住宅施策を考える/日本建築学会東海支部都市計画委員会 住宅部会

第11回部会 「豊川市の中心市街地」   [2000.6.29]

参加者:12名

1.自己紹介・書記指名

2.今年度の活動について


3.豊川市の中心市街地について
●豊川市の概要
  • 人口116,237人、世帯数38,033世帯(H9年)。高齢化率は14.5%。
  • 3町1村の合併により、S18年に市制施行。豊川町、牛久保町、国府町の3つの中心があったが、S14年から建設された海軍工廠の南側(諏訪地区)に新たな中心が形成された。
●中心市街地活性化基本計画
  • H11.6.29国へ送付。全国141番目。県内3番目。
  • 「諏訪地区」「豊川地区」の2つの中心を結ぶ。両者を結ぶ姫街道沿いの地区を「中央通地区」と位置づけ。面積約122.4ha。
  • 策定委員会には学識者として三宅先生が参加したほか、商店街役員、豊川稲荷、中電・NTT(電柱地中化のねらいあり)が参加。
  • TMOとしては、諏訪地区の再開発(S63年)で設立した豊川市開発ビル(株)(市40%出資の第3セクター)がなる。瀬戸市のように新たにまちづくり会社を設立する必要はなかった。H11年度にTMO構想を策定。H12.6.29に豊川市が認定した。今後、増資を行い、市の出資割合を1/2以上とし、小売業者数の数を増やすことで、通産省の補助を受けていきたいという考え。
  • 新市長が「歩いて楽しいまちづくり」を掲げる。情報発信が重要だということで、豊川地区を中心に「歩いて暮らせる街づくりモデル事業」に応募したが、採択されず。
●中心市街地の状況
  • 中心市街地を町単位で集計した人口は増加ということになっているが、豊川地区の町内にかぎってみると人口・世帯数は減少。周辺部で人口が増えている。
  • 隣接地区の工場跡地にH10年、マイカル・サティ約35,000u、駐車場約1,600台がオープン。
○諏訪地区
  • 工業団地(元海軍工廠)の南側。市役所など行政機関が集積。豊川市の新たな中心地。
  • 平成元年に再開発を実施し、プリオ・アピタ豊川店がオープン。広域から集客する地区に。
  • その直後から隣接ブロックの再開発について検討し、今年7・8月頃に着工、H13年度完成予定。
  • ホテル9階建。商業床+多目的ホール4階建。豊川市は10万都市でありながらビジネスホテルがなく、出張関係の需要が見込める。上空通路によりプリオと結ぶ。また、プリオの南側に立体駐車場(5層6階、約350台)の駐車場を建設する予定。
  • 通産省の補助を用い、豊川市開発ビル(株)が市民交流の場や商業共同施設(荷捌き施設)、テナントミックス用店舗床を取得する予定。駐車場は市が取得予定。
○豊川地区
  • 豊川稲荷の門前。年間600万人といわれる観光客が減少。参拝客が集中する1・2月だけ商売すれば1年間生活していけるという状況があるが、商店主にも危機感あり。
  • 基盤未整備で木造2階建ての家屋が密集。豊川稲荷が3割程度の土地を所有。権利関係が複雑。5つの商店街があり商店は160。
  • 長い間、何も変わらない状況にあったが、H8年より、駅の東側で土地区画整理事業(約54ha)を実施中。H8年には駅舎の建替を行い、東西自由通路の整備とあわせて橋上駅に。
  • H10年度に豊川地区商業活性化委員会を立ち上げ、3分科会にわかれ、全体で16回のワークショップを開催、商業等活性化基本計画を策定。
  • 5人の権利者による優良再開発を計画。6階建で1・2を商業・金融機関、上部は住宅(16戸)。
  • 商店街の駐車場(83台)を立体駐車場(約300台)に。どこが事業主体となって建設・運営するかは未定。3セクを事業主体にしたいという考えがある。
  • 門前町の稲荷線については、8mの道路を12mに拡幅する都市計画決定がされているが、見直しを検討中。現道幅員のままで歩行者専用道路に。現在も時間による車両規制が行われている。
  • 駅前通(24m)は現在4車線あるが、これを2車線にし、ゆとりのある歩行者空間に。あわせて老朽化したアーケードに架け替えを計画している。
○中央通地区
  • 姫街道線の拡幅が課題。


4.意見交換
●中心市街地の設定について
    諏訪地区と豊川地区は性格が全く異なる。無理やりつなげた感じで設定に無理があるように感じる。
    1都市で2カ所の中心市街地はないということから、計画上やむをえず設定している。2地区を結ぶ中央通地区はこじつけの所がある。
    金沢市でも武蔵地区と香林坊地区の2地区を結びつけている。それを小さくしたような感じが豊川市。
●豊川地区の方向性
    商店街は観光客相手のものだけか。
    地元向けと観光客向けに2つに分かれている。商業と観光によって活性化させる方向を考えている。
    1月で1年暮らせるというのはうらやましいが、逆の問題点も。住み手にとって住みづらい面もあるのでは。高齢者を対象とした施策が必要では。
    稲荷通りについては景観にも配慮。個店の改装を行う際の統一ルールをつくり、江戸風情のまちをつくりたい。伊勢のおはらい町や東京の柴又のようなまちなみ形成を。
    豊川地区については観光客主体のまちを追求している。
    生活という点では、今回の中心市街地の区域からはずれているが、昔からの中心の1つである牛久保地区の再生が重要では。
●豊川稲荷
    豊川稲荷が地区の活性化について考え、やろうとしていることはないのか。新たに健康などを付加した御利益を設けるなどいろいろアイデアがある。
    おちょぼ稲荷は月末の夜に多くの人で賑わっている。若者も集まっている。豊川稲荷でもこのような状況があれば活性化につなげられそうだが。
    夜、賑わうのは大祭とお月見の会(商店街の美人おかみの会が開催)がある。通常は5時に門が閉鎖される。大きすぎて閑散としている。
    昔はまちづくりにあまり協力的でなかったが、最近は協力的である。
●諏訪地区の方向性
    昔は近隣商業地であったのに、再開発をした結果、広域から集客し、広域商業地としての宿命をおってしまったという印象がある。豊川のまちにとって商業地を拡大する必要があるのか。
    サティができて商店街の売り上げが半分に落ち込むのではという懸念があったが、実際は1割程度の減にとどまった。商店街としては落ち込んだ客数を引きもどしたいという願いがある。
    市としてサティの進出を阻止するということはしなかったのか。少なくとも大店法で面積を小さくすることはできたのでは。
    準工業地域で法律上、規制することはできない。
    市の施策がなかったということか。
    住民がサティで満足しているのであれば、新たにそれに対抗する商業施設を作る必要があるのか。町の風格づけ、顔づくりという考えか。
    3町1村の合併によってできた豊川市にとって、諏訪地区は新しい中心。他の地区でやろうとすると「何故そこか」という問題がでてできないことも、諏訪地区なら納得してもらえる。市では中心核として位置づけている。
●豊川市の展開
    豊川市には豊川稲荷のみならず、御油の松並木、国分寺、桜ヶ丘のミュージアム、被爆の歴史、新幹線の初代車両の保存など多くの資源がある。総体として売り込む必要があるのでは。豊橋市の二川地区や田原町とのネットワークも考えられる。
●その他
    豊川地区に豊川稲荷があるように、諏訪地区には世界心道教がある。世界心道教は教祖が豊川市出身で信者20数万人。市内に共同宿舎などがあり、多くの信者が住んでいる。



      記録 
    8/26に有志15名余で、豊川市の見学に行ってきました。その時の画像と感想などをとりまとめました。