住宅施策を考える/日本建築学会東海支部都市計画委員会 住宅部会

第13回部会 「碧南市・大浜地区の歩いて暮らせる街づくり」   [2000.11.20]

参加者:11名

1.自己紹介・書記指名

2.田原町まちかど交流サロンについて
昨年度の取り組みを引き継いで、12/2から「来る間座」として再スタート。前回開設した民家を「来る間座の会」(会員8名)が借り上げ、運営。様々なイベントに貸し出すほか、自らイベントも開催する予定。
12/ 2 祭囃子、古老から町の歴史を聞く会
12/16 防災をテーマとした交流会、童話作家の話を聞く会
住宅部会との関わり:望月さんかが「来る間座の会」の会員として参加しているほか、今井さんも方針決定時に参画。今後、当面の予定はないが、交流会等を検討していきたい。


3.碧南市「大浜地区」について
●碧南市大浜地区の歴史
  • 古代は青海(おうみ)、明治になって碧海郡が設置され、その南側であることから、碧南となった。(周辺5都市の合併による碧海市構想がある。)
  • 大浜地区は、古くは現在の高浜市から碧南市一帯を称していた地名である。
  • 南北朝の時代から、岡崎に通じる矢作川が三河湾に注ぐ河口として、海運と内陸水運の拠点として発展。鎌倉街道−吉良道の要衝。(港の町)
  • 近郷の中心地として、由緒ある寺院が多く点在。(寺の町)
  • 味醂(九重味醂本社工場等)・味噌などの工場もあり、地区全体に蔵が点在。(蔵の町) 
  • 漁師町でもあったので、地区の一部にその区画割・狭隘道路(縦列の一宅地毎に狭隘道路が走る)が残されている。(路地の町)
  • 矢作川の付け替え工事以降、新田開発が行われ、周囲は農地が拡がる。その後、臨海学校が賑わった時期もあったが、S30年代の臨海部埋め立て以降、工業都市として発展。市全体の人口は68,000人程度で微増。企業関係で周辺部のバイパス道路の整備は進められたが、中心部の整備は遅れ、区画整理も郊外部でしか行われていない。昼間人口比率97.2%でやや流出超過。
  • 臨海部の埋め立て面積は市域のおよそ3割であり、中部電力火力発電所、日本金属、トヨタ衣浦工場等が立地し、安定した税収が確保されている。
●歩いて暮らせる街づくりの取り組み状況
  • 経済新生対策(H11.11.11経済対策閣僚会議決定)に位置づけ。全国の市町村(政令指定都市を除く)から公募された。86自治体が応募し、20地区が採択された。(東海三県下では、春日井市鳥居松地区と碧南市大浜地区の2地区)
      ◆「歩いて暮らせる街づくり」の趣旨
        地域のさまざまな工夫や発想を源泉に、生活の諸機能がコンパクトに集合し身近に就業場所のあるバリアフリーの街において幅広い世代が交流し、助け合うことなどを通じ、身近な場所での充実した生活を可能とするとともに、これからの本格的な少子・高齢社会に対応した安心・安全でゆとりのある生活を実現させようとする試みである。
      ◆「歩いて暮らせる街づくり」の基本的考え方
        @生活の諸機能がコンパクトに集合した暮らしやすい街づくり
        A安全・快適で歩いて楽しいバリアフリーの街づくり
        B街中に誰もが住める街づくり
        C住民との協働作業による永続性のある街づくり
  • 碧南市では、H12年6月に委員会を設置し、現在検討中。参加メンバーは、商工会議所、地区連絡委員、老人クラブ、商店街代表等37名で構成。愛知建築士会碧南支部も支部長の杉浦さんが参加しており、7/7には会で地区見学会を行うなど、勉強を進めている。11/5には委員会主催で、「大浜地区歩いて暮らせる街づくりイベント−港・寺・蔵・路地の再発見−歩いて観よう 大浜てらまちウォーキング」を開催。約15,000人が参加した。
  • 委員会ではコンサルタントから「寺と港と路地」を生かした街づくりの提案が出ているものの、具体的な検討は進んでおらず、これから。市としての方向性も現時点でははっきりとは示されていない。
●住宅建築動向等
  • 地区内の人口空洞化は確実に進んでいる。地価は60〜25万/坪程度。臨海部企業の役員は他の市に居住していることが多く、市内の整備に対してあまり関心がない。
  • 工場跡地が、建売り住宅地として開発されることが多く、マンションは少ない。また賃貸住宅の建設も多く、すぐに埋まる。確認申請件数は多いが、市としての全体的な土地利用計画が明確でなく、狭小道路の住宅地が再生産されている。
●寺・産業・歴史的建築物
  • この地区にはもともと領主はおらず、商業者が寺院を保護し、寺兵により護られていたようだ。周辺は当時は田畑もなく合戦場となっていたと聞いている。各寺院には寺楼が高くあがるなど、戦いを意識した造りになっているものがある。
  • 檀家のない寺もあり、多くは地代収入や教員等の副職で維持・経営されている。
  • 戦前には川越に続いて鋳物産業が盛んで、キューボラのある町だった。
  • 地区内に5つの商店街振興組合と約100の店舗があるが、連旦しておらずまばらな印象となっている。小規模スーパーとしてヤマナカとユニーが1店舗づつあるだけで、地区内に大型店は無い。
  • 地区内に以前警察署として利用されてきた大浜下区民館がある。大正年間築の建物で、建築士会で実測調査をしたが、現在は遊休施設となっている。
●その他の取り組み
  • 碧南市は昭和58年より彫刻のあるまちづくりを進めており、佐藤忠良、福田繁雄を始め有名彫刻家の作品が市内に点在し設置されている。
  • 平成10年度より市内を循環するくるくるバスが運行され、無料で利用できるようになっているが、本数は少ない。
  • 大浜地区では、H4にまちなみデザイン推進事業による検討を行ったほか、県の景観アイデア募集課題地区にもなり、様々なアイデアが寄せられた。


4.意見交換
市では、総合計画を始め、住宅マスタープラン、まちなみデザイン推進事業等、様々な計画がつくられているが、結局どれも実現されずに消えてしまっている。市としてどうしたいのか、明確な方向性、めざすべき町の像がない。
公民館とは別に区民館が建設されるなど、企業からの税収等で、市としては豊かだが、公共施設や彫刻くらいしか使い道がない、わからないという状況に思われる。
税収の豊かさもあって、市は様々な計画を策定してきているが、実行されていない。計画の策定委員会が各種団体等のガス抜きの場になっている。 
現状に対してだれも困っていない、というのが実状ではないか。
今回の「歩いて暮らせる街づくり」もウォーキング等のイベントだけで終わってしまうのでは寂しい。