ジェノバ刑事(……続き)
語り…兎野るいこ様
さて、サンプラザホールを前に、「やっとたどり着いた・・・」という感慨深い想いにふけるヴィンセント。
気が付けば、開演時間も迫っています。
ここまでくればいくらなんでも迷うことはないでしょう、安心した気持ちでシャツのポケットに入れてあるチケットを・・・・・
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・ない」
んもう、お約束の展開すぎて嫌になりますね、この男は。
「ない、ない、ない・・・・」 入り口の前で、はたから見ると健康体操をしているように、あっちを探り、こっちを探り、もしかして背中
についてたりなんてことは・・・と後ろを振り返ったりするヴィン。
しかしないものはない。
ないはずのものを出すなんてことは、デビッド・カッパーフィールドに頼んでほしい
ものでつむらいりゅーじょん。
でもデビッドに頼むと、あるはずのものもなくなっちゃうから要注意。
「ない・・・・・」
思わず涙目になるヴィンセントに
「どうした、おい」
振り返ると、白馬に乗った王子様・・・・・ではなく、さっきのぶっきらぼうですが意外に親切、でもお疲れ度
100なおじさま・・・(というにはちょっと若いか)が立っていました。
「あ、さっきの・・・・ あの、さきほどはきちんとしたお礼も申し上げず・・・」
涙目になっても礼儀は忘れないヴィンちゃん。
「そんなんは別に構わねえが・・・ 何、泣いてんだ、おまえ」
「え・・・ あの、あの、実はどうやらチケットを落としてしまったようで・・・」
シドは思わずその場に座り込みそうになりました。
(なああああああんっっっって予想を裏切らない奴なんだ、こいつわ〜〜〜〜)
目的の建物を目の前にして道を聞いたかと思えば、今度はチケットを落としただと〜〜〜〜?
「しかし・・・・これも・・・・縁がなかったと思って・・・・
あきらめようかと・・・・」
下を向いてぽそぽそとそう語られると、ぶつぶつ言いながらも刑事をやってるような男の琴線に触れない何か
がないわけありません。
「・・・・ったくッ!!こっち来い!」
ヴィンセントの腕をつかむと、ずかずかとホールに入っていきます。
「あ、あの・・・チケットが・・・・」
「いいからついて来いっ!!」
受付のところへ行くと、なにやら話しています。
そしてそこで待つこと5分。
「いや、お久しぶり」
どうやらシドの知り合いらしき人間が現れました。
「すまねえな、リーブ。忙しいところ。実は今日の催しなんだか、席あまってねーか?」
「席ですか?今日は満席になりよってねえ」
意外なことに人気があるようです、狩人。
(ということにいつからなったのか。)
「すみっこでいいからよ。こいつが・・・」
後ろを指さすシド。10歩くらい下がった後ろで、ヴィンちゃんがおどおどしてます。
「ほう、これは美人さんで・・・ あ、そーですか、そーいうことですか〜」
なるほど〜〜とうなずくリーブに、シド大慌て。
「ばっ・・・何言ってやがる、そんなんじゃなくてだな!」
「いいんですよ〜、照れずとも。シドさんもヤモメ暮らしかと思えば・・・
いやいや、じゃあ席、2つ用意しま しょう」
「だから、俺はだな」
帰って寝たい、というのを皆まで聞かず、リーブは近くのスタッフにさっさ指示しちゃいました。
どうやら 支配人かなんかのようです。いまさらですが。
というわけで、シドも狩人のコンサートにつき合うことになってしまいました。
わたくし、狩人のコンサートに行ったことがございませんので、臨場感あふれるレポートは書けませんゆえ、
コンサートの模様は割愛いたします。
ファンの方、ごめんなさい。(いないか。いやわからん)
さて。
「今日は・・・本当に何から何までお世話に・・・・」
頭を下げるヴィンに
「気にすんな」
あくびをしながらシドが答えます。
疲れた身体にムチうって戻って、予想通りにどつぼにはまったヴィンを救助できたのは目的としては達成ですが、達成のあかつきには早く寝かせてくれ・・・という気持ちです。
夜勤あけから人手が足りなくてうっかりそのまま聞き込みに行って、さらにボランティアでヴィンの面倒まで
