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小島から戻り、艦長さんたちに囲まれて報告を済ませて。 艦長室を後にして歩き始めた私は、後ろから飛びつかれた。 「お帰り、お帰り!」 「ただいま、ミリィ」 体の位置を変えると、彼女はワッと泣きついてきた。私はその背中を軽く叩いてあやしてやる。 「そうやってると、どちらが年上かわからないな」 くすくすと笑いながら現れたカレッジの先輩たちとクラスメート1名。 「いいじゃないの、本気で心配してたんだから!」 サイ先輩の言葉に反応したミリィが私の首にひっついたままで言い返す。 「ごめんなさい、本当に心配かけてしまいましたよね」 「まったくよ。これで私の頭が白髪のおばーちゃんになったらどう責任とってくれるの?」 「えーっと……とりあえず白髪染めを月1ダースずつ送るってことでどうでしょうか……」 おずおずと言った答えに、半瞬後、笑いが巻き起こる。 「え? え? 私何か変なこと言いましたっ?」 「さいこーッ、今の見事な返しじゃん」 「まさか、その答えが返ってくるとは思わなかったなぁ」 「ね、ね。それってマジメな答え?」 「……この子天然だから……で、本当に大丈夫なの?」 「大丈夫ですよ。皆さん優しかったですし」 「そっか〜、そういえばってあっちのパイロットと知り合いなんだっけか」 「襲われなかったの?」 「もう、カズイ先輩まで何を言いだすんですか……」 「カズイまでって……同じこと聞かれたのかい?」 「フラガ少佐に言われました。……ある意味セクハラ発言ですよ、それ」 「ご、ごめん」 「別に怒ってませんってば」 くすりと笑ったら、なぜか頬を赤らめるカズイ先輩。 「皆さん、私のこと妹扱いしてくれてますし、そんな関係にはなりませんよ。 それにコーディネイターには婚姻統制がありますしね」 「それって確か、種を残すために対の遺伝子をもつ人間とじゃないと結婚できないんだっけ?」 「まぁ簡単に言えばそうですね。 ……私の場合、遺伝子があの人たちの誰とも対をなさなかったので警戒されなくてすんだんです。 そうでなきゃ、単身でやってきた子供の身柄を引き受けてくれるはずがないじゃないですか」 「……でもそれって……妊娠の危険性が少ないから、誰とでもデキるってことじゃないの?」 呟かれた一言が、その場の空気を一気に下げた。 「フレイ、お前は何てこと言うんだよ!」 「だってそうじゃない。コーディネイターって妊娠の可能性が低いんでしょ? ミリアリアも気をつけなさいよ、気がついたらあんたの彼氏が寝取られてたなんてことにならないようにね」 「はそんなことしないわ!」 「そんなことわからないわよ。 何てったってトールがパイロットに志願したのだって、皆を助けたいなんて言ってたけど。 実は助けたいのはだけじゃ……」 「いい加減に黙れ、そしてミリィとトール先輩に謝れ」 「な、何よ何よ、本当のことを言って何……きゃっ!」 我慢できなかった。俺はすぐさまこいつをAAから叩き出してやりたい感情に襲われる。が、なんとか踏み止どまって、平手打ちにとどめた。 「前に言わなかったか? 『俺以外を傷つける発言や行動をしたときは容赦しない』と」 「そんなの覚えてないわ! 私は思ったことを言っただけだもの」 「ガキ……だな。自分の意見がすべて正しいと思ってる、典型的な、我儘なお子様。 ある意味、わかりやすくて単純」 怒りに髪の色が伝染したんじゃないかと思うくらいに、目の前の彼女の顔は真っ赤で。 「あんたなんか、あんたなんか死んじゃえばいいのよ!」 「じゃあ、お嬢ちゃんが殺してみるか?」 背後からの声。振り向くと、ひらひらと手を振るムウ兄、その後ろに艦長さんと副艦長さん。レガール兄もいる。 「な、なんで私がっ……」 「さっきの会話、ここにいる俺たちも聞いてたぜ。……少尉が死ねばいいと思ってるんだろ? それじゃあ、誰かの力を当てにしないで自分でやってみろよ」 「フラガ少佐……ッ……」 声を上げたのは艦長さん。さすがに慌てるだろうなぁ……。 「お嬢ちゃんの嫌いなコーディネイターを減らすためにさ。それがお嬢ちゃんの志願理由でもあったわけだし」 「確かにそうとれる発言を私は聞きましたが。それでも、アルスター二等兵は訓練も何も受けておらず……」 「あ、その点忘れてたなぁ……」 ポリポリと頭を掻くムウ兄に、私は苦笑する。 「なに、ハンデを与えればいいさ。アルスター二等兵にはアーミーナイフを持たせて、本気で行かせればいい。 対する少尉は両手を固定して、両手足首に重り付きってのはどうだ?」 「いいですよ、それでも」 「な!」 あっさり答えた私に、レガール兄とムウ兄、そしてフレイ嬢以外が声を上げた。 「それじゃあ余りにも差がありすぎじゃない!」 「ありすぎだからいいんですよ。これで負けたら、文句は言わせません。 フレイ嬢にはちゃんと、ミリィたちに謝ってもらいます」 「いいわよ。約束守ってあげようじゃないの。そのかわり、私は本気で殺すつもりで行くからね」 「手加減は結構です。そっちの方が私もやりやすいですし」 「……と言うわけで艦長?」 「わ、私は反対です!」 「それはできないわね。……あの子たちすっかりやる気だもの……。 いいわ、MSデッキの使用許可を与えます」 ![]() 黒マント製作機から キラとヒロインの会話にするつもりが……あれ? ムウさんは下手にわだかまりを持たせておくより、ここらではっきりさせたかったよーです。 To NEXT |