住宅施策を考える/日本建築学会東海支部都市計画委員会 住宅部会

第12回部会 「春日井市の中心市街地「勝川地区」」   [2000.9.20]

参加者:9名

1.自己紹介・書記指名

2.春日井市の中心市街地「勝川地区」について
●春日井市の概要
  • 昭和18年 勝川町、鳥居松村、篠木村、鷹来村合併。昭和33年 高蔵寺村、坂下町合併
  • 市域面積9271ha、(内、市街化区域4531ha)、人口29万人
  • 江戸時代は、主に農村地帯であった。戦前は鳥居松、鷹来地区に陸軍工廠が建設され、軍需産業の町として都市化が進んだ。昭和28年ごろから工廠跡利用などにより、王子製紙鰍ネどを誘致し、内陸工業都市となった。昭和40年代には公団施行の土地区画整理事業により、高蔵寺ニュータウンが造成され、現在は住宅都市となっている。
  • 市街化区域の内、75%が土地区画整理済み、事業中、計画中で、これらは53地区(組合40、市11、公団1、県1)に及んでいる。戦前から土地区画整理事業を積極的に実施している。
●勝川駅周辺総合整備計画について
  • 現在、勝川駅周辺には次の12事業が計画され、実施済み、又は実施中となっている。
    (1) 中央本線鉄道高架事業…工事中
    (2) 名古屋環状2号線建設事業…事業完了
    (3) 勝川土地区画整理事業…県施行の土地区画整理事業、事業完了
    (4) 勝川駅前土地区画整理事業…市施行施行中
    (5) 勝川駅前市街地再開発事業…(4)の土地区画整理事業と同時施行の再開発事業
    (6) 立体換地促進事業…(4)の土地区画整理事業区域で平面換地に替え、建築物の床と敷地の共有持分を定める手法で、施行者がビル(施設建築物)を建設する。施行済み。
    (6)' 都市再生区画整理事業(立体換地)…(10)の土地区画整理事業区域で平面換地に替え、建築物の床と敷地の共有持分を定める手法で、施行者がビル(施設建築物)を建設する。来年からビル工事着手予定。
    (7) 駐車場整備事業…事業完了(駅前広場、公園敷地の地下に、公共駐車場(有料)を整備)
    (8) 駅前通商店街近代化事業…中心市街地活性化基本計画中の主要区域
    (9) ロードサイド拠点整備事業…計画中、R19号からの集客のための駐車場及び商業施設整備をする事業
    (10)勝川駅南口周辺土地区画整理事業…市施行、施行中。
    (11)密集住宅市街地整備促進事業…(10)の土地区画整理事業との合併施行で老朽住宅の除却及びコミュニティ住宅建設。
    (12)城北線建設事業…計画中。勝川・枇杷島間延長11.7km。勝川駅手前300〜400mで止まっているため、JR勝川駅に乗り入れを要望。
●分譲マンションについて
  • 新規分譲マンションの建設戸数では愛知県下では名古屋市の次に多い。特に勝川駅から名古屋駅まではJR線で20分圏内なので交通の便が良く、市内でもこの地区の新規物件が多い。平均価格も3000万円を切る価格で販売されている。比較的安価である。
●中心市街地活性化基本計画の意味
  • 春日井市の構成は、元々、生活圏が個々に形成されていた村落を合併してできた市なので市全体から見たヘソがない町であると云われている。現在は、市役所がある鳥居松地区を中心核とし、勝川地区は副次核として位置付けしている。勝川地区は市の副次核ではあるが、防災街区づくりや商店街の再整備を推進するにあたって、まだまだこれから実施すべき事業も多く、中心市街地活性化法の本来的な趣旨にも合致しているので、事業推進の一つの方策として計画策定を誘引した。
    ●春日井市中心市街地活性化基本計画
      基本方針  「春日井市の副次核にふさわしい生活・交流拠点の創造」
      中心市街地活性化の目標
      • 目標1 豊かな交流の場としての市街地整備…「西の玄関口」(名古屋まで20分)の立地を活かし、交流拠点として整備する。市街地再開発事業や土地区画整理事業を実施し、既存開発ビルやホテル等と連携を図りつつ、交流拠点の新しい核となる施設整備を目指す。
      • 目標2 安心して暮らせる市街地環境整備…都市基盤整備を推進し、「福祉への対応」や「環境との共生」などの社会的要請に応える施策の推進、生活利便施設の整備、生活関連サービスの充実、交通の安全施設整備等を実施する。
      • 目標3 都市生活を支える親しみのもてる商店街の形成…既存商店街の良さを活かしつつ、次世代のニーズに対応した改善を加え、豊かな都市生活を支える商店街としての再生を図る。
      市街地の整備改善のための事業
        (1) 鉄道事業(JR東海中央本線勝川駅付近連続立体交差事業)
        (2) 名古屋環状2号線建設事業(3) 勝川駅前土地区画整理事業
        (4) 勝川駅市街地再開発事業(4) 勝川駅南口周辺土地区画整理事業
        (5) 勝川駅南口周辺密集住宅市街地整備促進事業
        (6) 城北線建設事業

