「……なんで、どうして僕たちを頬って置いてくれないのっ!」

 イージスの腰にしがみついたまま、ストライクは通信を試みた。

「前にも言っただろう! お前と俺は敵なんだ、今の俺はザフトの軍人で、足付きを堕とすのが今の使命なんだ。
 堕としたくないというなら、お前も地球連合軍のMSパイロットとして全力で向かって来い!」

「僕は軍人じゃない!!!!」

「そんなものに乗って戦ってる奴が民間人なわけないだろう!」

 とうとう解かれた腕。ストライクはAAの着艦コースから外れ、近くの小島へと落下していく。



「キラ!」

 何とかブリッツの背後を取ってロッドで頭部を羽交い絞めにしていたは、落ちていくストライクに気が付いて叫んでいた。

「戦いの最中に余所見は命取りだって、僕は教えましたよけどね!」

「何回も吹っ飛ばされましたから、ちゃんと覚えてますよ!
 だから、もうブリッツは動けないようにしてあります」

「え?」

 言われて始めて気が付いたのか。
 ブチィッと鳴った音に、コックピットに鳴り響く警告音。慌てたニコルがその部位を確認すると、のビームが掠めたときに剥き出しになっていた数本のケーブル。それが引き千切られたのだと気が付いたときには、ニコルが操縦レバーを押しても引いてもブリッツは動かなくなっていた。

「……あーあ、やられちゃいましたか。これで144戦72勝72敗ってことですか」

「ふふっ、イザークさんと違って、相変わらずニコルは負けを認めるのが早いね」

「でも、73勝は先にいただきますよ?」

 ブリッツごとAAに降りたは、そのままMSデッキへと運ぶ。



「敵兵を許可なく連れてくるとは何事だ!」

 ブリッジからの通信は彼女の予想範囲で。

「大丈夫です、彼はもう何もしませんよ。……それよりも、の補給お願いします。
 落ちていったストライクを助けに行かなきゃいけないですし」

 あっさりと言い返された言葉に、言葉を発したナタルは苦虫を噛み潰す。

少尉、あなたも見ていたでしょう。今のAAは爆破区域の消火活動だけで手一杯なの」

「だからって! このままストライクを見捨てろと?」

「そういうんじゃない。補給はセルフでってことだ」

「わかりました。……それじゃ、ニコル。手伝ってくれる?」

「もちろん」

 聞こえてきた声はブリッツからのもの。柔らかなまだ少年とおぼしき声に驚くブリッジクルー達。

「じゃ、こっちは私とニコルで何とかしますから、AAは前へ進んでください!」

 、そしてブリッツのコックピットが開かれ、彼と彼女はすぐさま作業に入った。





「姿勢制御不能! これ以上は……」

 ノイマンの悲痛なほどの叫び混じりの報告。
 傷ついたエンジンを、艦体を、必死でなだめすかしながらも、AAの高度が落ちていく。
 青い海原が、白い砂浜がどんどん近くなっていく。

「総員、着底に備えろよ! 吹っ飛ばされても責任はもてないぞ!」

 レガールの全艦放送にブリッジクルーも、各部署にいた整備員達も、ようやっと2機をメンテナンスベッドに固定し終えたとニコルも、手近にあったものへとしがみつく。
 眼前に迫っていた島の砂浜をめがけるようにして、白亜の艦はやや左に傾きながら突っ込んだ。
 浜の砂に大きな溝をえぐり、その後には海水が流れ込む。緑の木々を薙ぎ倒し、色鮮やかに咲き誇っていた花々を散らせて舞い上がらせながら、ようやくその巨体は動きを止めた。





「もらったァ!」

 何とかスカイグラスパーを振り切って飛んできたグゥル。それに乗るバスターの眼下には、動きを止めた追い求めてきた白い獲物の姿。
 ブリッジと対面する位置に機体を移動させ、両脇で固めた銃を前に向ける。それまではいつもと、今までと同じ。
 だが、モニターに映ったAAブリッジの様子を見て、ディアッカはトリガーを引くことをためらわれた。

「……兄貴がいるって……言ってたよな……」

 将校というくらいだから、白い服のうちの誰かだろう。それが誰であるかはわからないが。
 中央の艦長席にいた栗色の髪の女性が、恐怖に引きつった顔でこちらを見ている。周りにいる奴ら、自分とそんなに代わらない年齢の少女も、今にも泣き出しそうな顔で。その顔に知った顔が重なる。

「ここで撃っちまったら、に殺されるかもな、俺……」

 知らず知らずにもれる小さな苦笑。

「やらせるかぁぁぁぁァ!」

「何ッ!」

 うっかり失念していたスカイグラスパー。飛び込んできたそれにグゥルを打ち抜かれ、バスターは咄嗟に飛び上がって爆発によるダメージを避ける。
 すれ違いざまに発射されたバスターの装甲散弾砲がスカイグラスパーの左翼を打ち抜き、スカイグラスパーのアグニがバスターの右腕を吹き飛ばす。
 ブリッジでその様子を見守っていたマリューは、ふらふらと飛んだスカイグラスパーが爆発もせずに着陸したことに胸をなでおろした。

「ゴッドフリート、照準!」

 いつもなら半分の時間で達するそれも、ボロボロの機体ではエネルギー臨界点まで達しない。

「……待て!」

 前にうな垂れたままのバスター、そこから這い出てきたのは赤いパイロットスーツの少年。

「投降する気か?!」

 困惑気味に上げられたナタルの声は、その場一同の気持ちを代弁していた。



黒マント製作機から
 やっとここまでっ……。戦闘シーンは苦手です、本当。


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