登山者達の足跡(第3回)
 てれとらん壱さんからのレポートです。(98/11/15)

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7/26登山レポート




 時は現在、処は名古屋。

 その日私は「宮村優子サマーリサイタル’98 not only 産休 but also 戦闘体制〜Thank youだけでなくFighting Poseもまた〜」(笑)に参加する為、遥か九州よりこの地におもむいていた。そしてリサイタル翌日の7月26日、市内のカプセルホテルを出た私は今日の待ち合わせ場所である名古屋駅のコンコースへ向かった。そこで今日の道連れ...ではなく、今回の登山の道先案内人であるメンバーと合流する為だ。今回私の為に貴重な時間を裂いて集まって下さったのは、このHPの管理人でもある越後屋さん、MZ−bさん、そしてぐうさんの3人だった。私も含め4人となり、早速パーティー名を検討...するでもなく「冒険」の旅へ出発したのだった(いや、色んな意味で)。

 地下鉄を「いりなか」で降り、緩い坂道をひたすら歩き続ける。空はこれから起こる事を暗示するかのように薄暗い雲がたちこめ、ついには雨が降り出した。雨に追われるように5分も走った頃、その看板は見えた。堂々とした雪山をバックに書かれた文字「マウンテン」。そのビジュアルは九州の人間ならばアイス「ブラックモンブラン」を思い出す事であろうが、ローカルネタなのでやめておこう(遅い)。建物の方に目を向けると、うっそうとした樹木に埋もれ込んだその外観は、知らない人ならば廃業したものと思うのではないだろうか。私がもし一人で来て入口の横の「営業中」の看板がなかったら、いつの間に潰れたものと思い帰っていたかもしれない。時間がまだ早いせいか、駐車場に停まっていた車も一台(何故か那覇ナンバー)であった事もそんな思いに拍車をかける。

 さて、期待と不安が2:8で入り交じる胸で店内へ。いきなり「ぷよぷよ」関連のイベント告知チラシが張ってある。やはりその筋(?)の利用客が多いのだろうか?小さめのテーブルの4人席につくと水とメニューが届けられた。ふむ、越後屋さんのHPで見慣れたメニューだが、改めて現物を見てみるとすさまじい。いわゆる「極モノ」は普通のメニューの間にさりげなく配置されている。トマトジュースが好物な私は「トマト味ツナスパ」を頼みたい衝動に駆られながらも、何か云い知れぬ使命感から「甘口いちごスパ」を頼んだ。しかし今はイチゴは出来ないとの事。やはり運命は私に「甘口バナナスパ」を食えとささやいているようだ...。

 病院の待合室のような落ち着かない心境で数十分も待った頃、料理が届き始めた。
 まず登場したのは、ぐうさんが注文した「なべスパ」。ここで初めてメニューにあった「お1人様1品をご注文願います」の意味を知る事になる。その量が半端ではなく、それだけで充分4人前はあるのだ。しかし巨大な土鍋に野菜と共に煮込まれたそれをして何故に「スパゲティ」と呼べるのか?この店にアルデンテと云う言葉はないのだろうか?
 次に登場したのがMZ−bさんが注文した「うどん風カレースパ」。深めのどんぶりになみなみと注がれた麺とスープをしても、この店ではまだまともな方なのだろう。
イラスト:てれとらん壱さん  そしてついに登場、恐怖の大王「甘口バナナスパ」と越後屋さん注文の「甘口抹茶小倉スパ」。バナナスパの黄色いパスタの上にはたっぷりと生クリームが盛られ、その上にはブロックチョコがトッピングされている。そしてそれらを囲むように配置された輪切りのバナナが異世界に誘う。一方抹茶スパに目を向けると、緑のパスタの上に、これまたたっぷりの生クリームと共に小倉餡が盛られ、これでもかと甘いオーラを発散している。天辺に申し訳程度に添えられたサクランボが砂漠の中のオアシスのようだ。どちらも既にパスタとは別世界の食べ物であり、昨今のイタ飯ブームとは全く無縁のメニューと云えよう。

