添付資料(2):DS-CDMA の考え方

〜感覚的?に概念を理解するために〜


 ここでは、無線を趣味とするものですら、非常に解りづらい感のある DS-CDMA、(Direct sequence-Code Division Multiple Access) 直接拡散方式による、多元接続(多重化)の概念について、なるべく平易な記述に努めて、製作しました。少しでも、みなさんの理解に役立つことができれば幸いです。


  抽象的な考え方

 ここでは、多少正確さを欠くことを覚悟で、よりわかりやすい解説を目指してみます。本文中での解説でも簡単に述べましたが、やはりスペクトラム拡散のうち、直接拡散方式については、非常に解りづらいという意見を多くいただきました。

 そこで、こう考えてはいかがでしょう?。雑踏などで、親しい友人や彼女と話をしている場面を、思い浮かべてください。カンのいい方は、もうおわかりでしょう。音響においての、カクテル・パーティー現象と似た考え方です。

 ここでは次の条件のもとに解説をすすめます。


友人もしくは彼女の声の特徴≒拡散コード
      雑踏と他人の声雑音とマルチユーザー干渉
       可聴音声帯域cdmaOneの無線帯域(1.25MHz)
他人と相手の声が混ざること拡散
     人間の耳の選択性逆拡散


 騒がしい場所、どこでもかまいませんが例えば、レストランやバーで周りが騒がしくても、親しい相手の声を識別し聞き取ることができるのは、相手の声がどういう特徴を持つかを、(音響的なスペクトラム特性)あらかじめ知っているからです。

 つまり、相手がどういう声(拡散コード)なのか、予めわかっているので、それが雑音や他人の声に混じっていても、分離(逆拡散)し聞き取ることができるわけです。厳密に言えば、意味は違いますがだいたいこんな感じです。

 それにしてもこう考えると、人間の耳は音声を波形ではなく、スペクトラム領域で処理するので、実に優秀ですね(その動作自体、極めて分解能の高いスペアナと見なせる)。どうりで音声認識が、機械には難しいわけです(えっ?、DS-CDMA とは関係ないって?)。
 もちろん、実際にはカクテル・パーティー現象は、相手の声を聞き取るにあたって、言葉の冗長性(前後のつながりなど)も活用されているので、これだけが全てではありません(^_^;)。

 また、実際の DS-CDMA においては雑踏ならともかく、静かな場所(一組だけの通話など)があったとしても、拡散コードを知らなければ通信は全くできません。黙っていても、近づけば聞こえてくる音声での会話とは違います。

 この解説はあくまで複数ユーザーが、同じ無線帯域を共有することの、概念的な例えにすぎませんので、十分に留意してくださいm(_ _)m。




  拡散と逆拡散・そのイメージのつかみ方

 さらに、スペクトラム拡散で最も特徴的かつ難解?な、「拡散と逆拡散」についての解説をより解りやすくしてみたいと思います。

 まず下図をご覧下さい。



 スペクトラム拡散において、最も理解しづらいのが拡散、及び逆拡散のプロセスではないでしょうか。図を見ていただければ、おおよそのイメージはつかめると思って書いてみたのですが、いかがでしょうか?(^_^;)。

 ここで言う「チップ」とは、情報を載せたスペクトラムのかけらの様なもの、と思ってください。これをある規則(拡散コード)に従い、帯域幅(コンベアの幅)いっぱいに並べるのが、拡散です。

 そして、拡散符号は周期を持っていますから、必ず同じパターンで繰り返す形になります。それが、コンベア上に並んだチップの配列パターンになります。そして、チップ速度というのが拡散後の帯域幅とほぼ等しく、チップ数というのが拡散符号のパターン数となります。

 図では、チップの並び方として表していますが、この並べ方が固有の拡散コードになるわけです。識別しやすいよう、目的のチップだけを黒丸として表していますが、実際にはどれも似たような感じに見えます。

 さらにそれを分離するのが、逆拡散です。これには全てのチップが見渡せ、しかも拡散パターンに応じた、スリット設けてある板を使います(マッチドフィルタ)。
 このため、拡散符号の周期に同期して(全目的チップが見えたとき=同期)、信号を読み出しこれを順番通り並べ替えれば、元のデータを復元(逆拡散)できるというわけです。

 そしてそのチップには、メッセージ(送信データ)の断片がちりばめられており、逆拡散して初めて、その意味が判明する(一次変調波が復元される)、ということになります。

 いかがでしょうか?。これで多少は、全体的なイメージがつかめたのではないかと思います。またなにか、ご質問などがあればあれば掲示板でどうぞ。