っ!」

 横倒しになった頭を上げたとき、ストライクのメインカメラに移ったのは濃紺の機体。

「……キラ先輩もアスランさんも、あなたたちが争う必要なんてないじゃないですか!」

、どうしてあなたがここに……?」

「ニコルと一緒。Xナンバー最後の機体であるこのにもミラージュコロイドは装備されています。
 ブリッツよりは持続時間は短いけれど、その分性能は上だから。
 それよりも3人とも、ここでの会話はAAにもデュエル、バスターにも届いていません。
 ですからパイロットの個人名については他言無用ですよ?」

「……わかった」

 アスランからは了解の声が聞こえたが、キラ、ニコルは沈黙でそれに答えたらしい。

「キラ先輩はアスランさんと戦いたくないんですよね?」

「もちろんだよ。僕はアスランが、本当に敵だとは思ってないから……」

 それを聞いて微笑みを浮かべたは、今度はイージスの方へと向く。

「アスランさんは? キラ先輩と戦って死んでもいいんですか?」

「俺だって戦いたくないさ! 3年前まではずっと一緒に兄弟みたいに育ってきたんだぞ。
 それを今さら敵だなんて簡単に思えるわけないじゃないかッ」

「最後にニコル、あなたはどう思う?」

「理由はどうあれ、僕はアスランを死なせたくありません!」

「……これで決定」

 振り向きざま、のロッドから放たれたビームが、体を起こしかけていたストライクの四肢を貫く。

、何をするんだよ!」

「心配しないでください、ストライクの各間接の動力ケーブルを切っただけです。
 キラ先輩はこのまま、アスランさんやニコルと一緒にザフトに行ってください。
 幸いこの位置からだとAAには動けないストライクが連れていかれる様子しか見えません、だから。
 それに最初のときと状況は違います。
 あのときはストライクだけでしたけれど、今はも私もいます。それに目的地までもう少しです。
 先輩の分も私が戦いますから、AAを守って見せますから、安心してアスランさんたちと行ってください」

「何言ってるの! 後で迎えにいくって、僕は君に言ったじゃない! その言葉を反故にさせるつもりなの?」

「させるつもりです。……アスランさん、ニコル、早く彼を連れて行ってください」

、君は本当にそれでいいんだな?」

「……いいんです。これ以上、あなたたちが戦うのを見たくないから。
 AAを守る使命がある以上、次は私も本気になります。それじゃこれで……」

 バーニアをふかしたは振り返ることなくAAへと戻っていく。





「……何でっ……どうして君はッ……」

 いくら唇を噛み締めても、必死で堪えようとしても、次々と涙が溢れてくる。僕は目の前のパネルに、何度も何度も拳を打ちつけた。
 MSなんて乗りたくない……これは本当。
 アスランと戦いたくない……これも本当。
 だからといって、君と引き換えにしてまで叶えたいわけじゃない。

を守るために、ストライクに乗ってたのにっ……」

 あの海で、ようやく君を捕まえたと思ったのは僕の勘違いだった?
 頭を優しく梳いてくれた手は、僕の願望が見せた一時の幻だった?

「……ニコル、お前は先に戻って、こちらに予備を向かわせてくれ。
 俺のグゥルは潰されてるし、さすがに1つのグゥルに3機は乗せられないだろう」

「わかりました。それじゃ、アスランはここで少し待っていてくださいね」

 そんな会話が聞こえて、僕は慌てて顔を上げる。
 間接を撃ち抜かれて動けないストライクはイージスの腕に捕らえられていて、グゥルに乗ったブリッツが飛び去っていくのが見えた。

「アスラン、お願いだ。僕をAAに……の元に返して!」

「無理だ」

 きっぱりとした彼の言葉に、僕は息を飲んだ。

「あいにく、お前より俺たちのほうがとの付き合いは長い」

「一緒にいたのはたった1年でしょ!」

「それでも、今のあいつが何を考えていて何を望んでいるかぐらいはわかる。
 詳しい事情を知らないニコルだって、それを感じたからこそ、放してやれとは言わなかった。
 はこれ以上、俺とお前が戦って傷付いていくのを見たくなかったんだろう。
 ……あいつは昔から人の心の動きに敏感だったからな。
 だからストライクの自由を奪って動けなくして、お前をここに置いていったんだ。
 俺たちが同じところに入れば争う必要がないから……」

「そう……だけど、でも、僕はの側にいたい!」

「何故だ?」

「答えは1つしかないよ、僕はが好きなんだから!!

