
(この物語はフィクションです)
「大会史上初アジア開催となったサッカーワールドカップ、セフィロス・カーンキャプテン率いるソルジャー・ドイツチームは明日、ホスト国である神羅民国と準決勝戦で当たることになった。
FIFAランキングでは下位とされている神羅民国は、ホームの強さと、ホスト国に有利に下される審判の判定で、強豪チームを押しのけ、異様な強さで勝ち進んでいた」
試合前日 記者会見会場
スポーツメーカーのロゴが入った屏風の前へ、ソルジャー・ドイツチームキャプテン、セフィロス・カーン選手が誘導されてきた。
ビデオのテープが回りだす。シャッターの光が彼にあたる。
銀色の髪、端正な顔立ち、鍛えられた体の上に国のチームロゴが入ったジャージをまとったセフィロスは記者にあいさつすると、笑顔をうかべず着席した。
彼はゴールキーパー。ソルジャー・ドイツ国内では名門クラブに所属し、鉄壁の守りは世界でも評価が高い。今大会でも一点失点したものの、後はその神がかった技でスーパーセーブをしてきた。
「セフィロス・キャプテン、次回対戦する神羅民国が審判の判定疑惑を持たれていることについて…」
早速記者の一人が聞いてきた。
セフィロス・カーンはいきなり自分のチームのこと以外の質問がきたので不快そうな顔をした。
「審判が買収されていようが、審判が素人だろうが関係ない、明日の試合は必ず勝つ!」
「チームメイトが入れた一点が取り消されたらどうしますか」
「………もう一度シュートをすればいいだろう」
「もう一度シュートが取り消されたらどうしますか」
記者がくいさがる。
明日の試合はそれだけ世界に注目されていた。
「もう一度シュートをすればいい」
「それでも……」
記者がしつこく言った言葉端をセフィロスがさえぎった。
「簡単なことだ。俺がその審判をシメればいいこと」
報道陣に大きなどよめきが起こった。
彼は不敵な笑みをもらした後、一番前に置いてあったテレビカメラに目線を合わせ、叫んだ。
「待ってろよ!!神羅民国!!明日は絶対ドイツが勝つ」
キャプテンの記者会見の生中継の映像をホテルのミーティングルームで見ていたソルジャー・ドイツチームの面々はため息をついた。
「くーーーかっこいい!!キャプテンはーーーこういうところ決まるよな」
ザックス・ラメロウはため息をついた。ベテランの多いこのチームでは中堅どこの選手だ。
「まるでプロレスのマッチ前の記者会見を見ているようだった、闘志剥き出し、いいねえ!」
腕を組んで何度も嬉しそうにうなずいていた。
「明日勝てるのだろうか…」
ヴィンセント・ノイビルはおどおどしながら言った。派手さはないものの、手堅い仕事ぶりが評価をうけている選手だ。
「昨日見たベスト8戦「神羅民国VSゴンガガ・スペイン戦」のビデオ……ホームとはいえ…あのすごい雰囲気の中でプレイするだけでも失神しそうなのに」
「すごいよな、神羅民国!サポーターが声をはりあげてシーンラ ミングック!!」
クラウド・バラックがヴィンセントに向かって大声をはりあげた。攻撃的なプレーをすることで有名なまだ若い選手である。
「ク…クラウド…大きな声を出して…怖い…ではないか……」
「ヴィンセント、それでもプロ?アウェーの怖さってのは国内リーグでも十分味わってることじゃないか、セフィロスキャプテンなんて、アウェーでは敵サポーターからバナナぶつけられるんだよ」
「知ってる…よ。うちのクラブがホームで、キャプテンのクラブがアウェーの時見た。キャプテン激怒してバナナ拾って食べてた……試合前に…十本くらい…」
「試合中にもゴール内でもごもご食らってて、審判に注意されてただろう」
ザックス・ラメロウも話に加わる。ザックスとヴィンセントは国内では同じクラブの所属だ。
「バナナは好きなんだけど投げて与えられるのが嫌いらしい」
「あ、そうだろうなあ」
ヴィンセント・ノイビルは小さな声で言った。
「キャプテン…黙っていると、端正な顔してかっこいいけど、国内では女性ファンが少ない…」
「寄ってくるのは男、子供、カマばかり」
「おい、おめーら、セフィロスが会見から戻ってきたぞ、皆パスポートを持ってここへ集まって欲しい、と言ってるぞ」
シド・ビアホフという名のベテラン選手が選手達に指示する。皆は「へいへい」と言いなが立ち上がりめいめいの部屋にパスポートを取りに行った。
「何故パスポートなのだろう…」
ザックス・ラメロウがクラウドに話しかける。
「勝ったら出国だからだろ?決勝戦、隣の国のウータイ・日本でやるし。航空券の手配とか……」
クラウド・バラックが答える。
「勝つつもりでいるのかな?」
「勝つつもりだろうが、何だかいやな予感がする」
そう言ったのはヴィンセント・ノイビルだった。
そしてそのいやな予感は見事に的中することとなる。
数分後、選手達はパスポートを持ってミーティングルームにもどってきた。
パスポートはひとつひとつ回収され、セフィロス・カーンの手に渡った。
「皆、明日は準決勝だ。我々、ソルジャー・ドイツチームはホスト国である神羅民国と対戦する」
「キャプテン!明日はどのような作戦でいくんだよ」
ザックスが質問する。
「作戦は簡単だ。一点でも取れ、そして勝て、以上」
セフィロスはパスポートをあらかじめ用意していた巾着袋に入れた。
