「敵影4、5時方向、距離3000!」



「……ついに、この時が……」

 やってきたキラ先輩がストライクに乗り込むのを待っていたかのように、ブリッジから入ってきた敵襲報告と第一戦闘配備への移行。
 ヘルメットの中の額に、手袋をしている手のひらに汗がにじむ。
 彼に告げたように、アラスカの制空圏まであとわずか。その分、ザフトもこちらを逃がすまいと必死になってくるだろう。……彼らは正規の軍人だ。私情に流されて相手を撃つのをためらう、そんなことはないだろう。だからオーブで彼らなりのケジメをつけて、私を見送ってくれた。

 答えよう――。
 今持てるだけの力をぶつけて、AAを守り抜く。無事にアラスカにたどり着かせてみせる。

 答えよう――。
 手加減なんかなしにして、一介の軍人として敵を討って見せよう。

 それが今の私に望まれていること、求められていること、できること。

、出ます!』

 先に飛び出したストライクを追って、私はを発進させた。








「アンチビーム爆雷用意! ウォンバット装填! イーゲルシュテルン起動!」

 ナタルの声とともに次々と目覚め始めたAAの兵器システムは、四方の敵をめがけ攻撃を開始する。
 ムウのスカイグラスパーがバスターのもとへと飛び立ち、艦の前後にストライクと。そして回りを飛び交う、グゥルに乗ったイージス・デュエル・ブリッツの3機。
 その陣形はまるで先日の戦闘を引き続かせているようにも思えた。

 グゥルから飛び離れたブリッツ、その姿がふっと消える。それがミラージュコロイドのせいだとわかっていても、視認できないため、クルーたちは対応ができない。それをあざ笑うかのように、ランサーダートの1本がAAに突きたてられる。

「しまったっ!」

 イージスに気を取られていたが振り返ったとき、既にブリッツはグゥルへと戻っていた。


「イーゲルシュテルン4番、5番、使用不能!」

「ヘルダート隔壁閉鎖!」


 ブリッジの声がCICを通して、ストライクとに届く。


「今日こそ堕としてやるッ!」

 デュエルのサーベルが向かい。寸でのところで逃れたストライクは、飛び上がった勢いのまま機体をグゥルから海へと蹴り落とす。

「イザーク!」

 イージスが手を伸ばしたが間に合わず、青い水面に吸い込まれていく青い機体。

「とりあえず1体……」

「まだです! 今のキラ先輩の攻撃では単なる時間稼ぎです! 確実に動きを止めなくては……」

 の構えたロッドから放たれたビームが、水面から覗いたデュエルのメインカメラがある頭部、そして両肩を打ち抜く。



「仕方ありません、イザークは撤退してください!」

「何だと、俺はまだ!」

「戻れ! 満足に動けない奴は邪魔だ!」

「……ぐっ……」

 確かにアスランの意見は正論。しかし、いつもの彼からは考えられない口調。デュエルはようやっとの体でグゥルに乗り戦闘空域を離れた。



「ちょっとの間、ストライクはブリッツを頼みます!」

 返答を待たずにバーニアで飛び上がったは、スキュラを放とうとしたイージスに飛びかかる。咄嗟にMAからMSへと変形を余儀なくされた赤い機体は、濃紺の機体の背中に頭部のイーゲルシュテルンを浴びせた。その衝撃から体勢を崩し、AA看板に叩き付けられる

「きゃあっ!」

 コックピットを襲った衝撃は、ベルトで固定されているはずのの意識を一瞬飛ばす。
 その隙を付いたイージスは再びMAへと変形。


「面舵ーっ!!!!!」

 中心に集まるエネルギーにマリューが叫び、ノイマンが必死でそれに従った。
 よろめきながら立ち上がったを、ストライクが抱えて横に跳び。
 スキュラの一撃はブリッジを直撃しななかったものの、AA左舷・バリアントを貫いて爆発する。その爆発はブリッジ内のコンソールをショートさせ、小爆発はクルーの悲鳴を引き出した。


「守らなきゃッ……!」

 ストライクの手を振りほどくようにして立ち上がったは、今度はブリッツのグゥルに飛び乗った。

「あと少しなのにっ……いい加減にしてよねッ!」

 勢いよく飛び上がったストライクは、イージスの腰にしがみついた。


「姿勢制御不能!」

「揚力低下、高度維持できません!」

「姿勢制御を優先して!」

「落ち着け、緊急パワーを補助レジエーターに繋げ!」

 ブリッジ内でいくら頑張ってみてはいても、左舷から黒煙を上げるAAの白亜の機体は徐々に海面に近付いていく。

「本部からの連絡は!?」

「やってますけど、何も帰ってきませんヨォ!」

 苛立ちを含ませたレガールの声に、泣きそうな顔でこたえるカズイ。

「本部は我々に死ねというのですか!」

 さすがのナタルでさえも、この状況に救援1つよこさない彼らに苛立ち、声を上げた。

「艦長、スカイグラスパーで出ます!」

 コパイロット席から立ち上がった彼に、皆の視線が集中する。

「このままじゃ危ないですよっ……!」

 インカムをむしりとったトールは、ブリッジを走り出ていく。

「整備班! そちらにケーニヒ二等兵が向かった。しかしスカイグラスパーには乗せるな!
 この混戦状態で出たら無駄死にするだけだ!」

 通話ボタンを叩きつけて、レガールはマイクに怒鳴る。

『心配しなくても大丈夫。あの坊主は出られませんよ』

 他が慌しく走り回っているというのに、通信に出てきたマードックは普段どおりの落ち着きを見せ、肩をすくめた。

「どういうこと?」

 思わず聞き返したのはマリュー。

『出撃前、の嬢ちゃんがスカイグラスラスパーのOSに3重のロックを掛けていったんでさぁ。
 何でこんなことするんだって聞いたら、CICのお嬢ちゃんを泣かせたくないからって』

『…………何だよこれーッ!!』

 説明している向こうから、爆発音の間を縫うようにしてトールの絶叫がブリッジに届いた。
 それは、あまりといえばあまりにもお約束な反応。期待を裏切らない行動に出た彼に対して、緊迫しているクルー一同は失笑を噛み堪えた。

「……、キラ。2人とも無事に帰ってきてね……」

 ミリアリアはそっと、自分のパネルの上で指を組んで祈りを捧げた。



黒マント製作機から
 おおぅ、予定の半分も行かなかったじゃないか。
 ヒロインがトールを出撃させないためにスカイグラスパーのOSにロックを掛けるということは、最初から考えていたことです。
 バスターとスカイグラスパー1号機、現在無視されまくってます。
 次の話で、ディアッカ投降までいけるかな?


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