見てるんですから、公僕の鏡。
「何かお礼を・・・」
「いらねえよ、そんなもん」
「しかしそれでは・・・」
「いいからいいから。帰って寝るからよ、俺は」
「あ・・・ お、お疲れのところをどうも・・・
このお礼はまた改めて・・・」
「いいって。じゃあな」
そう言うと、背を向けて、シドは雑踏に消えて行きました。
見返りを求めない。どこかのだれかさんとは大違いです。
「なんていい人なんだろう・・・・。あんな人がいるなら、まだ日本も捨てたものではないな」
・・・・シド、外人のような気もしますが。おまけにヴィンも。しかもあんたに日本の未来を慮ってもらっても。
切符を買って、電車に乗って(どこに帰るんでしょう、彼。門前仲町。今そう決めた。)
それからハッと気がつきました・・・。
「そういえば・・・・ どこの、誰さんだったのだろう・・・・」
・・・・・・・・大馬鹿野郎。
「・・・というわけで、あんなにお世話になっておきながら、お礼もできず、その節は大変失礼いたしました・・・」
深々と頭を下げるヴィンセント。
「ま、いいから。そんなに気にすんな」
ヴィンのぼけっぷりをすばやく見抜いていたシドとしては、もとより期待などしておりません。
返す返すもどこかの誰かとは大違い。
「・・・・・・・・・で、昔話は終わったか?」
どこかの誰か、たいそうご立腹のようです。あ、こっち見た。
「いいか、たらたらたらたら余計な話を振ってないで、さっさとやることやって終わらせろ!」
「・・・・・誰にしゃべってんだ、おまえ」
「気にするな、業務連絡だ」
業務連絡、承りました。それでは、今から緊急連絡。
アタシぃ、今ヴィン受総合サイト作ってるしぃ、せひびんもぉ好きだけどぉ、しどびんとかくらびんとか
ざくびんとかもいなあって思うしぃ。
だから、今から、ダービー・ヴィンセント杯。け〜いば〜け〜いば〜うつくし〜い〜♪
全馬、スタートラインに立ちました!
「ちょっと待て。じゃあ今までの前振りはなんだ!」
「・・・・だから、誰としゃべってんだよ、おまえ」
「誰でもいいっ!!それならそれで、さっさと取り調べるだけだっ!」
ヴィンセントの肩をひっつかむと、強引に連れ去ろうとします。
「ちょっと待て。そいつはいったい何をやらかしたんだ?」
「何だっていいだろう!おまえには関係ない!」
ジェノバ刑事、マジギレ。
「待てよ、そいつはとろとろにどんくさくて、とてもじゃないが、犯罪が出来るような心臓もセンスもねえぞ!」
うーん、これって褒めてる?
「そんなもん、これから取り調べる!車両盗難と大麻所持だ!」
「大麻はともかく、車両盗難はうちの管轄だろーが。48時間はここに拘束できるはずだ」
「その辺の事情は長芋みたいな前髪の女に聞け!」
自分だって白菜前髪のくせに。
「なにい?!!」
私が言ったんじゃありません、津野さんです。
「だから誰としゃべってるんだっての」
いちいちつっこむシドも結構マメ。
ひきずられるように、ヴィンとセフィロスが部屋を出ようとしたその時。
「・・・ったく、結局そーゆー奴だったってことかあ?」
シドの言葉に、ヴィンが振り返ります。
「え・・・」
「おとなしそうな顔して、車盗んで大麻も持ってたとはなあ。ち、だまされたぜ」
ヴィンの顔がみるみる悲し気になっていきます。
「ち、違う、私は・・・・」
「何が違うんだよ」
シドはずかずかと近寄ると、ヴィンちゃんのあごを掴んで上げました。
「助けるんじゃなかったぜ、おまえなんか」
「そんな・・・・」
さすがのとろいヴィンの脳でも侮辱細胞(そんなのあるか)が、うごうごと動き出します。
「他にもとんでもねーことやってんじゃないのか?このきれーな顔でたぶらかしてよ」
・・・・ばし! シドの頬が鳴りました。
といっても、あまり力に自信のないヴィンのこと、実際は「ぺし」くらいだったかも
しれませんが。
「殴ったな」 シドがにやりと笑います。
「おい、見てたか、クラウド!」
「え?え?え?は、はい・・・・」
なんていいタイミングでしょう、本庁へ帰るセフィロスの車をまわしてきたことを伝えるために、丁度その場へ