 とりあえずその様相を伝える為にデジカメで撮影したのだが、調子が悪かったのかピントがうまく合っておらず、公開出来るようなものではない。更にこのあとデジカメを椅子から落していまい、ついにピント機能が完全にイカれてしまった。これまでも何度か落した事はあったのだが、流石に電源入れた状態で落したのがまずかったのか。しかしこのデジカメ最後のショットがバナナスパとは...(;_;)。

 話をバナナスパに戻そう。
 「ウルトラQ」のタイトルの様な心中で、まずはたっぷりの生クリームをまぶして一口目を食す。「割といける」。その時そう思ったのはまぎれもない事実である。しかしそうした思いも6〜7口目には180°逆転王。まだ4分の1も食べてないのに既につらい、つらい、つらい。その味と云い、調理方と云い、まるで食べられる事を拒否するかのようである。甘いものを食べるのがこれ程苦痛な事だとは思ってもみなかった。緩和剤として頼んでおいたレモンスカッシュも焼け石に水。少しでも量を減らすために、クリームの付いてない部分から食べて進めようとしたが...甘かった。いや、シャレでなく。麺そのものが充分すぎる程甘く、重いのだ。正直四分の一も食べた頃には既にグロッキー状態。我ながら情けない話だが、私は森◯の「カレーヨーグルト」すら完食出来なかった人間なのだから当然なのかもしれない。
 「大失敗、大後悔、大反省〜♪」ふとみやむぅの歌が頭をよぎっていた...。

 フォークが鉛になったかのようにその動きが重くなった頃、「かき氷マンゴースペシャル(辛口)」がテーブルに届けられた。噂は聞いてはいたが、器こそ普通のかき氷と大差ないのだが、そこに盛られたかき氷はラグビーボールサイズ。いや、誇張なしの話。
 「ここのマスターは一体何を考えて生きているのでしょうか?」(エレクトラ調)
 しかし、もともと狭いテーブルは4人分の食器で既に大渋滞。そこで店員さんは一番手前に座っていた私の3分の2は残ったバナナスパの皿を見て「まだ食べられますか?」との事。到底食べられないと分かってるんだったら、もう少し量を減らしたらどうなのだろうか...?(;_;)。結局バナナスパの皿は片付けられる事なく、氷はテーブル中央のすき間に鎮座ましました。

 とりあえずこのかき氷を味覚の弛緩剤にする事で少しでもバナナスパを進めていたのだが...やはりフォークの動きは著しく重く、何より辛くて冷たいかき氷と甘くて暖かいバナナスパは親の仇の様に口の中で死闘を繰り広げ、互いを相殺するどころかその個性を爆発させている。時折すくう無味な氷がやけに美味しく感じられた。

 すっかりフォークの動きが止まった頃「うどん風カレースパ」を食べ終わったMZ−bさんが、バナナスパを試してみると云う事で互いの器を位置交換。「うどん風カレースパ」にはまだカレー味のスープが大量に残っており、すっかり食欲をなくした私の嗅覚を刺激してくれる。そこで前に座っていたぐうさんの「なべスパ」の野菜を拝借して、そのカレー味のスープに付けて食べてみる。「ああ、なんてまともな味...(;_;)」。涙が出るほどうまかった。ふと見ると筋向かいのMZ−bさんはこともあろうに大量の生クリームと溶けたチョコレートを思いきりパスタにまぶして食されている。う〜ん、豪気、豪気。

 流石に4人がかりと云う事もあってか、その辛いかき氷は順調に減っていき、最後の隠し武器(?)のアイスクリームも食破し、今回の「冒険」は一応の幕を閉じた。結果注文したものを完食したのはMZ−bさんだけであり、「なべ」「バナナ」「抹茶」は半分近くが残されていた。もったいないオバケに張り倒されそうだ。しかしこの調理された時点でこの食材の運命は決まっていたのかもしれない...。

 会計を済ませ「山」を後にした時、私は心の中で誓っていた。「今度はまともメニューを食べに来よう」。私にとって甘口スパは到底倒せぬ脅威だった。制覇こそならなかったものの、それなりの経験値は手に入れたのかもしれない。さようなら「マウンテン」、また今度会う日まで...。


「ありでいいですか...?『また今度』」(C)山本るりか(笑)

END




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1998/11/14 作成 越後屋善兵衛 zetigoya@dream.com