      商業の活性化のための事業
        <商業環境整備>
        (1) コミュニティ・マート構想モデル事業(2) 空き店舗活用事業
        (3) 商業共同施設整備事業(4) テナントミックス事業
        (5) 駐輪場整備事業(6) ポケットパーク整備事業
        (7) FMスタジオ設置事業(8) 勝川大弘法関連事業
        (9) 駐車場整備事業

        <ソフト策>
        (1) イベント支援事業
        (2) 商店街情報誌発行事業
        (3) 商店街マップ作成事業(4) 商店街PR総合推進事業
        (5) スタンプ事業(6) リサイクル推進事業
        (7) 情報化推進事業(8) 宅配サービス事業
        (9) 花いっぱい美化運動推進事業

      その他の事業
        <生活環境整備>
        (1) 住宅供給事業(2) 福祉対応型環境整備事業
        (3) 子育て支援事業(4) 駐輪場整備事業

        <交流施設整備>
        (1) 公益施設整備事業

  • 計画の中身は柔軟性を持たせるため元々計画してきた事業を整理し、事業名をあげる程度に留めている。現在、具体的な内容については商工会議所を中心にTMO立上げを含めて検討中である。
  • 商業面では、勝川駅前及び、駅前を鉄道と平行して走る旧国道(現在では県道)沿いと、駅から北へR19号に向かって通る県道周辺地域について商業の活性化を図ると共に、再開発ビルの中にも商店をはり付けるなど、駅前の顔づくりを実施することとしている。
  • 土地区画整理事業には理解があるが、再開発や商店街の近代化などに対しては、計画はあっても具体的な事業へと繋がらない経緯があった。行政主導型の弱点が出ているのかも知れない。
  • 駅前には市街地再開発事業により、ホテルを建設し、昨年9月にオープンさせた。これは昭和63年当時、に計画された事業の一部である。他の再開発ビルは7,8階建てのビル全体を商業ビルにするという内容だったが、次第に社会情勢が変わってキーテナントの出店見込みがなく、事業構築見直し中。
  • 保留床は第三セクター「勝川開発梶v(資本金11億600万、市の出資比率50数%、その他は商工会議所、銀行、地元企業等)が取得した。ホテルの経営は、勝川開発鰍ェ80%出資の子会社「ホテルプラザ勝川」。
  • 現在、その他の再開発ビルの計画はそれぞれ見直し中で、商業床は3階までとし、それ以上は分譲マンションを検討している。賃貸住宅は権利者が管理運営ができない。
  • 駅南口周辺地区内の立体換地ビルでは、一部商業を入れるが、公共施設として子育て支援の場を整備する予定である。上階は住宅である。
  • 駅南口周辺地区は、戦前、工廠で働く人の住宅を土地所有者に作らせた地区で、道幅も狭い密集住宅地となっている。権利関係も複雑化しているので一旦は、土地区画整理は無理であると判断し、下水道事業は実施済みである。
●「ホテルプラザ勝川」について
  • 第三セクター「勝川開発梶vの子会社で運営
  • 宿泊棟は地上10階・地下1階、宴会棟は地上6階・地下1階、大小宴会場、結婚式場(神前、チャペル)、
  • シングル77室…利用料金 一泊8600円/スイート1室/ツイン11室(内、1は身障者対応タイプ)


