょう?」

「マジかよ……」

「信じられんな……」

「俺もだ……」

「……皆さん、揃いも揃って同じような反応ありがとうございます。
 驚くのは結構ですが、アスランさんは前を見てくださいよ……」

 植え込みに突っ込みそうになった車を、急ハンドルでかわすアスランさん。私を含め、彼以外の乗員は急激なGに振り回されまいと慌てて車体に捕まり。

「……でも、はそういうことをされるのはすごく脅えてたじゃないですか」

「だから下手なことをされないように、俺たちがいろいろと体術を教えたんだしな」

のことだから隙をつかれたんでしょ。でもさ、抵抗しなかったの?」

「初めてキスされたとき抵抗『しなかった』んじゃなくて『できなかった』んです。
 ちょうど左腕を怪我してたときで動かせなくて、おまけにドレス着せられて動き取れなくて」

「……それは何やってたんだ?」

 想像の範囲外だったのか、イザークさんのきれいな顔がひくりと動いた。

「ちょっと貫通銃傷作ったときです。さすがに、これ以上は話せませんけど」



「で、この後のはどうするんだ?」

 最初の海岸まで戻ってきて、車を止めたアスランさんが聞いてきた。

「どうって……AAに合流します」

「合流するといっても、居場所もわからんのにか? それよりも俺たちと一緒に来い」

「ザフトがもうあの艦を狙わない、AAとそのクルーの安全を約束してくれるなら、私は皆さんの手を取ります」

 口籠った皆さんを1人1人見て、私は小さく笑った。

「いくらなんでも、そんなことが無理だってことぐらいわかってますよ。……だから、私も行けません」

 やがて、苦笑しながらニコルが口を開いた。

は以前から一度言い出したら聞きませんでしたよね」

「まったくだ」

「だからこそ、俺達の周りにいられた」

「そーそー。手間のかかる妹みたいでさ」

「そういうディアッカは妹にキスしたんですよねぇ? 近親相姦に憧れてます?」

「あほっ!」

 クスクス笑いのニコルの言葉に、ディアッカさんは少し照れながら反論して。

「それじゃ決定だな。しばらく俺達の母艦に来い」

「え、でも私はザフトには……」

「足付きが動いたら、俺が責任をもって還してやる。……皆もそれでいいな?」

「動いたらって、足付きがまだここにいるような口振りだな?」

「貴重な戦力を残していくはずがないって、お前が言ったんだろう?
 あのフェンス越しにいたのが足付きに乗っている奴じゃなくても、彼の口からクルーの誰かに伝わるはずだ」

「なるほど。それじゃ、アスランはを探しに足付きが出てくる。そう言いたいんですね?」

「ああ、だから俺達は待てばいい」

「……というわけだってさ。しばらくはお前の機体ごと俺らの艦に来いよ。
 久しぶりに5人で『大貧民』でもしようぜ?」

「ディアッカ、作戦遂行中だぞ!」

「おおこわ。んじゃイザークは参加しないってことで」

「誰がそんなことを言ったぁっ!」

 変わらない皆の掛け合いが懐かしくて、私はとうとう笑い出し、それが皆にも伝染してしまったらしい。浜には5つの笑い声が響いた。



黒マント製作機から
 ヒロイン、ザラ隊の皆さんと遊ぶの回。
 ちょっと本編無視してました。次はオーブ領海を出たあたりからになります。


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