やってきてしまったクラウド。
「よーし、おまえが証人だ」
かわいそうなクラウド。これでセフィににらまれること大決定。
「職務質問中の刑事に対する暴行。公務執行妨害で逮捕する」
「えっ?えっ???」
がしゃん。手錠がかけられてしまいました。
「認めんぞ、そんな不当逮捕は!!」
セフィロス、あんたに不当とか言われたくありません。
「っても、実際殴られたしなあ、俺。なあ、クラウド」
クラウド、うなず・・・いていいものかどうか。
「私も見てたわあ。痛そう、シド〜」
ミニスカポリス、ティファも登場で肩を持ちます。
セフィロス、女性にはぜんぜん人望ありません。
「起訴するまで48時間はここで拘留だ。来い」
ヴィンの手をひっぱって出てゆくシド。
「・・・所轄の好きにはさせんぞ」
その背中に、セフィロスの呪いが響きます。
「悪かったな」
遠くの廊下のすみで、シドはそう謝って手錠をはずしました。
「あの・・・」
「あれしか方法がなかったからよ。すまんな」
「いえ・・・・ あの・・・ シドさんが刑事だった・・・とは」
「・・・・・・・・」
思わずヴィンセントを見つめるシド。
ナイスボケすぎて、つっこみも返せません。
「私のせいで、また寝るのが遅くなって申し訳ない・・・・」
「・・・・おまえ、それ、わざとか?・・・じゃねーんだろうなあ、おまえの場合」
「?」
「とにかく!おまえが車両盗難だのヤクだのができるわけねえと思ってるよ。
俺がおまえの無実を証明してやるから」
「シドさん・・・」
「シドでいいやい。ま、今夜は疲れてるだろうから、仮眠室で少し休め」
じわ。この場できゅうううんとこない奴がいるでしょうか。いや、いまい。(反語)
シド、スタートの立ちあがりは荒っぽかったですが、確実に一馬身リード。
さあ、どう追いかける、ジェノバ号。
ちなみにこのレース、大穴はザックスでしょうか。どこいっちゃったんだ、彼。
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さて、仮眠室。
地下にあります。よかったですね、ヴィン。棺桶はないけど。あったら葬儀屋。
ここは警察屋さんです。
「じゃあ、これ、毛布と枕」
クラウドが手渡します。そして、もう一組持ってくると、一緒に鉄格子の中へ入りました。
「こんなところ、一人じゃ心細いと思うから・・・」
その意図はなんだ、クラウド。
シドにくっついて行って、明らかにセフィロスの印象を悪くするわけにもいかず、かと言ってあからさまにセフィロスの肩を持つのは、所轄署での立場も悪くなります。
しかたないので、地下に逃げて来たということでしょうか。
こういうのを逃避行動といいます。
ソルジャーになれないのも刑事に昇格できないのも、その辺が原因だ、クラウド。
逃げちゃだめだ逃げちゃだめだ。
こういうタイプは2年くらい前の流行りだったんでしょうか、クラウドシンジ君関口巽。
それはともかく、クラウドの言葉に、素直なヴィンセントは恐縮しております。
「何か・・・皆さんにご迷惑を・・・ 何もしてなくても迷惑をかけてしまう、これも私の罪・・・
・・・寝よう」
「は?」
「罪」と「寝よう」が彼の中ではなぜか順接で結ばれていることなど知る由もないクラウドは、一瞬疑問符が飛び出たものの、
「そうだね。寝ちゃえば、やなこと忘れられるよね」
と、やなことは忘れた過去のある自分の経験に照らして答えました。
ヴィンセントはもそもそと毛布にもぐりこむと、目を閉じます。
その様子を見つめるクラウド。
(・・・こうやって改めて見ると、すごいキレイな人だなあ。細いし、美人だし、守ってあげたくなるような・・)
湾岸署には、ワイルドキャット・エアリスだとか、ミニスカポリス・ティファだとか、夜遊びして補導されて来る
コギャルなユフィだとか、あんまり守ってあげたくなるようなタイプでなく、なんか守ってくれそうな女子ばかり見慣れているため、か細く頼りなさそうなヴィンセントは、性別が男でも、クラウドにはたいそう新鮮でした。
そう意識した瞬間。
(こんな、こんなキレイで頼りない人が、麻薬を売ったり買ったりしてるわけないっ!)