「おいおいおい、明日は本当に大変なゲームなんだよ、それでいいのか?キャプテン」
「後ろは俺が守る。お前らは一点入れるだけでいい。それで万事オッケー」
チームはざわめいた。
セフィロスは不敵は笑いをした。
「もし……勝てなかったら…」
「勝てなかったら?」
セフィロスは袋を振った。パスポートの入った巾着袋はがさがさと音をたてた。
「この袋を燃やす、各自自力で帰国すること」
「わああああああああああああああああああああああ」
メンバー全員が悲鳴をあげた。
「それだけは、それだけはやめてくださいよう」
ベテランのメンバーは叫ぶ、控えと若いメンバーはセフィロスの手元からそれを奪おうと束になりかかって行ったが軽くセフィロスにかわされた。
「命の次に大切なものを質にとられてしまうとは、くそうセフィロス…知能犯だ…」
シド・ビアホフは叫んだ。
「シド、感心している場合かよ〜〜手伝えよ、セフィロスからパスポートを奪うんだよ」
「無駄なあがきはゲーム以外はしたかねーんだよ俺様は、フィールド以外でのセフィロスとの対決はしねえ、やつは喧嘩強えからな」
飛びかかってきたメンバーを軽くのし、セフィロスは笑った。
「明日、しっかり後ろから見てるからな、必ず一点は入れるんだぞ!」
「こ…この外道〜卑怯者〜」
罵声を浴びながらセフィロスは去っていった。
「一点……一点…難しいな…」
ヴィンセントはぶつぶつつぶやいた。
「入れるしかないのかよ…くそう………」
クラウドもつぶやいた。
試合当日。
スタジアムの観客席は神羅民国のシンボルカラーである真っ赤に染まっていた。
デーグム(太鼓)の音に合わせて、サポーター達はシーンラミングックと声をはりあげている。
「噂に聞いていたが…」
セフィロスは入場前の控え室でむっとしていた。
「人を圧迫させるような応援ですね」
と、ザックス。
「闘争心をかきたてられる応援だ」
と、セフィロス。
「周りが敵だらけ…最高だ……」
手をぶんぶんと回し、セフィロスは伸びをした。
「キャプテンはプレッシャーに強いタイプですね」
「ふ…俺はプレッシャーを知らない男だ」
嬉しそうに笑った。
ヴィンセントはどきどきと高鳴る胸を押えるのに精一杯だ。
「ヴィンセント・ノイビル」
「は…」
びくびくとして振りかえるヴィンセントにセフィロスは言い放った。
「お前…必ず一点入れろよ。入れられなかったら、個人的に説教二時間だぞ」
「個人的に説教…二時間…二時間も…?」
「覚悟してろよ、はっ、はっ、はっ」
震えるヴィンセントを見てセフィロスは高笑いした。
「時間です」
エスコートキッズと手を繋ぎ、選手が入場する時間だった。
キック・オフ
神羅側のボールをクラウドがカットし、ドリブルしていく。
地が揺れそうなほどのブーイングが響いた。
「あたりまえだけど、フィールドだとまともに聞こえてくるなあ、ブーイング」
敵チームの選手、レノ・ジョン・ファンがクラウドのボールをカットしに来た。
「シド!!」
右側から出てきたシドにパスする。
「そうはいかないぞ、と」
レノがカットした。
「シーンラ・ミングク!」
レノがドリブルをしてあがっていく。観客席から歓声があがった。
「お前らっ!!!」
スタジアムの端、ソルジャーのゴールマウス側から声がした。
「さっさと走れ!さっさと点入れろ、ぐず共」
セフィロスが叫んでいた。
「そうだ、カットしなくては…」
ヴィンセントはもたもたとレノに近づく。
「あっ……」
レノはすばやく交わそうとした。
接触!
「はううううう」
レノにはじき飛ばされるようにして、ヴィンセントは倒れた。
ホイッスルは鳴らない。
「あーーーーーあいつ」
「ばかやろー、止めろっ!」
レノは動じない、そのままドリブルで上がってくると、シュートした。
「たく」
セフィロスはがっちりと止めた。
敵のセーブに観客達は大ブーイングだ。
「ああ、心地よいブーイングだな」
セフィロスの蹴ったボールをザックスが拾い、敵ゴールへ目指していった。
クラウドがあがってきた。
「一点いれるぞクラウド」
「おお」
ザックスはクラウドにパス、敵をかわしてまたザックスに返す。
「おわっ」
途中追いついたルード・デュリにボールを奪われる。そのままルードがあがっていく。
倒れていたヴィンセントはゆっくりと立ち上がり見まわした。
「私…は私…は…あ…あれ」
「ヴィンセント、走れえ!」
背後からセフィロスの声が聞こえた。
「倒れていたんだ」
そこへ、ルードがやってきた。ボールをキープしている。
「奪わなくては……」
ヴィンセントがルードにアタックしていく。
ボールを奪った。
「でかした!ヴィンセント」
クラウドは叫ぶ。
「こっちにまわせ」
「一点…いれなくては…」
ヴィンセントはボールをキープしたまま、180度ターンした。
「おい」
「なにいいいいいいいいっ」
すぐさまヴィンセントがシュートの体勢に入った。
彼が狙うゴールにはセフィロスがいた。
「おいおいおいおいーーーーーーゴールを間違えたのか!!!!!!」
クラウドが叫ぶ。
「こっちにボールよこせよ、ヴィンセント!!!あっ!!!!!!!」
ヴィンセントは力強くシュートした。
「あああああああ」
ボールはそのまま、セフィロスのいるゴールの真中に吸いこまれていった。
「わあああああああああああ」
チームメイトは叫んだ。