「……だ、そうだが?」



「だからどうしろって言うんです?」

 声とともに岩にもたれる感じで姿を見せた。……どうやら、ミラージュコロイドで姿を隠していたようで。

「な? 何で戻ってきたの?」

「仕方ないじゃないですか。艦長さんたちから『ストライクを取り返してこい』って命令されたんですから。
 まさか事情を説明するわけにも行かなくて、一応こちらに戻っては来たんです。
 それでアスランさんに協力してもらって適度に応戦した振りをして、やっぱり無理でしたって戻るつもりで」

「アスランは……が戻ってきたことに気がついてたの?」

「当たり前だ。だからお前より付き合いが長いと言っただろう?
 何度も訓練につきあったんだ。MS越しでも気配はわかる」

「……それじゃ、今の会話は全部……」

「そうですね、アスランさんとの会話は聞いてました。ブリッツが飛び立つと入れ違いにやってきましたし」

 そこまで聞いた僕は、頬が熱くなってきたのを隠せない。すごいことを口走った気がするのに、通信を聞いていた彼女はいつもどおりで。

「で、はキラを連れ戻すように命令されてるんだろ?
 自分から置いていったのに、命令だからって俺から奪っていくか?」

「……置いていきたいのは山々なんですけどねぇ……。お目付役が悪い……」

 はぁ、と短いのため息。そして、空気を切る音。

「こら、! 命令無視するとはいい度胸だな?」

「……中佐?」

 流れ込んできた声に、僕は思わず呟いた。

「……誰だ?」

のお兄さんだよ。レガールさんって言うんだ」

「捕われのお姫様をとっとと助けに回らんか!」

「……中佐、ひどい……」

 その言葉に眉をしかめる僕の元に、アスランのくぐもった笑いが伝わってくる。

「アスラン、君も僕のことを女の子扱いするわけ……?」

「そういうんじゃないけど、何となく妙に的を射てて……キラってドレス着せたら似合いそうだし……」

 くすくす笑い続けるモニター越しの彼を睨む。

「……じゃあ、今度ラクスさんから借りて着てみようかな?
 彼女はアイドルなんでしょ、ドレスもいっぱい持ってそうだし。ねぇ?

「な、そんなのはラクスが許しても、俺が許さんからなっ!」

 一変して焦りの表情になったアスランに、僕は吹き出す。

「冗談に決まってるでしょ。僕は男なんだから、ドレスなんて着るわけないじゃない。
 ……ねぇ、アスラン。お願いだからストライクを放して」

「……キラ……」

「アスランは言ったよね。の気持ちがわかるから僕を返せないって。
 でも、は命令とはいえストライクを連れ戻しにきた。だったら、君はどうしたいの?
 このまま僕を渡さないで、その結果君に何かあったら、は悲しむよ」

「……わかった……この場は引く……。だが、今度会ったときは敵だ。手加減はしない」

「わかってるよ……僕もそうするから……ありがとう、アスラン」

 イージスの手がゆっくりとストライクから離れる。

「アスランさんッ?」

も、俺たちのことを心配してくれてありがとう。でも、これは俺たち2人が望んだ答えだから」

「……わかり……ました……」





 本当にこれでいいのかわからない。
 それでも当事者同志が決めたのなら、こちらがとやかく言う問題ではないこともわかる。
 私はを操ってストライクを背中に負って、スカイグラスパーと共にその場を離れた。



黒マント製作機から
 自分が踏み石になることで避けられる戦いがあるなら、私は迷わずその道を選ぶ。−by:ヒロイン
 離れたくないから、誰よりも好きだから、僕が守る。−by:キラ

 ってな感じです、今は。


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