4.意見交換
●ホテルの営業状況について
昨年9月8日にオープンしたところである。客室稼働率も良く、婚礼需要は土岐、多治見の東濃地方からの利用も多い。第三セクターの勝川開発鰍ェ床を買って、子会社に運営させている。市内には3,4のビジネスホテルがあるが、春日井駅周辺のビジネスホテルはほとんど満杯だそうである。
●TMOの立上げについて
既に、商店街には「勝川商業開発」という資本金3000万円から4000万円程度の会社がある。彼らは、勝川駅付近に個人で建てたコンクリート製(高さ18m)の弘法さまの像に因んで、毎月5の付く日を弘法様の日と決め、弘法茶屋を開いたり、せんべいなどを売っていて、この日には人出も増えて賑わっている。また、その隣には空き缶回収機を設置して、エコステーションを運営するなどの活動しているので、この組織がTMOの核になってもらえないかと期待している。
また、彼らは、商店街に出来た空き店舗を買い取ってFMスタジオにして、土曜、日曜には300m程度の範囲だが、試験電波を流している。いずれは商店街の宣伝もできるようになればと期待している。
●大型店舗(サティ)ができてからの商店街への影響について
最初の1月程度は交通渋滞などを起こして大変だったが、今は沈静化している。もともと大型店と競合しながら経営をするという商店は少ないから、大きな影響は受けていないと思われる。元気の良いのはレストラン、飲食店。(イタリア料理、フランス料理等)しかし、物販は厳しい。
●勝川の人口動向について
やや減少気味だったが、周辺にマンションが建ちはじめた関係で持ちなおしている。
●勝川のイメージについて
事業所はないので、広大な住宅地の広がりの中に勝川駅があるという感じの地域。
●生活環境整備事業の中にある、福祉対応型環境整備事業と子育て支援事業とは具体的に何か。
南口周辺の立体換地ビルに設ける公共施設を意味していて、子育て支援事業とは子育て相談室等を開設するものである。託児所は認可の問題もあって難しい。できれば、有料で託児事業を民間でやってくれると良いのだが…。
●長期的に見たときの市街地再開発ビルのあり方には心配はないか。
一旦、ビルを造ると共同所有や共同管理の問題があって、難しい面もある。3キロの商業圏域を成立させるのが目標。かつては名古屋の円道寺商店街と同じ位繁栄していた地域である。
●現在の店舗数はどのくらいか。
R19の沿道沿いを含めると158店舗である。内訳は小売96(衣服・身の回り品24%、食料品20%、家具14%、その他)、飲食62である。
●市街地再開発事業の公的意義は何か。また、進捗度はどの程度か。
土地区画整理事業との合併施行なので、再開発事業だけで見た場合には、公共施設整備はない。強いて云えば、建物の不燃化による都市の防災機能を強化するということになる。準備組合を立上げ、3ヵ年に渡り国庫補助事業で計画策定を一旦は終えている。
●マンション需要はどうか。
下駄履き式は嫌われるが、需要は十分にあるようである。
●二世はどこに住んでいるか。
概ねはこの地区に住んでいるが、よその地区に住宅を取得しているものもいる。別に住居をもっている者は資産運用に走ることが多い。また、土地区画整理をすることによって、住宅や商店街がなくなるということはない。
●既に出来ている区画整理立体換地ビル(ルネックビル)の中には何が入っているのか。
1Fは権利者の書店、銀行。2Fも銀行、商店。3F〜4Fは洋服、ブティック等だったが、空家になっている。現在は4Fをチャレンジショップとして月2000円で利用させている。5Fは市の住民窓口と県の職安。6Fはスポーツクラブ。7Fは会議室、レストラン、ハイビジョンシアター。
●勝川駅(橋上駅)、南口地区の立体換地ビルの完成予定はどうか。
駅は平成18年度完成予定。換地ビルは来年1月には工事着手して2年後に完成する予定。このビルは1Fが商業(コンビニ、路面店)、2Fが子育て支援室、上部は住宅で構成する。
こういう施設に、NPOセンターのようなものを入れて、人の賑わいが期待できるように思うが、商業では果たしてどうだろうか。
●マンションの立地要因と年齢層は何か。
安価であることと、名古屋方面への利便性。また、比較的高齢者が多いように思う。
●駅へのアクセスはどうか。
自転車と自家用車。無料の駐輪場が5000台分あるが、JRから借地している部分もある。民営は数が少ない。駐輪場の整備は大変だが、放置自転車などの管理も大変である。自転車通勤者が3キロ、バイクだと5キロまでの人が駅を利用している。
●月極駐車場利用はどうか。
空家や空地が駐車場化する減少は少ない。月極駐車場の料金は砂利敷きでも8000円〜13000円程度。