・・・オイオイ、もともとアンタがセフィロスに通報したんだろうが。
そして更に。
(・・・・こんな美人と、今晩ずっと二人きり・・・・)
美人ったって、男ですが、なぜかその辺は柔軟なクラウド。
(ど、ど、どうしようっ)
何が。
あーなってこーなってそーなって、こんなことになって、そんなこととかあんなこととかしちゃったら、どうしようっ!と一人勝手に世界を作りあげていたところ。
「私は・・・・」
ぎくうううううううっ。
気がつくと、ヴィンセントが目を開けていました。
心なしか潤んでいるような。うわ、色っぺえ〜。(BY
クラウド)
「どうなるのだろう・・・」
「え?」
怒涛の一日は、ヴィンセントの脳の旧型のCPUの処理能力をはるかに超えていたのですが、今になってやっと追いついてきたようです。にわかに自分の身の上が心配になったんでしょう。
もう一度起きあがると、ふう。とため息をつくヴィン。
「どうって・・・ えーと、とりあえず明日調書を作って・・・」
そういうことを聞いてるのではないのだ、クラウド。
「私は・・・ 本当に何も知らないんだ・・・。でも・・・
あのセフィロスと言う人は・・・恐そうだし・・」
どき。
手柄を求めて先走ってしまったクラウドは、かなり心が痛みます。おまけに、今やヴィンセントへの思い入れが、妄想を含めて増している分、「いや〜、俺がついセフィロス呼んじゃってさあ〜〜」とは、口が裂けても言えない
状態。
「だ・・・大丈夫だよ。ほら、シドが、あんたが何もしてないって証拠、探して来てくれるから」
「シド・・・」
ヴィンセントが、ちょっと安心した表情になります。シド、ポイント高し。快調に飛ばしてます。
「私のせいで、余計な仕事を増やしてしまって・・・。でも、彼はいい人だ・・・」
「そうだね・・」
自分で言っておきながら、ヴィンセントがシドを褒めるのを聞くと、なんだか楽しくないクラウド。
どうしたいんだ、あんたは。
「大丈夫、俺もいるし!」
ヴィンセントの手を取るクラウド。そうしたかったか。
「不安だったら、俺、一晩ずっとこうやって手握ってるから!」
おにいさん、ちょっと下心が。
「ありがとう・・・」
ヴィンセント、ストレートに受け取ってます。
そもそも、最初から自分のそういう疑いのないところが、こんなとこまで自分を来させたことに、まったく気がついてないようです。
(真近でみると、ますます美人だなあ・・)
ほらほら、おにいちゃんこんなこと考えてるんだってば。
「寒くない?ここ、夜冷えるから」
毛布を、ヴィンセントの肩にかけつつ、手を回します。
おにいちゃんな雑誌で読んだ「警戒されないさりげないアプローチ術」が、こんなとこで役にたってるようです。
そのまま優しく引き寄せると、彼女は君の腕の中に。
彼女じゃありませんが、とりあえずマニュアル通り、ヴィンセントを抱き寄せるカタチになります。らっきー。
「大丈夫、絶対無実、証明するから。セフィロスに渡したりしないから」
無実を証明するために歩き回ってるのはシドで、セフィロスを呼んだのは自分、というあたりは、東京湾でハゼに食わせることにしたらしいです。
気が弱ってるとこに、こういう台詞が来るとさらに弱いのがヴィンセント。
文系の相手には、情感に訴えるのがベスト。これもマニュアルに書いてあったようです。ハマってます。
クラウド号、思いもよらず内側からシドに追い込みをかける!
