添付資料:セクター化による容量増
 

  セクター化とは?

 ここでは、cdmaOne のセクタ化による容量増の解説を掲載しています。移動電話において、セクタ化は高トラフィックに対応するため、PDC 方式でも行われています。通常、無線基地局は 1 局で 360゜をカバーするわけですが、これを 120゜ごと 3 セクタ(IDO cdmaOne)や、60゜ごと 6 セクタ等にわけて運用するのが、セクター化です。
 各セクターでは、有限の無線Ch(もしくは通話Ch)などを動的に割り当てることができます。これにより、高トラフィック時にトラフィックの集中するセクタへの、効率の良い通話Chの割り当てと、運用が可能となるのです。
 cdmaOne では DS-CDMA(直接拡散)方式のため、PDC 方式とは違った容量計算のしかたが必要になってきます。既述のとおり、cdmaOne では他のユーザーなどからの、干渉の総量で通話容量がきまる特性があるので、セクター化は容量増のために積極的に用いられています(クアルコム社のセールストークにも良く出てくる)。

  遠近問題
 ここでは、その容量増の概念を図解で解説したいと思います。それにはまず、この方式で特徴的な、遠近問題を理解する必要があります。右図をご覧ください。
 これは、あるセルでのマルチユーザー干渉を示しています。A〜C のユーザーは自セル内、D のユーザーは隣接セル干渉となるユーザーを示します。

 DS-CDMA では、全てのユーザーが同じ無線帯域を使用するため、例えばユーザー A の信号は、距離が近いため B〜D よりも遙かに強くなってしまい、A 以外の他ユーザーの信号がこの、大きな干渉によって受信できなくなるという現象が発生します。
 これが遠近問題といわれ、この方式に特徴的な問題です。これを解決するために、TPC(パワーコントロール)というものが採用され、基地局側で各ユーザーの受信レベルが一定になるように、下り信号を使って各ユーザーの端末に、送信電力絞るよう働きかけるのです(逆に距離が離れて弱すぎるときは、電力アップを指示)。

 これにより、基地局側での受信レベルはほぼ一定となり、各ユーザーの信号を分離、受信できるというわけです。これは、クアルコム社の特許で cdmaOne では毎秒 800 回パワーコントロールを行っています。
 しかし、厳密にはパワーコントロールは完全ではなく、数々の原因により変動がもたらされます。この不完全なパワーコントロール下における、1セルあたりのユーザー容量の算出式を、本章では示しました。
 

  容量増の秘訣は?
 では、これらをふまえた上でなぜセクタ化によって、容量増が図れるのかを以下に示します。まず、右図をご覧ください。これは 3 セクタ時の各アンテナの、指向性を示しています。アンテナには電力半値角となる、(指向性特性のキレは比較的緩い曲線になるため)指向性面以外にも感度を持っています。
 例えば、3 セクタでは 120゜の指向性があるアンテナを、3 面用いることで 360゜をカバーしています。しかし、この指向性特性の問題のためセクタ間に、セクタ重なりが発生するのです。
 セクター化することは、セクタ化の分だけ基地局を方位ごとに、独立動作させることに近くなっていきます。そして、各セクタで同じ周波数を使用していても、他セクタのユーザー干渉が無視できるほど、小さくできればいいわけです。
 また、セクタ数を増やすことにより、さらに容量増が図れることになります。cdmaOne の標準では、6 セクタとなっていますが関東などでは、3 セクタです。
 これらの理由により、容量増が可能なのですが、先のセクタ重なりの問題のため、単純には容量アップしないのです。
 そのため、本章で記述した数式のように、セクタ重なり(変数 V)を考慮して容量増を計算する必要があるのです。