「優しいのだな・・」
目の前に、ヴィンセントの「端正な顔立ち」(BY
FF7公式ガイドブック)があります。
もう少し近づけば、いわゆるえーびーしーの「えー」が出来ます。
ところで今でもえーびーしーとか使うんでしょうか。は〜ん、E気持ち♪(ご冥福をお祈りします。)
(どうしようどうしようどうしうよおおうっ)
私の昔話などには気も止めずに、クラウドは今後の身の振り方で頭いっぱいです。
(ここは・・・勇気だしてっ)
ヴィンセントの唇に、自分の唇を重ねてみました。
どうしてこういう時だけ思い切りがいいのか。
唇を離すと、ヴィンセントが驚いた顔をしています。
「あ・・・ ご、ごめん、俺・・・っ」
やってからわたわたと慌てるクラウド。
「あんたを・・なんか慰めたくて・・・ それに」
以下やや小さな声で。(←マニュアルによるらしい)
「なんだか・・・ 好き・・なんだ。あんたのこと」
クラウド号、暴走体制。
さすがに、ヴィンセントも戸惑ってます。戸惑ってるのは、いつものことですが。
「そんな・・ しかし、知り合ったばかりだし・・
それに私は男だし・・・」
「そんなの関係ないよ」
ものすごくあると思う、普通。
「すごくキレイだし、それに何より・・・守ってあげたいって思うし」
ここでじっと目を見つめる。(←マニュアル)
「私は・・そんなふうに思ってもらえる価値のある人間では・・・」
「あるよ、俺には!」
強く抱きしめる。(←マニュアル)
そして、もう一度優しくキ・・・・
「何をしてる」
♪その時なの もしもし君だけ 帰りなさいと〜〜
二人を引き裂く声がしたのよ ああんああんああんあん
^^^^^^
邪魔をするペッパー警部は誰。
以下次号。
***************************************
私たちこれからいいトコロ〜♪
なのに、邪魔をするのは誰だよっ!
とクラウドが振り返ると、鉄格子のむこうに立っていたのは、ペッパー警部ならぬ、セフィロス刑事。
「う、うわっ、セフィロスさんっ!なんでここに・・・・」
クラウドが慌ててヴィンセントから離れます。
「うるさい。おまえこそ、こんなとこで何してる」
「いや・・・あの・・・ 俺はその・・・ヴィンセントが一人で心細いんじゃないかと・・・」
「そりゃ、親切だな。所轄は添寝のサービスもするのか」
「そ・・添寝なんてっ」
出来ればしようかと思ってた、などとは、セフィロスの前で言えるわけありません。
「じゃあ出ろ。被疑者と必要以上に親しくするな」
「でも・・・」
後ろで、ヴィンセントがセフィロスを恐れて、クラウドのシャツを握ってます。
頼りにされてるぞ、クラウド。行け行け、クラウド。イッキにスパートだ。
「あの・・ まだ犯人と決まったわけじゃないし・・
それまでは一般の人と一緒だし・・ そういう人を、純粋にこ、公僕として、不安にさせることのないように・・・」
純粋に公僕として、の辺りに恣意的な嘘が見られるものの、がんばってはいます。
「出ろ」
もちろん、そんなんハナから聞いちゃいないのがセフィロス。
「で、でも」
「デモもパレードもない」
さすがオヤジなギャグ。
「出ろと言ってるんだ」
凶悪という表情は、こーいうのを言います。と、国語の時間に表現の例として使われそうな顔で、セフィロスがニラミつけてます。
わあ、こわい。降参。
と、両手をあげて投降しようかと思ったクラウドを引き止めたのは、後ろでヴィンセントがシャツを握る手に力を込めたせいでした。
ちゃらっちゃっちゃちゃ〜〜ん♪
大魔王が現れた!
クラウドの頭の中には、姫を守る勇者様と大魔王の対決の図が一瞬にして出来あがりました。
ゲーム世代だよね、君は。
「で・・でません・・・・・」
クラウドの攻撃!
「なにぃ」
ダメージは小さいぞ!というより、大魔王を逆上させてしまった!
「もういっぺん言ってみろ」
「で、で、でませんっ」
「刑事にはなりたくないわけだな」
大魔王の攻撃!ダメージ大きい!
「あの・・・」
姫が口を開いた!
「立場が・・悪くなるようなら、私には気を使わず・・・」
ここで「そう?悪いね」と言ってしまったら、もう二度と勇者にはなれないでしょう。レースからも脱落です。
「大丈夫だよ」
全然大丈夫じゃない状態ですが、クラウドも男。(姫も男ですが。)
ここはひとつ、男気を見せてもらいましょう。
「俺は、出ませんっ。シドが戻ってくるまでは、ヴィンセントについてますっ」
「ほんとに出ないつもりだな」
「で、で、でません」
「そうか・・・ きさま・・・ 覚えてろよ」
大魔王、一時撤退。地下室から立ち去った!
ちゃちゃちゃちゃ〜んちゃんちゃんちゃちゃ〜ん♪
「すまない・・・ 私のために・・・」
ヴィンセントが後ろでつぶやきます。
「いいんだよ。だってあんた、本当に何にもしてないんだろ?」
「クラウド・・・」
ギルも(いや円か?)経験値も手に入りませんが、お姫様の信頼度は飛躍的にアップ。
勇者にはなれそうですが、しかし刑事にはなれないかもしれません。
ちなみに大魔王が何をしに来たか、それは皆さんの思う通り。
ちっ、そっちの方がよかったぜ。
そんなアナタは、猪突猛進度80% 。いいかげん、先の見えないこの話に飽きてきていませんか?
「でも、クラウドがいてくれてよかった・・・」
おおう。クラウド、独走体制に入ったか。リーチかかってます。
「あのさ、あんたが何でもないってことが証明されて、ここを出たら、よかったら俺と」
1.食事にいこう 2.結婚しよう 3.ホテルにいこう
4.同人誌をつくろう
仲間はずれはどれ。・・じゃなくて、俺と、の後がなんなのか、
「よっ、クラウド!」
・・・答えが判明する前に、またもや邪魔が。
「やるじゃん。セフィロス撃退するとはさ〜」
ああ、このノーテンキなもの言い。
「・・・ザックス・・」
兄さんご登場。お待たせしました、一部の方。
「どうしてここに・・」
「いや〜、情報集めでコーコーセイのおじょーちゃん達とカラオケ行ってたらさあ、セフィロスからの呼び出しの音、気がつかなくて遅れちゃって、今来たとこ」
世の中、大魔王を大魔王と思わない人もいるもんです。
しかし、コーコーセイと深夜にカラオケは、よく考えるとマズイ気が。この人も、セフィロスとは違った方向で、我が道を歩いているようです。
「で、来たらセフィロスすっげーーーーー怒っててさ。俺のせいかと思ったら、クラウドがって言うじゃん。一瞬耳疑ったぜえ」
「す、す、すっげーーーーー怒ってた?」
「ああ、上で5人くらいに取り押さえられてた。窓ガラスとか割れてるし。」
「・・・・・」
思わず黙るクラウド。凍るヴィンセント。
「いや〜、おまえ、なんか気ィ弱いとこあって心配してたけど、セフィロスにたてつけんなら大丈夫だな〜」
「・・・・・」
ますます無言。
「クラウド・・・謝った方がよいのでは・・・」
ヴィンセントの言葉に、ザックスが覗きこみます。
「あ〜、あんたがヴィンセントさん? すごい美人じゃん」
素直な感想に、ヴィンセントが恐縮します。
「いや・・ そんな・・・ あの、クラウドがセフィロスを怒らせてしまったのは、もとはと言えば私のせい・・」
「そうなんだ。う〜ん、まあ、事情はともかく、謝りに行った方がいいかもなあ。あれじゃもう10分もしたら、死人が出るよ、ここの所轄」
「し、死人・・・」
クラウドとヴィンセントが両方とも固まります。
「おっさん、結構単純だから、さくっと謝っちゃえば、案外大丈夫だって」
そう簡単にいくとは思えませんが、死人が出るのを放っておくわけにも行きません。
「俺、ついてこっか?」
ザックスの申し出に、お願い、プリーズと言いたいところですが、付きそい付きで謝りにいくのも、なんだか格好良くありません。
クラウド、まだ勇者さまをあきらめてません。
「大丈夫・・俺一人で・・行ってくるよ」
「クラウド・・」
「俺、間違ってないと思うけどっ、ここで死人出すわけにいかないし!」
騎士の犠牲的精神は姫の心に強くアピール。
「クラウド・・ 気をつけて・・」
何しろ相手はサーベルタイガーのような猛獣。
「うんっ。だから・・さっきの話だけど、ここを出たら俺と」
うぎゃああああああ。
階上から悲鳴が。
「うわ、出たかな、犠牲者が」
ザックスの言葉に、クラウドが勇気を振り搾って立ちあがります。
「行ってくるよっ」
クラウドはだかだかと階上に昇ってゆきました。
「がんばれよ〜〜」
至って呑気なザックス。
さあ、残されたのはザックスとヴィンセント。
ザックス号、どんな走りを見せてくれるでしょうか。
以下次号。